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ゴスラブ殺人事件

★ゴスラブ殺人事件

 2006年、カナダの平和な町で起こった一家殺人事件です。       
 リチャードソン一家が住んでいたのは、カナダのメディスンハットという街でした。2006年4月23日、近所に住む6歳の男の子は、リチャードソン家の8歳の男の子と遊びたくて、リチャードソン家の扉をたたきました。しかし返事が返ってきません。男の子は家の裏側に回って中をのぞいてみることにしました。すると誰かが床にあおむけで倒れこんでいるのが見えました。しかもその人は血だらけだったのです。男の子は驚いて走って家に帰りそのことを家族に話します。男の子の家族はそんなことあるわけないと最初は疑いましたが、こんな小さい子がそんな作り話をするだろうかとも思い、一応確認してみようとリチャードソン家の様子を見に行きました。家の中はその子が言う通りで、彼らはあわてて警察に通報しました。

一階の床に血だらけで倒れていたのは、リチャードソン家の父親マークでした。その傍に妻のデボラも数十か所を刺されて息絶えていました。二人の遺体のそばには犯行に使われたとみられるナイフと、父親がディフェンスのために使ったと思われるドライバーが落ちていました。二階では、息子である8歳のタイラーも冷たい遺体になっていました。タイラーの遺体のそばには、スターウォーズのライフセーバーのおもちゃが転がっていました。おそらくタイラーは小さな体で必死に犯人と戦ったのでしょう。リチャードソン家は4人家族でした。家の中をいくら探しても12歳の長女であるジャズミンの姿だけが見つかりません。彼女はどこかで無事にいるのか、はたまた犯人に連れさらわれてしまったのか、警察は彼女の行方を捜しました。

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 リチャードソン家は近所の人がうらやむ、仲のよいほほえましい家族として知られていました。ただ一つ心配ごとがあるとすれば、それは長女ジャズミンの服装や雰囲気がここ最近少し変わってきていることでした。以前のような明るい子供らしい服ではなく、最近は黒い服、短いスカート、くっきりしたアイライナー、首輪のようなチョーカーにチェーンといった服装に変わってきていたと言います。

 警察はジャズミンの行方の手がかりをつかむために、まず彼女の通う学校を訪れました。ジャズミンのロッカーを開けると、一枚の紙がひらりと落ちてきました。それは体が棒でできているようなシンプルな人間の絵で、漫画のようにいくつかのコマがかかれてストーリーを物語っていました。写実からはほど遠い、記号に近い簡素なイラストでしたが、その内容はショッキングなものでした。書かれていたのは生きたまま炎に焼かれ苦しむ彼女の家族の姿だったからです。
助けて、肉が焼ける。とてつもなく苦しい!というセリフが描かれています。そしてふたりの人間がそれを指さして笑っています。

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 事件の翌日、ジャズミンは130キロ離れた場所で無事に見つかりました。そしてその時一緒に居た23歳の彼氏ジェレミー・スタインキと共に、殺人罪で逮捕されました。
 そう、家族3人を殺したのは、このジェレミーという男と12歳の娘ジャズミンだったのです。
写真を見ればわかるんですが、ジヤズミン・リチャードソンは12歳とは思えないほど大人っぽい顔立ちをしています。アブリル・ラヴィーンみたいなストレートヘアで、メイクもしていて、いわゆるゴスキッズとかエモキッズって感じです。

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 彼女がどんな少女だったかを少し説明します。好きな有名人は殺人鬼のジェフリー・ダーマーとマジシャンのクリス・エンジェル、映画はナチュラルボーンキラー。音楽はThe Misfitsミスフィッツ、The Cureキュア、Bauhausバウハウス、Cradle of Filthクレイドルオブフィルス、Marylin Mansonマリリンマンソン、Slipknotスリップノット、が好きでした。 そしてマイスペース、ヴァンパイアフリークスとzorpia.comという今でもあるSNSにそれぞれKiller Kitty(キラーキティー)とRunaway Devil(ラナウェイデビル)というハンドルネームでアカウントを作りゴス活動をしていました。そして近くのショッピングモールで、23歳の中卒で無職のジェレミー・スタインキと出逢ったのです。彼のハンドルネームはSoul Eater(ソウルイーター)。彼は近くのショッピングモール、日本でいえばイオンみたいな場所でいつも11,2歳の女子をたくさん引き連れていて、ローカルではちょっとしたゴスの教祖みたいな存在だったそうです。おそらく同年代の人たちからは全く相手にされなかったからだと思います。
ジェレミーは自分は実は300歳のWerewolf(ウェアウルフ)つまり狼人間なんだと言いはっていました。
好きな音楽はMegadethメガデス、Panteraパンテラ、Kornコーン、Murder dollsマーダードールズ、Cradle of Filthクレイドルオブフィルス、そしてDying Fetusダイイングフィートゥスだそうです。

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 ジャズミンはそんな自分の歳の二倍も年上の彼氏を作ると、何度も家をこっそり抜け出し、彼のトレイラーハウスを訪れ、2人はダークでロマンチックなポエムを送り合いました。そんな二人の交際を警戒し反対する両親がうざくなってきて、殺害を企てるようになるのです。“完璧な満月になる一時間前に墓地に集まりし、悲劇的な漆黒の誓いをたてよう。無分別な激情を感じたことのない者は来なくてよし” という雰囲気の痛いポエムを送り合っていました。
ジェレミーの生い立ちは実はまぁまぁかわいそうで、スタインクという苗字もくさいという意味のスティンクによく似ていますし、まぁよくいじめられたわけです。何をやってもダメで、学校にもしょっちゅう遅れてくるので小五の時の先生が
『目覚まし時計をセットすることがそんなに難しいことですか』とクラスメートの前でジェレミーを叱ると、ジェレミーは怒り狂って、
『うちには目覚まし時計なんかないんだよ、母親が買ってくれない!』と叫んだことがあって、とても怖かったと当時のクラスメイトは話しています。
彼はアルコールやドラッグも常用しており、怒り出すと手が付けられないという感じで、実際母親はインタビューで、ジェレミーがマリファナを吸っていている時だけはちょっとおとなしいので常にマリファナを吸っていて欲しかったと語っているほどです。
事件当日はコカインでハイになり、深夜リチャードソン家に押し入り、妻デボラを見るなり刺しかかり、殺したあと、かけつけた父親に反撃をくらいながらも、めったざしにして殺しました。その時、父親は
『なぜこんなことをするんだ』と問いました。
ジェレミーは言いました。
『これはお前の娘が望んだことだ』
そして残酷にもそれが父親がきいた最後の言葉となったのです。

 ジャズミンは自分の両親が殺されるのをそばで見届け、ジェレミーに抱き着いて愛しているわと言いました。そし二階で一人怯えている8歳のタイラーを自ら殺しに行ったのです。弟は恐怖におびえ、大好きだったスターウォーズのライフセーバーでなんとか自分の命を守ろうとしましたが、ジャズミンは彼の口を押え、
『シーー、眠りな』と言うと、弟の首をナイフでかききり殺しました。
その後ふたりはなんとパーティーにでかけ、そこでみんなに人を殺してきたことを自慢したといいます。周りには噓でしょと言われ、ジャズミンは、
『ほんとだよ! 弟は、のどにあふれ出した血でうがいをするような音を立ててたもん』と友達にいったそうです。
逮捕されてからも、彼女はまったく反省するそぶりをみせませんでした。
しかし年齢が若かったため、カナダで未成年がうける最も重い刑ではありますが、たったの10年で出所しています。その内のほとんどが精神カウンセラーの元に、保護され守られるという形です。当然もう出所していて名前を変えてどこかで暮らしています。ジェレミーは今も刑務所の中ですが、仮釈放はありえるそうです。CAT
STAY METAL!!! DON'T MURDER!!!
【デスラジオ E95 2021年4月23日配信】


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