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動物病院やペットサロンと繋がりたい! 手を繋ぎたい!~ドッグトレーナーは叫ぶ~

と、いきなりこんな発言をしても「は?何ですか?」と感じられてしまうかもしれません。そもそもドッグトレーナーってどんなことをしているのか、具体的にお仕事として日々どんなことをしているのか、一般的にはあまり知られていなく、不透明でわかりづらいかも知れません。

一口にドッグトレーナーと言っても、私のように各家庭を訪問する出張トレーナーもいれば、教室を持っていて犬と飼い主さんにスクールに通ってきてもらう場合もありますし、犬だけを預ける犬の幼稚園や保育園、預託訓練なんてのもあります。

私は個人で出張ドッグトレーナーをしていますので、「動物病院とサロンさん、獣医さんやトリマーさんと横の繋がりを持ちたい、手を繋ぎたい!」と叫ぶ前に、まずは犬の生活の中には、どんなことが待ち受けていてるのか、そして私が「空ドッグスクールの出張ドッグトレーナー」として具体的にどんな仕事をしているか、ご紹介させていただこうと思います。

空ドッグスクールロゴ(晴)

皆さんは「ドッグトレーナーをお願いする」「ドッグトレーナーを付けている」と聞くと、どんなイメージを持つでしょう?
もしかすると「犬の行動問題が発生したらお願いする特別なもの」もしくは「訓練競技会を目指すような特別なトレーニングを希望する飼い主さんが依頼するもの」と思われているかもしれません。
中には動物病院やサロンさん、他の犬の飼い主さんから「ドッグトレーナーをお願いした方がいいよ」と勧められることで「自分の犬は他の犬とは違って何か問題があるのだ」とレッテルを貼られたように悲しく感じてしまう方もいるかもしれません。

でも、実はそんなことないんです。ドッグトレーナーにお願いすることって、全然特別なことじゃないんです。
正直な話、犬を飼うことを決めたらどんな人にも相談に来て欲しい。

もちろん、行動の問題が起こってからドッグトレーナーにSOSを出す飼い主さんもいるけれど、実は問題が起こる前に「予防的」にドッグトレーナーに依頼してくれた方が、ドッグトレーナーにとっても、飼い主さんにとっても、何より犬自身にとっても毎日の生活がより早く、よりスムーズに暮らしやすくなると思う。

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そのための引き出しを、ドッグトレーナーは準備しています。犬の習性を知り、それを活かした環境をどう整えるか、お互いがどうすれば暮らしやすくなるか、アドバイス出来ます。
そもそも犬って当たり前のように飼われているけれど、今の家に来て暮らすことを選んだのは犬じゃなくて私たち人間側。そして人間社会で暮らす上で私たちにとっては何でもないことが、犬にとっては普通じゃないことがほとんどなんです。

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犬にとって普通じゃないこと。
以下、シチュエーションごとに見ていきましょう。

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自宅では
・抱っこされる
・ジロジロ見られる
・ベタベタ触られる
・上から人が手を伸ばしてくる
・手足を拭かれる(場合によってはお尻も拭かれる)
・ブラッシングされる
・口を拭かれる
・目やにを取られる
・歯磨きされる
・ハーネスや首輪を着けられる
・首輪やハーネスをつかまれる
・リードをつけられる
・掃除機の爆音にさらされる
・テレビに他の動物が写る、動く
・チャイム音が鳴る
・お散歩で他の犬と挨拶させられる
・他人に声を掛けられる
・他人から手を伸ばされる
・他人から見られる
・他人から触られる
・ハウスに入れられる
・サークルに入れられる
・自転車の籠に乗せられる
・車に乗せられる
・お風呂に入れられる
・タオルで拭かれる
・ドライヤーをかけられるetc.

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動物病院関連では
・他の犬のいる待合室に入る
・診察室に入る
・診察台に乗る
・お尻に体温計を入れられる
・聴診器を当てられる
・超音波用ジェルを塗られる
・超音波を当てられる
・レントゲンを撮られる
・エリザベスカラーをつけられる
・お薬を出される、塗られる(飲ませるのは自宅かな)
・目薬、点耳薬、点鼻薬をされる(これは実際に自宅でも)
・体のあちこちを触診される
・目ジロジロ見られる、光当てられる
・口開けさせられる
・唇めくられる、歯、歯茎触られる
・耳めくられる、液体入れて拭かれる、覗かれる
・手足掴んで曲げ伸ばしされる
・シッポめくってお尻をチェックされる
・体重測られる
・マズルつけられる(口輪)
・ひっくり返されるetc.

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ペットサロンでは
・シンク入れられる
・トリミングテーブルに乗せられる
・アーム付けられる
・ブラッシングされる
・カットされる
・シャンプーされる
・足を持ち上げられる
・足裏の毛カットされる
・バリカン当てられる
・ドライヤー、ブロワー当てられる
・タオルドライされる
・爪切られる
・顔回り、目や口の周りにハサミが来て動く
・肛門腺絞られる
・耳掃除される
・耳毛抜かれる
・他の犬と一緒に飼い主を待つetc.

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これだけ羅列してみましたが、ここに書いたのは犬の人生の中で起こり得る例の、ごくごくほんの一部です。そして、私たち人間にとっては、本当にちょっとしたことであり、事前に言葉で説明を受ければ理解出来ますし、私たちには経験上、次に何が起こるのか予測出来るので、少しだけ我慢すれば大したことではないかもしれません。

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でも犬にとっては?

たかが、ハーネス
たかが、足拭き
たかが、目やに取る、じゃないんです。

だって私たちが、犬に対して説明している言語は犬には理解出来ないのだから。そして、きっと人に飼われなかったら起きないこと。

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犬たちにとって必要なのは「予測性」と「選択肢」だと思うのです。

予測性って、実は私たち人間には普通に与えられていることだったりします。私たち人間はいかに、予測性と選択肢を与えられているか例を見ます。

例えば歯医者さんやお医者さん。

大抵は待合室にリラックスする音楽が掛かっていたり、私たちが気晴らし出来る雑誌があったりビデオが流れていたりもします。

・痛かったら手を挙げてくださいね、と言えばやめてもらえる(選択肢)
・椅子が倒れますと言ってもらえる(予測性)
・お水がかかります、と言ってもらえる(予測性)
・削ります、ゴトゴト響きますと言ってもらえる(予測性)
・注射前のアルコール消毒でも、ヒヤッと冷たくなりますと言ってもらえる(予測性)
・注射ではチクッとしますよ、と言ってもらえる(予測性)

例えばマッサージや針治療。

・強さの好みがあったら言ってくださいねと言ってもらえる(選択肢)
・痛かったり熱かったりしたら言ってくださいと言ってもらえる(選択肢)
・次、腰行きますと言ってもらえる(予測性)
・反対向いてくださいと言ってもらえる(次の体勢への指示)
・次は仰向けでと言ってもらえる(予測性)
・顔にタオルをかけてもらえる(刺激の調整)

どれをとっても、人間界ではあまり勝手にやられることってないですよね?
実は犬にとっての世界って、本人(本犬)に予測性や選択肢が与えられず、これらを人の手で勝手にやられることで溢れていると思うのです。

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そしてここから、ドッグトレーナーの私が仕事の一部としてやっていることを具体的にいくつか紹介していきたいと思います。

もちろん、犬の行動の問題としてトイレが覚えられない、お留守番が出来ない、お散歩で引っ張る、吠えや唸り、噛み付きが実際に起こっていて、生活するのに困っている飼い主さんからのSOSで行くことも多々あります。
しかし、それ以上に、日常生活の犬のケアに関する些細なことで困っている飼い主さんに相談を受けることも多いのです。

「足を拭こうとすると噛む」
「ハーネスと付けようとすると暴れる」
「目薬がさせない」
「目やにを取ろうとすると噛む」
「触ろうとすると歯を当てる」
「歯磨きが出来ない」
「抱っこしようとすると暴れる」など…

だから、ドッグトレーナーとして犬との接し方、犬のケアのやり方をアドバイスします。なぜその行動を犬が必要としているのか、どうすれば犬にとって受け入れやすく進めるのか、プロとして指導しています。

自分の犬に様々なケアを受け入れてもらえるように練習している様子。

でも実はこれらのお悩みって上記に挙げた動物病院やサロンで犬がされることと多くは被っている内容なんです。慣れ親しんだ飼い主さんが家で出来ないことを動物病院やサロンでやることは、もっと難しくなるでしょう。

実はこの逆もあって、飼い主さんのいない動物病院やサロンの方がスムーズに出来ちゃう場合もあります。でもこれには、他の理由があったり、獣医さんや看護師さん、トリマーさんの経験と技術の成せる技でもあって、実際のケアに犬が慣れ親しんでいるかどうか、とは別問題だと思います。

だから各ご家庭に行ってご家族にアドバイスさせていただくのと並行して、実際に動物病院で「パピークラス」を開催しています。

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動物病院の待合室を使って、実際の消毒液のニオイを嗅いだり、実際の聴診器を当ててみたり、体温を測る練習をしたり、注射されるシチュエーションの練習をしたりしています。

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エリザベスカラーや、爪切りなどの器具に出会う経験も、このパピーの間にしておいた方が、将来的に犬にとって経験値として残るのでやっておくべきだと思います。

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爪切りを嗅がせてみたり、爪切りを実際に爪に当ててみたり、良い経験として結び付くにはどうしたら良いかアドバイスさせていただいています。

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実際の動物病院の待合室や、診察室、診察台を使って、この先遭遇するであろう器具を子犬に紹介し、飼い主さんと一緒にお医者さんごっこをして、犬たちに予測性を学んでもらっています。
訪問先のご家庭には、家族で練習出来る課題を出して、練習してもらいます。その成果が出るのは、次、実際にサロンに行くときでしょう。

こちらの動画は前足を触られることを極度に嫌いっていたコーギーちゃん。
実際に飼い主さんに出した課題を動画に撮って提出いただいたもの。(この動画の中で飼い主さんの判断に素晴らしい部分があるのですが、それはまたいつかお話します)

出張ドッグトレーナーとして「犬の嫌がることをそのままやり続けると、どんな弊害が起こるか、いかに犬の信用を失うか」について飼い主さんに伝え、実際に犬が受け入れやすくなるためにどういう手順でケアを進めて練習していくかをアドバイスしたり、動物病院では模擬診察室を設定し、お医者さんごっこや、トリミングごっこを積極的に取り入れて行っています。

こちらの動画は、以前トリミングショップで暴れてしまい断られてしまった子犬の負担を減らせるよう、家族に出した宿題です。再びサロンさんに受け入れてもらえるよう、家族全員で頑張ってくれました。

ほんの少し、ドッグトレーナーの仕事の一部が具体的に見えてきたでしょうか?

さて。では、ここからがタイトルにもなっている本題。
「動物病院やペットサロンと繋がりたい~ドッグトレーナーは叫ぶ」です。

ペットサロンさんとの場合

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ここ最近、ドッグトレーナーの私のもとへ、個人的にトリマーさんからお願いされることも、お願いすることも多くなってきました。

サロンさんのクライアントで施術に苦労している犬について、どんな練習をどんな手順で進めたら良いか、飼い主さんにどう伝え、どのようにやってもらったら良いか?というご相談です。
逆にトレーナーの私からは、私のクライアントさんでサロンでのケアが苦手で敬遠されてしまう犬がいた場合、施術がやりやすくなる姿勢や、施術に伴う刺激をトリマーさんから洗い出して教えてもらい、それをクライアントさんとしておくので、必要な手順を踏んで施術を受けてもらえないか?という相談をしています。

私から見ると、サロンで働くトリマーさんたちの、犬へのさりげない技術と腕と時短で仕上げる業は本当に尊敬するもので、到底ドッグトレーナーの私には出来ないことです。感動すら覚えます。
だからこそ、トレーナーとして出来ることは、犬がその姿勢に慣れている、手が顔の近くに来ても怖いことは起こらないと予測性を持てるように飼い主さんと練習を積んでおくことで、実際のトリミングで犬とトリマーさんの負担が減るのではないかと考えています。

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また箱を持たない私のような出張ドッグトレーナーには、サロンの空間にトレーニング中の犬飼い主さんとただお邪魔させていただくという機会がもらえるということは大変貴重なことで、実際の施術は受けずオヤツだけ食べて帰るハッピービジットの経験と時間を犬に経験させることが出来ます。
仮にトリマーさんの手が空いていれば、トリミングテーブルに乗ってトリマーさからおやつをもらって食べるだけで帰るという経験が増えれば、その空間や器具に慣れるチャンスも増えるでしょう。
トリマーさんにとっても、おやつをくれる美味しい人と、犬に認識してもらえる良い機会かと思います。

※サロンさん以外でもお声がかかればしつけ教室として出張いたします。

動物病院の場合

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動物病院の場合もまた然りで、大抵は犬の好きじゃないことをしなければならないのが、動物病院です。
動物病院に行くときというのは、犬の「具合が悪いとき」「どこか痛いとき」「注射しなければならない時」など、そもそも犬がマイナスの状態の時で飼い主さん自身も心配で不安な気持ちでいっぱいの時に訪れ、マイナス感情を生みやすい治療が待っています。

でも、その経験だけしかないと、動物病院は本当に犬にとって苦手で怖い痛い場所になってしまう可能性があります。

そうならないように、動物病院の診察の空き時間などを有効に使ってドッグトレーナーにパピークラスの場としての提供や、ハッピービジットの場として協力していただけると大変嬉しいのです。
出張トレーナーにとっては、箱を貸していただける貴重な場所となりますし、動物病院にとっては場所代を取っていただけると思います。
何より来院患者さんへ向けた顧客サービスの一つにもなるでしょう。

空き時間のハッピービジットだけでなく、トレーナーのクライアントに診察枠を予約してもらい、治療は無いけど診察室でオヤツを食べるだけの時間、動物看護師さんと遊ぶだけの時間などとして協力してもらえると大変ありがたいのです。

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そして、このような良い経験を犬に多く積んでもらうことで、動物病院やサロンに行くことの犬自身のストレスを軽減させることが出来たら、施術や治療ももっとスムーズになるのではないかと考えています。

動物病院やサロンに着いた時点で、恐怖や不安、移動などでストレス過多の状態の犬も多いと思います。その場合、施術や治療も通常より困難になると思われます。

そういった犬や飼い主さんのお手伝いが出来るのがドッグトレーナーだと思っています。少しでも犬の不安や恐怖、ストレスが減るようにトレーニングプランを考え、飼い主さんと一緒にトレーニングを進めていきます。

ドッグトレーナーは、診断をすることも治療することも出来ません。カットすることもドライすることもあらゆる施術にも爪切りにも長けていません(私の場合は出来ません!)

ドッグトレーナーの得意なこと。それは例えば、掃除機へ過剰反応する犬をトレーニングしていくように、その姿勢を取ることが苦痛でなくなるよう、その姿勢が慣れたものになるよう、その器具が怖いものではないと犬が予測出来ること、その器具に慣れていくよう丁寧に教えていくことには長けています。

そんなワケで、「動物病院やペットサロンと繋がりたい!」と、個人のドッグトレーナーとして叫んでみました(笑)
ドッグトレーナーの多くは、そういった機会を求めていると思います。

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ドッグトレーナーと手を繋いでくださる、動物病院さん、ペットサロンさん、いらっしゃいませんか?どうぞよろしくお願いいたします!

以下に私のお仕事内容を動画でざっくりまとめてみました。

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犬を飼うって決して簡単なことではないですよね? 思っていた以上にバタバタで、犬の考えていることがわからなくて、本当に大変だと思います。犬のしつけに関する情報量が多すぎて、何を信じたら?と迷っていいる方もいると思います。そんな犬のオーナーさん達のサポートが出来ればと、思っています!