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ハンガリーの医学部、キツいっていうけど具体的にどうキツいんですか?(試験形式・筆記試験・口頭試問について)


※よくある質問集という記事もあるのですが、この問いに関しては説明が長くなるので1記事としてあげることにしました。

※私がデブレツェン大学の人間なので、「ハンガリーでは」というよりあくまで「デブレツェン大学では」という話になります。細かいルールは学校ごとに違います。


日本の医学部はそもそも入るまでが結構大変、入ってからは学校・学年によってバラバラ、キツいところもあればテスト前だけしっかり勉強すればokだったりすると思います。(日本の医学部に通っている/いた兄弟・親戚・友人らの話を聞いている限り)

ハンガリーの医学部に通うなら、とりあえずサークル・部活・バイトをするような時間は基本的にはありません。
たまに集まってサッカー・バスケをしたりジムに行ったりとか、日本に帰国した時に短期バイト、こちらの後輩にチューターをしたりなどはあります。高学年になるにつれ時間と心のゆとりが出てきて時間を自分の勉強以外にも回せるようになりますが、一般的な日本の大学生のようにそれらを楽しむのは何年生になってもなかなか難しいと思います。

ひとつひとつの教科の試験が重く、試験準備は最短でも1週間、中には1〜数ヶ月かかるようなものも少なくないからです。

英語で学ぶ事自体は慣れですし、慣れさえしたら日本語より指示語などが明確なので原典の英語の説明の方がわかりやすかったりもすることもあります。

医学というものも、学ぶ量は多いものの一つ一つ噛み砕いても到底理解出来ないようなものでは出来ていないので、日本語で学ぶ難易度と英語で学ぶ難易度自体は案外変わらないと思います。1回教科書を読むにしても、日本語に比べて英語での方が理解出来る量が比較的少ないですが、それをわかっているだけに何回も注意深く読み返しながら勉強するので、結果的な勉強量・習得度は日本語で学ぶ時を上回るなと感じています。


はじめは(語学力がもっとあればきっと楽だろうな〜!!!?😭😫)と単純に思ってたのですが、英国育ちのネイティブだったり帰国子女な人もかなり留年してるので、最低限の英語力さえあればそれ以上は然程アドバンテージにならないようです。(勿論無ければ無いほどdisadvantageになる)



ハンガリーの医学部において特徴的なのはやはり試験形式です。

期末試験は主に筆記試験+口頭試験がセットになってます。筆記試験に受からないと口頭試験に行けないようなルールのものが多く、両方受かって初めて単位取得となります。(教科によっては筆記or口頭のみもあります) 


筆記試験も受験する試験日(自分で選べる)によって難易度が全然違うことはよくあります。採点者によって採点基準が全然違う事も……

センター試験のようにあまりに差が出た場合、受けた回の平均点などによって点数調整が行われる……なんて気の利いたことは一切なく、どんな試験でも60点パスなら60点以上でパス。
例え100人受けて10人だけが60点以上の試験でも、100人受けて40人以上が60点以上の試験でも、Passラインは不変の60点です


口頭試験は、試験官は人によっても受験日によっても違うし、試験官・(その試験官の)気分によって合格ラインも全然違います。

口頭試験の流れですが、各教科ごとにトピックリストというものがあります。くじを引いてリストにある何についてその場で試験官に話すかが決まります。

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(一例。これは2年生前期の解剖・組織・発生の総合試験のトピックリストです。ちなみにこの試験の手前に6つ試験があり、それら6つ全て受からないとこの総合試験の受験すら不可です🙄)(※2018年までのものです。近年は毎年実験的に何かしらのルール変更があるのですが、範囲は変わらないので割愛します)


白い紙を何枚か渡されて5〜20分、何を話すか考えたり紙に書き出す時間が与えられます。
準備が終わったら試験スタート。
先生の目の前でプレゼンし、先生からの質問に答えます。黙って聞いていくつか質問して終わるような先生も居れば、そもそもプレゼンさせてくれずガンガン質問してくる先生も。試験時間は1人5分のような時もあれば45分くらい質問責めにあうことも……(聞いた最長は3時間半とかです)

100学ぶ範囲で60知ってればPassくれる先生もいれば、95知ってても1を知らない・間違えたという理由で落とす先生もいます。

『そんなん100知らんやつが悪い。準備&勉強不足😤』と思うかもしれませんが、全科目×全範囲×全トピックそのレベルに達するまで試験を受けないならばそれこそ卒業まで何十年かかるかわからないです……

(これは何度か読んだことのあるお気に入りの本の内容は勿論理解していても、その本全ての文章を暗唱・適切な場所で一言一句間違わずパッと引用が出来るわけではないのと同じです。)


立ち居振る舞いや態度・話し方も、その場その場で判断して変えなければいけない(例えば自信満々に話す生徒を生意気に感じるから嫌いな先生もいれば、''こいつ自信あるな=勉強したんだな''ととる先生もいる)ので、単純に勉強して頭に入れた知識量だけで成績が決まるわけではないです。そのように、口頭試験はかなり出たとこ勝負な面もあります。

どのくじを引くか、どの先生(がどんな気分の時に)に当たるかで人生が大きく左右されます。どれだけ勉強しても不運な事が起きる可能性を下げることは可能ですが0には出来ません。

優しい先生に当たって受かった人間が厳しい先生に当たって落ちた人より遥かに知識が少ない、なんてこともザラに起こるので、(なんなんだこの大学のこのシステム……どうなってんの……いくら勉強しても隕石当たるくらい運が悪かったら無理じゃん……)などと試験期間は結構本気で病みます……


またデブレツェン大学は在学中、1科目につき受けられる期末試験の回数は最高6回。6回受けても受からなかったら退学になります。履修登録1回につきその学期末の試験期間にその科目の試験をMax3回受けられます。通称Aチャンス(その人にとっての試験1回目)・Bチャンス(2回目)・Cチャンス(3回目)。

期末試験で3回も受けられるなら余裕じゃない……?🤔と思ってしまうのですが、科目によっては学期中にあるテスト6つの試験に受からないと大ボスの総合試験に行かないような科目もあります。(↑にトピックリストを載せた2年アナトミーがまさにそうです)この場合、学期中のテストをすべて落としてしまったならば【学期中の試験6種の再試+総合試験】を期末試験で同日にすべて受験して受からねばなりません。人によってはこの手前の6つの試験が期末試験3チャンスのうちになかなか受かりきらず、大ボスの総合試験に1度も行けずに留年してしまう事も。そうなると来年、残りのチャンスは3回、それでダメなら退学。今までの努力が水の泡……という恐ろしいルールがあります。

手持ちの試験チャンスを使って試験を受けないと受からないが、受けても受かるとも限らない。期末試験を受けるということは6チャンスのうちの1回を使うということです。色んな意味で寿命を削ることになります。知識が無い時に試験を受けると落ちるついでに大切なチャンスも1回分無駄にしたことになるので、私は軽い気持ちで受けるのは反対派です。

【他の教科の状況次第では、いっそ今年はチャンスを使わない・期末を受験しない(=留年すると決める)という選択が最善の時もあります。6チャンス残ったまま留年&再履修するのと、あと3チャンスしかない=退学がかかってると思いながら留年&再履修するのは気持ちの上で全然違うからです。生存戦略🙆‍♀️🙌】

期末試験も重い科目1教科だけなら良いのですが、実際は何教科も並行して勉強しながらどれから受ける・落ちたら次どうする、と予定を自分で考えて組んでいかないといけないので、試験期間は勉強だけでなくそれもかなり大変です。


大体こんな感じなのですが、雰囲気が伝わりましたでしょうか?冒頭にも書いたように、これはハンガリーの中でもデブレツェン大学の話です。他の学校の事はよくわかりません。

え〜なんか色々やばくない……!?と思うかもしれませんが、That's Hungary🇭🇺😬
日本には日本の、こちらにはこちらの地獄があります💁‍♀️

写真は試験期間の我々。24時間空いてる自習室で瀕死。緊張で寝れず、徹夜で朝イチの試験に備える事も少なくありません。

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テスト数時間前、追い込みをするもの、仮眠を取るものも。

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