やけにうそぶくじゃないか

 やけにうそぶくじゃないか 
 引きちぎったくせに
 きのう 窓辺で 精霊たちと交感していたのを 知っているぞ?
 お前が 夜更けに風呂を炊いた 匂いが この部屋まで届いていた
 俺は まるで 黒曜石と寝床を 共にしている気分だったよ

 うそぶくじゃないか お前
 空も風も ごたごたにして 
 ラタトゥイユをつくっても 
 おれはわかっているのだよ

ラ(したさきが星をなぞる)
タ(硬口蓋を破裂音が叩く)
トゥ(唇は尖り空気が抜ける)
イユ(自死を迎える)
 
 ラタトゥイユ
雨の日のトースター 
 冬のレコード
誰かが 欲しがっていた
 
天井を見上げると お前が微笑んで 
 うそぶいている
あの絵画のように 滴っている
 大きく口を開け 今か今かと まっている
冷たいスティールトースターは 笑わぬ
 静謐をくべるレコードは 鳴らぬ





ぶ じ ゃ な い か

 こんな夜に

 ふきすさぶ夜に うそぶくじゃないか

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