人生の最期は血まみれ。もし心肺停止になったらどうしたい?
「生きるか死ぬかなんだよ!!早くしろ!!」
とある日の夜勤で先生に言われた言葉です。今でもその日のことは覚えています。心肺停止で運ばれてきた方なので、確かに生きるか死ぬかでした。
救命することが第一の救急外来で働いていて、救命することに疑問を感じてはいけないのかもしれません。もちろん、救命することが悪いことだと言いたいわけではありません。私が言いたいのは「本人が本当に望んでいたのか」ただそれだけです。
皆さん、自分にもしものことがあったとき、または長生きして人生の最期の姿を想像したとき、あなたはどうしたいですか?
〜事例紹介〜
80歳代痩せ型の女性、シズさん(仮名)
心肺停止状態で、心臓マッサージをしながら救急車で運ばれてきた
救急隊専用の気道確保の管を口から挿入中
病着後、病院用の管へ入れなおし
中心静脈カテーテル(大腿や首など太い血管に針を入れる)を挿入
中心静脈カテーテル挿入後、輸液(点滴)とアドレナリン(心肺蘇生の時に使う薬)を投与。心臓マッサージは継続
レントゲン上、両方の肺が気胸(気胸は、肺に穴があく病気。トロッカーという管を入れて治療する。)
両方の肺にトロッカーを挿入することになった
中々想像しにくい場面ですよね。運転免許を取るときに心臓マッサージの講習を受けたことはありますか?病院では、心臓マッサージにプラスして点滴したり、気道確保して酸素を投与したり、心肺停止になった原因を探し、治療しています。
事例にも載せたとおり、シズさんは気胸でした。気胸が原因で心肺停止になることもあれば、心臓マッサージにより肋骨が折れて、気胸になってしまうこともあります。シズさんの場合、気胸の原因がどちらかはわかりませんが、気胸の治療のため両方の肺にトロッカーを入れることになりました。
トロッカーを入れるためには、皮膚を切る必要があります。そのため、両方の胸が血まみれになってしまいました。大腿にも太い血管に点滴の針を入れたので、血まみれです。
結論からいうと、シズさんのは心臓は1度は動きました。その後、意識が戻ることはなく10分程度で再度心臓が止まってしまい、そのまま亡くなりました。本人が蘇生行為を望んでいたかは分かりませんでした。
人生の最期の姿は血まみれ。本人は望んでいたの?
病院の医師による懸命な蘇生行為により、シズさんの最期の姿は血まみれになってしまいました。この姿を見て家族の考えることは、大きく2つに分けられると考えます。
最期まで頑張ってくれてありがとう
最期は自然な姿で逝ってほしかった
シズさんは最期まで本当に頑張りました。もちろん病院に運んでくれた救命士も治療にあたった医師も看護師も。
本人も家族も最期まで頑張りたいと思っていたなら、シズさんが亡くなってしまったことは悲しいですが、最期まで治療を頑張ったシズさんに対して、「頑張ってくれてありがとう」と思うかもしれません。本人も家族も蘇生行為を望んでいなかった場合、「何でこんなに痛めつけたんだ!」と怒りを覚えるかもしれません。本人は、家族にこんな血まみれの姿を見せたくなかったと思うかもしれません。
ここで考えて欲しいのは、心肺停止になったときの蘇生行為を本人は望んでいたのか、ということです。
もしあなたがシズさんだった場合、病院で懸命に生きる最期を望みますか?もしくは、自宅や施設での最期を望みますか?あくまでも本人の希望、人それぞれの価値観によるので、人生の最期の姿に正解はありません。本人が望んだ最期に出来るだけ近づけていくことが大切だと考えています。
あなたはどんな最期を望みますか?
考えたことのない方は、ぜひこれを機会に考えてみてください。自分の子どもはまだ幼いからできるだけ蘇生行為をしてほしい、痛いのは嫌だから蘇生行為はしてほしくないなど、様々な考え方があると思います。自分の年齢や家族の年齢によっても考え方が変わるかもしれません。
悔いのない人生を終えるために、人生の最期について考える。
もし、心肺停止になったらあなたはどうしたいですか?まずはここから考えてみませんか?
人生の最期は血まみれ。もし心肺停止になったらどうしたい?のまとめ
80歳代のシズさんの人生の最期は血まみれ。本人の意思は不明
蘇生行為を行ったが、結果亡くなってしまった。その姿をみて、家族は最期まで頑張ってくれてありがとう、または最期は自然な形で逝って欲しかったと考えることが予想される
心肺停止担った時の蘇生行為を本人が望んでいたのかを知り、本人の希望する最期に近づけていくことが大切
まず、あなた自身はどんな最期を望むのか、心肺停止の状態になったらどうしたいのか、考えておくことが大切
人はいずれ亡くなるので、どんな人にも人生の最期の姿があります。自分は人生の最期をどう過ごしたいのか、もし心肺停止になったらどうしたいのか。まずはここから考えてみてくださいね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?