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フェリス女学院の子達の前で腹を蹴り飛ばされた話

高校1年の夏まで水泳部に入っていた。1年の秋に強制退部させられたので、正直いい思い出はそんなにないのだが、ちょっと嬉しかったエピソードを毎年夏になると思い出す。

当時、水泳部の部長は女の先輩で丸っこい顔をしていたので「タコ焼き」というあだ名だった。おれたちがそう呼んでいただけで、本人は「ユズって呼んでください」って言ってた気もする。

タコ焼きは強気な女で、おれはよく「3回まわってワンって言ったら許してやる」といった扱いを受けていた。タコ焼きが組む練習メニューもサディスティックで、なんだかんだ強くなるもんで、いきなり関東大会に出ることになった。

当日、会場に早く着きすぎたので、おれはカバンを適当な地面に下ろし、入り口が開く時間まで寝ようと思って横になった。しばらくウトウトしていると、タコ焼きが寝転んでいたおれの腹を思い切り蹴り飛ばし、「寝てんじゃねぇ!!!!」と叫んだ。中学時代経験した、おれの知っている水泳部と全然違う…と空を仰いだ。

会場入りの時間になり、トボトボ中に入ると、タコ焼きが横で歩きながらおれに囁いてきた。「さっき近くで見てたフェリス女学院の子たちがあんたのこと話してたよ」「えっ、なんてですか?」「あんなにカッコいいのにお腹蹴られてて可哀想だって。よかったね」腹蹴ったことは謝罪しないんかいと思ったが、腹を蹴ってくれたおかげで周りの女の子たちが注目してくれたとも言える。トータルちょいプラだなと独自の勘定で納得する自分が情けない。もっと甘酸っぱい思い出を振り返れる人生がよかった。

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