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【書籍紹介】『唯識の思想』


「二元論」がはびこる現代に求められる智慧


本書は11/22に投稿した
“大人の学び”の学びかた(3)「わかる」の中でもご紹介しました。

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 ◆ 著者

 著者の横山絋一さんは立教大学名誉教授の仏教学者で、
専攻の唯識思想を中心に仏教関連の著作を数多く出版されています。
1997年(平成9年)には興福寺で得度され、一如の法名もお持ちの方です。


◆ 本書のテーマ

本書のテーマである唯識思想は、
テレビドラマにもなった『最遊記』で三蔵法師として有名な
玄奘が17年にもわたるインドへの旅の末に中国にもたらしたのだそうです。


「唯識」とは「唯だ識、すなわち心だけしか存在しない。自分の周りに展開するさまざまな現象は、すべて根本的心、すなわち阿頼耶識から生じたもの、変化したものである」と主張する思想です。

  • 【人人唯識】:人間は自分という牢獄に閉じ込められた囚人である。「一人一宇宙」

  • 【唯識無鏡】:唯だ識、すなわち心が存在し、心の他に「自分」も「もの」も存在しない。

  • 【唯識所変】:すべての存在は、根本心である阿頼耶識が変化したものである。


◆ 心に残ったフレーズ

ぼくは本書で「唯識」という思想にはじめて触れました。

「理屈っぽいな」と感じる部分もありましたが、
全体としては共感できる考え方が多かったです。

以前ご紹介した〈一水四見〉以外にも、
心に残ったフレーズがいくつかありましたのでご紹介します。

その人そのものは、本来は「憎くもなく憎くないこともない」いわば無色の人なのですが、私が私の思いと言葉で憎く色づけしてしまったのです。

(P30)

有か無かと考えること、これが迷いと苦しみの根本原因となるのです。
(中略)
言葉が一切の現象をつくり出していることに気づきます。

(P105)

人間が「自然」と考えているものがはたして”自然”であるのかを、いまここで反省してみる時代がきたのではないでしょうか。

(P138)

自分の無知に気づき、「よし、ではいったいなにかを知るぞ」と決心して努力精進を開始した人が菩薩であり、その誓願が「上求菩薩」であります。

 (P242)

「自分」と「他者」とその間に展開する「行為」との三つを分別することなく、行為そのものに成り立って生きることです。菩薩はまさにそのような生き方が可能な人なのです。 

(P258)


◆ ぼくの感じたこと

現代は表面的には穏やかで多様性が進んでいるようにも見えますが、
実態は二元論的で異なるものに寛容でない社会になっているように感じませんか?

  • 自分は正しい・相手は間違ってる

  • ◯◯は良い・XXは悪い

  • □□が当たり前・△△はおかしい など


多くの人がSNSなどで自由に自分の意見を表明できるようになったことで、
「エコーチェンバー現象」が起こり、その傾向に拍車をかけています
(ぼくの投稿もそのひとつかもしれませんが)

「エコーチェンバー現象」
SNSなど自分と似た意見や思想を持った人々が集まる場で、自分の意見や思想が肯定されることで、それらが正解であるかのごとく勘違いする、又は価値観の似た者同士で交流・共感し合うことにより、特定の意見や思想が増幅する現象。(ウィキペディアより)


こんな時代だからこそ、

「すべての存在は心が変化したもの」「見方・考え方次第」
という唯識の思想に多くの人が触れることが大切だと感じますね。


ぼくは自分と異なる考えや意見などに触れたときは
否定するのではなく、こう思うようにしています。

  • 「いろいろある」

  • 「ヨックモック(YOCMOC)」Your Opinion is Correct. My Opinion is Correct, too.



マガジンにも保存しました。

「学びをよろこびに、人生にリーダシップを」
ディアログ合同会社 小川剛司(つよし)


美味しいものを食べて、次回の投稿に向けて英気を養います(笑)。