「嫌い」が言える環境 (2022/6/2)
記事の長さはおよそ2,300文字。3~4分程度で読めます。
記事のポイント
元陸上選手の為末大氏が自身のニュースレターで意外なことを書いていた。「既存のスポーツシステムはスポーツ好きもうみましたが、スポーツ嫌いの方もたくさんうんできました」。
同氏によるとスポーツは「社会的な価値観を増幅させる機能」があり、苦手な人や権威的な体育会の体質で嫌な体験をしてきた人を遠ざけてしまうことも理解する必要があるという。これはスポーツ以外にも通じる。「楽しいのが当たり前」と支配的な価値観が強まりすぎると、「アンチ」を生むことになる。
環境志向の高まり、縦型社会の揺らぎなど、社会経済は激変している。当たり前と思い込んでいる価値観に対して「嫌い」が顕在化し、市場を揺さぶる。
例えばお酒。「飲みニケーション」として成長してきたアルコール市場では、ノンアルコール、あるいは微アルコール派が増えてきた。新型コロナウィルスの感染拡大で飲酒の場が減り、リモートワークが拡大。すると、酒、あるいは酒でつながる文化に嫌気がさしていた層が顕在化し、アンチ市場が広がった。
実際に酒を飲めない、あえて飲まない人は約4千万人ともいわれ、酒類メーカーも嫌われない努力に余念がない。
ファッションの歴史も似ている。特に1980年代から90年代にかけて「おしゃれは、いいことだ」的な価値観が急速に広がった。そしておしゃれが苦手な人は「ダサい」と言われるようになる。
ここで登場したのがユニクロ。シンプルで、誰でも簡単にコーディネートできるし、他人との差を考えなくて済む。振り返るとユニクロの成長は多くの「ファッション嫌い」を捕まえたことだろう。
日常消費のスーパーでも「嫌い」をつかみ、実力企業を育んだ。「買い物は面倒」「レシピを考えるだけで嫌いになる」消費者が増えていることに気づいたのが、ヨークベニマルやヤオコー。日々の献立作りの悩みを解消するミールソリューションをいち早く導入し、メニュー提案型の売り場づくりを推進し、今も業界のリーダー的存在だ。
キューピーは「高カロリーを嫌う顧客」を想定し、カロリーハーフタイプを約30年前に発売した。
もちろんユニクロなど今の強者も環境対応などで手間取ると、一気に「嫌い」を増やしてしまう。嫌いをつかむか、嫌われることを未然に防ぐか。押しつけより、自己否定を辞さないアンチへの先回りこそが消費ビジネスを制する。
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「アンチ」=「嫌い」をビジネスに取り込むことで成功した企業の事例が紹介されていました。
記事の中で、
「支配的な価値観が強まりすぎると『アンチ』を生む。」
との説明がありました。
確かにそういう面もあると思いますが、私はより厳密にいえば、
「支配的な価値観が強まりすぎると『アンチ』であることを表明できなくなる。」
という面のほうが強いのではないかと考えます。
どんな商品でもサービスでも、それを「嫌い」な人は最初から一定程度いるでしょう。
でも「嫌い」なことが世の中での支配的な価値観と異なる場合、なかなか声に出して言えない、あるいは心の中で思っていても、あえて声に出しては言わないことが多いのではないでしょうか。
特に道徳的や倫理的に正しい、との価値観が支配的になっているものについては顕著でしょうね。
それが誰かが声をあげるなど、なんらかのきっかけで「嫌い」なことを言ってもいいんだということが認識されると、それまで心の秘めていた人たちも声に出して表明するようになり、一定規模の市場が生まれビジネスとして成立することになるのだと思います。
この現象は商品やサービスに限ったことではなく、人についても同様です。
それまで世間から高い評価を得て、聖人君主のように扱われていた人になんらかのスキャンダルが出ると、そこから、あれもこれもと次々と醜聞が噴出した例をいくつも思い出しませんか。
どんなものでも人でも、みんなが同じように好きになったり、同じ意見になったりすることはあり得ません。いろんな好き嫌いや意見があるのが当然ですよね。
これは一方が正しくて、他方が間違っているということでもありません。
いずれもが正しいことです。
大切なのは、世の中での支配的な価値観に同調する(合わせる)ことではなく、たとえ支配的な価値観と違っていても遠慮なく意見が表明できる環境であることだと思います。
そしてそんな環境を実現するためには、まず私たち一人ひとりが、世の中には「いろんな意見や考えがある」こと、そして「いずれの意見や考えも正しい」と考え、「受け入れる」ことが大切ではないでしょうか。
(受け入れることと、意見に賛成することは、別の問題です)
「いずれの意見や考えも正しいと考え、まずは受け入れること」=【ヨックモック(YOC-MOC)】からはじめてみませんか?
【ヨックモック(YOC-MOC)】
Your Opinion is Correct & My Opinion is Correct, too.
(あなたの意見と私の意見、どちらも正しい)
※シーガルでお馴染みの洋菓子屋さんではありません(笑)。
本投稿は日経新聞に記載された記事を読んで、
私が感じたこと、考えたことについて記載しています。
みなさんの考えるヒントになれば嬉しいです。
「マガジン」にも保存しています。
「学びをよろこびに、人生にリーダシップを」
ディアログ 小川
美味しいものを食べて、次回の投稿に向けて英気を養います(笑)。