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【所感】L'Arc〜en〜Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND【全公演終了】


去る4月14日、【L'Arc~en~Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND】が全公演無事終了しました。

胸の奥に突き刺さったままの情景が抜けません。


以前1ヶ所目時点での所感をアップしましたが、

全7ヶ所15公演を経て、初見時に受けたインパクトはそのままに大変な進化を遂げたライブツアーでした。
いずれライブ写真や映像は公開されるはずだけど(されてくれないと超困る)、
今回自分の身体で感じ取った光景や感情は忘れたくないので、全公演通じての所感を綴ることにしました。

ツアー概要

02/08、10、11:東京都 国立代々木競技場第一体育館
02/2829:大阪府 大阪城ホール
03/0607:東京都 国立代々木競技場第一体育館
03/16、17:福岡県 マリンメッセ福岡A館
03/2324:愛知県 ポートメッセなごや第1展示館
04/0607:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
04/1314:神奈川県 横浜アリーナ (ファンクラブ会員限定公演)

太字が自分の参加した箇所。
最終的に全15公演中12公演、うち2回(03/24名古屋、04/06埼玉)はプレミアムシートでの参加となった。
この2ヶ月は、資金面をはじめ、己のあらゆる可処分資源をラルクにほぼ全振りしたけれど、
どの公演でもかけたコスト以上の素晴らしい体験が得られたので、後悔は一切ない。

でもクレジットカードの請求額と預金口座の残高はしばらく見られない。多分桁が変わってる。怖すぎる。

セットリスト

<オープニングVTR>
01.All Dead/THE BLACK ROSE
02.EXISTENCE
03.THE NEPENTHES
04.砂時計
05.a silent letter
06.Ophelia
07.Taste of Love
<幕間VTR①>
08.Voice
09.vivid colors
10.flower
<MC①>
11.It's the End
12.shade of season/Cureless
13.Blame
14.叙情詩
<The L'ArQuiz~幕間VTR②>
15.GOOD LUCK MY WAY
16.Killing Me
17.自由への招待/NEXUS 4
<MC②>
18.ByeBye
19.ミライ
20.Link
<MC③>
21.MY HEART DRAWS A DREAM

「/」は各会場1・2日目で差し替えになったもの
2月代々木公演のみ、1・3日目NEXUS 4、2日目自由への招待の変則パターン


今回も直近2回のアリーナツアー同様、
アリーナ中央に円形のステージ+そこから四方に伸びる花道によるセンターステージによるライブ。
開幕時にステージ上で演奏する4人を正面から見られる客席を東側としたとき、5-6曲ごとに東→北→南→西とステージが回転して正面が変わる。

また今回の新要素として、無線制御対応のペンライト「L'ライト」がグッズで販売され、光の自動制御演出が取り入れられた。
全席に配布したフリフラを用いた光の演出は、過去のラルクのライブで何度かやっているが、ライトを持つか否かは来場者一人一人に委ねられるというのは今回初めて。しかし見る限りどの公演も9割以上がL'ライトを手にしていて、自動制御ならではの各曲に合致した鮮やかな光の海を見られることができた。
L'ライトは制御下になくとも通常のペンライトとして使用することができるが、その状態だと7色(赤・橙・黄・緑・水色・青・紫)いずれかの常時点灯しかでかない。白やピンクなどの特殊色や、点滅やグラデーションのような色変えはラルクのライブにいる時にしか見られないのがにくい仕様だ。


セットリストこそ(日替わりを除いて)曲の差し替えや追加はなかった代わりに、
全体を通して演出が日々アップデートされていったのが、今ツアーの特筆すべき点だった。
シングアロングを求める曲において、スクリーンに表示される歌詞のフォントが見やすいものに変わったという比較的ライトなものから、
照明の色が変わる、火花の柱が噴き出すという大掛かりなものまで、
客席から分かるだけでも相当数の変化があった。

その足し引きの細かさ、M-1グランプリ時期の漫才師のネタ叩きレベルかい。

そんな変化もあって、公演を重ねるにつれ、それぞれの曲に印象的な光景や思い入れが積もっていったので、
1曲単位でいろいろ書いていく。
自分で自分の首を絞める文字量になりそうだけど。

~オープニングVTR

開演前、会場に入った時点から、LEDスクリーンには雨が降りしきる夜の森が映されていた。
ここ数年のラルクのライブでは、客入り時間中はメンバーセレクトのBGMが流れるなか、SNSで募ったメッセージがスクリーンに映されているのが通例だった。
そのためライブが始まる前から、既に何かが静かに始まっているという雰囲気は新鮮で、緊張感と期待を大いに掻き立てられた。

開演時刻を過ぎる頃、シタールで奏でられていると思しき異国情緒漂うBGMが、雨音に混じり始める。
まもなく開演しますのアナウンスが入るが、なかなか客電は落ちない……と思いきや。正確には段々と客電が絞られて、次第に会場は暗くなっていった。本当に少しずつ(真空ジェシカのセミのネタと同じくらいの徐々暗転ってツイートしたけど、誰にも理解されなかった)。

そうして現実から地続きのように始まったUNDERGROUNDのオープニングは、現実からのシームレスな移行に反して思いっきりダークファンタジー。

雨が降りしきる暗い夜、黒羽のカラスが古城の中に舞い降りる。
嘴に咥えていた種を地面に落とすと、そこに今回のツアーロゴが魔法陣のように浮かび上がった。
そして古城の地下室へと降りていく、頭から漆黒のローブを被った4つの人影。
地面に描かれた魔法陣を囲うように立った彼らは、各々の掌から魔法の光をその上に注いでいく。

言うまでもなくこの4人こそがL'Arc〜en〜Cielなのだが、メンバーが実写で登場し演技(らしきもの)をするライブのオープニングも前回がいつだったか思い出せないほど久しぶりで、この時点でテンションが上がった。
全員が50代半ばにして未だ、魔術を使って違和感のないビジュアルをしているということが、何よりの魔法であり奇跡だ。
また4人の掌から発せられる魔法の光は、それぞれ色が異なっていたが、
これは四大元素をなぞらえていたと思われる。
hyde:橙=炎
ken:風=緑
tetsuya:青=水
yukihiro:黄=土
あくまで仮説ではあるが、全員パブリックイメージやバンド内でのポジションにぴったりなのが、さらに厨二病の魂を擽った。

背の高い扉が開き、真っ白な光の方へと足を踏み出す4人の後ろ姿で、映像は終わる。
鍵盤の一音が規則的に鳴り響き、スクリーンに投影されたモノクロのツアーロゴに波紋が浮かぶ。
そんな緊張感と期待が最高潮まで張り詰められた状態で、いよいよ本編の幕が開いた。
ステージを囲む紗幕は下りたまま。

01-A. All Dead

オープニングから響いていた鍵盤の音がAll Deadのイントロに化けた瞬間、全身の産毛が逆立った。
「UNDERGROUNDの1曲目」という高すぎるハードルを完璧に超えた選曲だった。
タイトル通りの殺意と悲壮を生の音で浴びられて、この時点でチケット代の元は取ったとすら思えた。
サビでは、紗幕に嵐のように吹き荒れる花びらがプロジェクションマッピングで映し出されていた。
曲の世界観と美しくマッチしていたけれど、どんな表情で4人がこの曲を奏でていたかをもっとしっかり見たくもあった。
ただし埼玉公演だけは、モニターに紗幕越しではないかなり鮮明な姿が映っていたので、WOWOWではその映像も見られたりするのかも?

それとアウトロでhydeが音源にはない歌詞を歌っていたけど、最後まで明確に聴き取れなかったことだけが残念。
All Deadが収録されたTierraリリースから30年経った今、hydeはどんな想いを新たに足していたのだろう。

01-B.THE BLACK ROSE

2月代々木3日目でAll Deadから差し替えで初登場した瞬間のどよめきがすごかった。
横浜アリーナ公演のMCで、初演奏時のイントロでtetsuyaさんが満足気に笑っていたことを指摘する質問が読まれていたけど、その余裕のあったファンもすごい。
紗幕の演出はAll Deadと同じものだったけど、「薔薇を撒いたのは誰?」の歌詞があるためこちらにもぴったりハマっていた。
hydeが「足元に散らばるthe black rose」を歌いながら、しゃがんで足元をなぞっていたのが印象的。
ラルクの曲で明確なストーリーラインのある歌詞は少ないから、この曲のサスペンスを演じる姿はもっと明瞭に見たかった。
名古屋2日目で出だしの歌詞ぐにゃぐにゃに間違えてたのは流石にズコーッ案件だった。

02.EXISTENCE

紗幕が落ちて、4人の姿が顕になる。
ファンの歓喜の声が爆ぜて満ちる。
1曲目では消灯していたL'ライトが眩い白でチカチカ点滅を始める。
2曲目で空気を一気に爆発させるセットリスト、ラルクのライブだなあと感じる。
歌詞には眠れない夜の怒りが篭っているけれど、サビのは明るくて晴れやかな景色が見えるのが面白い。

この曲が演奏されたのはAWAKEツアー以来だったが、当時自分は部活と受験勉強に追われ、ライブに行くことが叶わない高校生だった。
予備校の夏期講習の合間にツアー当日の代々木第一体育館だけ見に行った。グッズを買いたかったけど、長蛇の列で授業に間に合わず諦めたことも覚えている。
その後ライブDVDを繰り返し見て、受験が終わったらライブに行けるようになりたいと切望していた。

AWAKEツアーから19年、代々木第一体育館でライブの2曲目に演奏されるEXISTENCEを生で聞いて、高校生の自分が抱いた悔しさが浄化された気持ちになった。
しかも日によってはhydeはAWAKEと同じく軍帽をかぶっていたので、それも長年の想いを晴らすのに一役買ってくれた。

03.THE NEPENTHES

大阪公演以降は火柱が上がる。L'ライトは主に緑と紫で光って、妖しい熱帯夜のような空気に。
tetsuyaがベースを指弾きし、kenはトーキングモジュレーターを使う、視覚的にも聴覚的にも珍しい要素が多くて脳が忙しかった。

ストレートに性行為を歌った曲だけあって、hydeはソレを思わせるように腰を揺らめかせていたし、
公演を重ねるにつれ、大サビ前の間奏でどんどん激しく喘ぐようにもなっていた。
まるで楽器隊の重厚で激しい四つ打ちに煽られ興奮させられているようで、生唾呑み込まずには見られない光景だった。

ただし当方ハイキックのオタクにつき、『さぁ逝こう』で花道に迫り出してハイキックするhydeがなにより興奮した。打点も高かった。

04.砂時計

今回のセットリストで、バンドとしての一体感というか調子の良さがダイレクトに反映される最初の曲。
特に名古屋2日目がとてつもなくよかった。
4人それぞれの感情が乗った歌声と音色でありながら、それが重なることによるグルーヴとスイングもあった。
大サビの『終わることの無い』での、溜めからのジャン!!が見事に揃ってて鳥肌が立った。

砂時計は作詞作曲共にtetsuyaで、歌詞もメロディもtetsuya節全開だから、それをhydeが表現していることに、とてもL'Arc〜en〜Cielを感じていた。
目を閉じて十字架を切りながら歌う落ちサビが特にグッときた。

A~Bメロで砂が降り積もっていき、サビで嵐のように風に撒かれて消えていく、というステージ下のLEDスクリーンの映像がすごく曲と合っていて好きだった。
が、3月の代々木公演以降なくなってしまったのが、なかなかに残念。

05.a silent letter

2Aでステージが時計回りに動き始め、270°回って正面が北側に変わる。
明滅する深い青のL'ライトに照らされ、ゆっくりと回転するステージは、オルゴールのようでもあり、夜の海原を漂う舟のようでもあった。

砂時計よりさらにスローなバラードながら、引き続きバンドの一体感が強い1曲だった。
ツアー期間中、kenはこんなツイートをしていた。

これの影響は大いにあるが、音に身を委ねながら、宇宙の広大さとそこに独りぼっちの寂寥を同時に感じていた。
hydeとkenは宇宙に放り出されてしまうけれど、tetsuyaとyukihiroが静かに力強くリズムを支えてくれることで、ギリギリの引力が保たれて宇宙を漂うことができていた。
さらに特筆すべきは、tetsuyaのコーラス。
2人目のボーカルと呼んで差し支えないほど存在感を主張するコーラスもできる彼が、この曲では完全にhydeの影に徹していた。同期でhyde自身のハモりを重ねているのかと錯覚するほど、hydeの声に溶け込んで主旋律を美しく立てていた。
特にギターとボーカルしかない1コーラス目は、hydeの方を凝視して僅かな歌声の機微にも完全に寄り添っているのが、目に見えて分かった。

06.Ophelia

前曲で真っ青に染まったライトが、イントロのピアノソロに合わせて、光線の1本ずつ紅に染め上げられていくところからして美しかった。

憂いを孕んだ優美な曲だが、その優雅さに反して全パート異常に手数が多いということを、今回のツアーで初めて生で見るまで全く気付いていなかった。特にyukihiroは後ろから見ても手足が細かく忙しなく動いているのが分かるほど。
大阪公演以降、kenは椅子に座って、口にくわえたタバコから煙をくゆらせながらアコースティックギターをかき鳴らしていたが、その姿はとてもカタギには見えなかった。強すぎる色気は最早殺意と等しい。

2月代々木公演では正直百年の恋も冷めてしまいそうだったhydeのサックスが、公演を重ねるごとに艶やかな音色に磨かれていってほっとした。

07.Taste of Love

yukihiro加入以降初めてライブで演奏されたというレアリティに加えて、ツアー中演出のブラッシュアップが最もえげつなかった、序盤のハイライトになった曲。
実装されたタイミングはそれぞれだけど、千秋楽時点では以下のようになっていた。

  • tetsuyaのベースに小型カメラが取り付けられ、ベースを弾く手元から上半身を煽る角度の映像が主となる。

  • yukihiroの足元に固定カメラがあり、バスドラを踏む足が映される。

  • 後ろを向いて弾くkenを少し遠くから狙う固定カメラがある。
    (大阪公演などではタバコを咥えている口元をやたらアップで撮るなどもしていた)

  • ステージの床の一部が金網になっていて、その下に設置されたカメラが網越しにhydeを撮っている。
    最初はhydeに気付かれないように覗き見しているような視点だが、途中からhydeがしゃがみこんだり床に這いつくばったりしてしてくる。

  • 四つん這いになったhydeが『You treat me like a dog』の歌詞に合わせて、自身の衣装のスカーフをリードのように上へ引っ張りあげる。
    間奏で苦しそうに、しかし大変艶めかしげに喘ぎちらす。

  • サビの『愛している』で、L'ライトが赤と紫に点滅する。

  • tetsuyaがドラムセット後ろのお立ち台に上がる。それまでのピンクがかった紫色だった照明が、大サビ前のベースソロで一気に真っ白なスポットライトになって、マンガの集中線のようにtetsuyaを照らす。

ツアー初日からベース手元ドアップと側溝の二大変態アングルが実装されていた時点からだいぶ様子がおかしかったが、最終的にここまでフェチズム大博覧会の様相を呈するとは思っていなかった。
個人的にはそれほど思い入れのない曲だったが、これでもかと背徳的な世界観を顕に表現されて、公演が進むほどに早く見聞きしたくて待ち遠しくなっていった。

幕間VTR①

オープニングVTRで登場した古城やカラス、魔法陣の上に落とされた種を3Dスキャンしてデジタル変換した映像が映し出される。
その後メンバー4人の3Dスキャンされたデータも1人ずつ映されていく。

ブラウン管テレビの電源を入れるようなカットで始まり、ピコピコした音のBGMが流れていることもあって、1990年代を彷彿とさせる映像だった(Perfumeみたいという感想も多く見られた、それも分かる)。
モチーフが再登場しているから、オープニングから地続きの映像だとは分かるものの、明確に何を意図しているか掴みきれなかったのが悔しい。
UNDERGROUNDの種にはL'Arc〜en〜Cielの構成データが詰まっていて、魔法によって発芽したその中身を分析、そして最新のラルクを構築しようとしている最中の映像、
というのが自分なりの解釈なのだが、どこかで答え合わせはできるだろうか。

08.Voice

妖しい欲に満ちた夜の暗さから一転、朝焼けを迎える曲。

ステージはぱあっと明るくなり、hydeとtetsuyaは1回目のお召し替えも済ませて登場。
はっきり見て取れるようになったメンバーの表情も明るくなり、緊張感から一気に解放される。hydeは花道に出て客席とのコミュニケーションも始める。
ステージ内に吊り下げられた縦長のスクリーンには、この曲が収録されたアルバム『DUNE』のジャケットのように、朝焼けの空に無数の椅子が吹き飛んでいく映像が映されていた。

それから、ここの間奏で必ずhydeが「東京!」「大阪!」と開催都市名を発していたが、
横浜アリーナでのファンクラブ公演では「横浜」ではなく「ルシエル!」と呼びかけてくれたのが、特別扱いされているようでとても嬉しかった。

また2月の代々木公演では、この後のMCでkenがラルクに加入してVoiceを作った時のエピソードを話していた。

こうやって過去を覗かせてもらえるのも、レア曲にスポットを当てるという今回のライブのコンセプトならではのことだった。

09.Vivid Colors

L'ライトはピンク・黄色・緑に点滅し、会場はタイトル通りビビッドに染まる。
tetsuyaもメインステージを飛び出して花道へ。hydeの「ジャンプ!ジャンプ!」の煽りを受けて、飛び跳ねながらくるくる回るのがとても軽やかで可愛い。

ライブ頻出曲ではあるが、だからこそ大サビでhydeに「Singing!!」と促された時のシングアロングの揃いっぷりが初日からすごかった。歌詞のテロップが一期一会みあふれるフォントだったのには笑っちゃったけど。
アウトロでは縦長のスクリーンにビビッドカラーの花びらが降り注いでいて、次への布石になっているのが小粋で美しかった。

10.flower

これもライブ定番曲ではあるものの、ツアー終盤で演出どころか曲そのものが急激に育って感動を覚えた。
メインステージから伸びる各花道の付け根の面にはLEDモニターがついていて、この曲では少し褪せた色の花たちをたくさん敷き詰めたような映像が投影されていた。
2番サビ後、hydeはそのモニターの上に跪くように膝をついて、腕を大きく開き天を仰いで『like a flower…』のリフレインを歌い上げていた。
その様子はクレーンカメラで撮られ、hydeのアップからぐーっとカメラが引きになり背景までが画面におさまり、まるでhydeの歌声を引き金にして大輪の花たちが咲き乱れたようなドラマチックな絵面が描かれた。
目の前の光景がライブであることが信じられないほど完璧なシーンは複数公演で見られたがその度に、hydeは歌唱中に「見せられる(魅せられる)唯一無二のボーカリスト」だと実感した。
テレビの音楽番組にたくさん出て、万単位のキャパの会場でたくさんライブをやってきただけあり、ラルクはメンバー全員ビジュアルでも見せるスキルに秀でたバンドではあるけれど、やはりその顔であるhydeのそれは異次元と言わざるを得ない。

そして横浜の千秋楽公演はボーカルまで凄まじかった。
3度目の『like a flower』が、とてつもなく透き通っていて、それでいて力強いロングトーンだったのだ。ファンクラブ会員しかいない会場の誰もが、あんなに美しいflowerは初めて聴いたとばかりに、歌声を称える割れんばかりの拍手が湧き上がった。
自分はメインステージでぶんぶん腕を振り上げ、近くのファンたちのL'ライトの旗振りをしていたken(かわいい)に目がいっていたが、あまりにも美しく高らかな声が聞こえて慌ててそちらを振り返り、気付けば賞賛の拍手を送っていた。

正直「UNDERGROUND」なセットリストにはそぐわない曲では……もっとレア曲を……と思っていたけれど、キャリアハイとも言える歌声を聞けた今となっては、素直にごめんなさいせざるを得ない。
50代半ばにして衰えないどころか進化を続けるボーカリスト、率直に化け物。弛まぬ向上心や努力を重ねる化け物。

MC①

ここでステージは反時計方向に回り、正面は南側へ。
ライブ中最初のMCでは、うるさいなあと笑ってあしらいつつ、久方ぶりの声出し解禁公演となったことを喜ぶような内容が多かった。

今ツアーのMCで特筆すべきは、大阪公演から追加された自動翻訳テロップ。
メンバーが喋った文言とその英語訳がLEDスクリーンに表示されるもので、英訳はAIを活用したリアルタイム翻訳らしい。
ラルクのライブには諸外国からの参加者も少なくないので、素晴らしい技術の有効活用だと感心した。導入当初は日本語の聞き違いや固有名詞の未学習による、とんでも誤訳が飛び出し爆笑を生むこともあったが、公演を重ねるごとにめきめきと精度がアップデートされていた。
hyde、ken、tetsuyaの下ネタ&関西弁にも耐えながら。

「まだまだライブは続きますが……」を振りにして次の曲へ。

11.It's the end

flowerの微睡みの午後から、太陽が沈む。スクリーンには荒野を駆ける映像(下ポスト2枚目参照)。

hydeはタンバリンを鳴らしながらの歌唱。
ツアー序盤でだけ、サビ前のキメ部分でブーツの踵でタンバリンを鳴らしていたのがとてもかっこよかった。

12-A.shade of season

L'ライトが完全消灯されたのは、事前に告知されていた1曲目を除いてこのゾーンのみ。
作詞作曲のyukihiroが描いた闇の中へ、hydeの低音と螺旋を描く手の動きによって誘われていくような時間だった。

12-B.Cureless

THE BLACK ROSEと同じく2月の代々木公演3日目で突如初登場した曲。
その場に居合わせた衝撃たるや、脳天に肘鉄を食らった時と同じレベル(去年とあるスタンディングライブで後ろの人の肘が真っ直ぐ頭に落ちてきた)。
どんなレア曲が来てもおかしくないという心構えがあっても、流石にshade of seasonとこれが差し替えは誰も予想できない。

乱雑に積み上げられたブラウン管テレビに映像が映し出されるというスクリーンの演出が、メロディやアレンジの持つ90年代感をよりくっきり浮かび上がらせているように見えた。

Bメロでの掛け合いのコーラスはtetsuyaのみが担当。そのパートになると、右腕をすっと持ち上げtetsuyaの方を指し示すhydeの動きが美麗だった。

13.Blame

UNDERGROUNDツアー期間中、テレビ番組『関ジャム 完全燃SHOW (現:EIGHT JAM)』にてL'Arc〜en〜Ciel特集が放送された。

当番組内のtetsuyaのインタビュー映像で次の発言があった。

「ラルクが過去のバンドに思われるのがイヤ。今も現役バリバリでかっこいいことやってるっていうのを世の中の人に知ってもらいたい。若い人たちも見てほしいし、まだ知らない人にも見てほしいし、今が一番かっこいいと思う」

https://post.tv-asahi.co.jp/post-247040/

またツアー中のMCでも、hydeが「今の俺達が一番かっこいい」と言うことがあった。

この「今のラルクが一番かっこいい」が最も色濃く鮮やかに証明されていたのが、Blameだった。
ボーカル・ギター・ベース・ドラム・鍵盤以外の同期音が少ないからか、今のラルク4人(+キーボードの秦野さん)が持つ技術や表現力がものすごくダイレクトに感じられた。
楽器同士が唸って、我を主張して、せめぎ合って、調和して、渦になる。
リリースから30年が経つ曲だが、古さがないどころか新鮮なグルーヴに満ちていた。

なかでも特に圧倒的バンド感に溢れていたのが、CD音源にはない長いアウトロ部だ。
hydeのアドリブフェイクから始まり、kenのギター、tetsuyaのベースがそれぞれフィーチャーされ、その間ずっと主張し続けるyukihiroのドラム。それは心地よく重なり合ったハーモニーでありながら、同時にターン制バトルの様相も呈していた。
天才的な才能同士で繋がっている4人が、互いの能力を喰らいあって高めあい、誰も手の届かない高みへと登っていく。
そんな光景を思い浮かべてしまうほどの音だった。

また千秋楽公演では、イントロのkenのアコースティックギター(スタンドで固定されている)演奏時、hydeが横に並び、文字通りkenの音に寄り添うようにして歌っていた。
自分は指を鳴らしカウントを取るtetsuyaに視線を奪われていて気付くのが遅くなってしまったので、是非ともあの日のBlameは映像化されてほしい。演奏も涙が出るほどかっこよかったので。

14.叙情詩

L'ライトが橙がかった柔らかな白色で揺られ、『降り注ぐ木漏れ日のように』ステージを包む。
メンバーを映すLEDスクリーンは木製の飾り枠に縁取られていて、この曲のミュージックビデオに登場する屋敷を彷彿とさせた。

前曲の虚しい後悔や自責から一転、諦念をも含んだ穏やかで普遍的な慈愛が、美しくロマンティックな演奏から滲んでいた。
大切な人への親愛を綴った歌詞は、自分がL'Arc~en~Cielを大切に思っている心境とも重なって聞こえた。

The L'ArQuiz

メンバーがステージから退場し、観客参加型のラルクイズコーナーが始まる。
3択クイズに正解した人のみ立ち続ける生き残り方式で、問題ごとに正解者の数名がカメラに映されていた。
このコーナーも都度アップデートが重ねられていた(4択⇒3択に変更、画面端にルシエルちゃんのイラスト追加、最終問題正解者を映すスクリーンにCongratulations!や冠のデコレーションが表示されるなど)。
そのうえクイズは全公演1問も重複なし、内容も「初めてミリオンセラーを記録したアルバムは?」という簡単なものから、
「1999 GRAND CROSS TOURの機材の総重量は?」等どこでそんな情報公開されていたんだというものまで、知識と運を試す仕様で楽しかった。

FC限定の横浜公演のみ、MCとしてルシエルちゃんが登場。問題もメンバーからの出題を含むスペシャル仕様。
きゅるきゅるかわいい声と仕草で振る舞いつつ、機転の利く客いじりや回しをするルシエルちゃん、大変にできるこだった。

幕間VTR②

オープニングVTRで降り続いていた雨が止んだ。暗い夜が明け、雲の切れ間から太陽の光が差し込む。
カラスが種を落とし、4人の魔法使いが魔力を注いだ地も明るく照らされると、魔法陣の隙間から新しい若葉が芽吹いた。
その1本から伝播するようにたくさんの植物が目を覚まし、荒廃していた古城の周りに色とりどりの花が咲き乱れる。
漆黒のカラスは真っ白なハトに生まれ変わり、たくさんのハトたちと一緒に、ロート製薬のCMよろしく空へと飛び立つ。
雨上がりの晴れ渡る青空には、大きな虹のアーチがかかっていた――――。

オープニングからの一連の物語には、LArc~en~Cielの持つ魅力の多面性が詰まっていた。
真っ暗な雨夜と晴天の青空、荒廃した古城と色彩豊かな花畑、黒いカラスと白いハト。
それぞれが正反対のモチーフながら、ラルクの楽曲の世界観はその全てを包括できうる。
なにより雨が降り、太陽が差して、虹がかかるというのが「LArc~en~Ciel」の名をストレートかつドラマチックに描写していて美しかった。

またBGMはGOOD LUCK MY WAYのミュージックビデオでのみ聞けるロングイントロだったが、
これまでの2つのVTRのBGMにも、それぞれアレンジが大きく異なるこのメロディラインが用いられていたのだ。

BGMの切れ間で場内暗転、暗闇に響くギターの音色で第3章の幕が上がる。

15.GOOD LUCK MY WAY

hyde、ken、tetsuyaが異なる三方の花道の先端から登場、明転した会場が歓喜の悲鳴でも明るくなる。

3人は各自お召し替えをしていたが、ツアー途中からkenは昨年発売したグッズ「あの子が着ているタンクトップ」で出てくることが多くあった。

https://www.artistdeli.com/item_Detail.php?@DB_ID@=13228&artist=118
より引用

一目見たら分かる通り、タンクトップの絵柄はken自身の顔がモチーフになっているので、本人がこれを着ているだけで絵面が面白すぎていた。
さらに横浜公演1日目ではhydeもノースリーブのファージャケットの下に、「あの子が着ているタンクトップ」を着用していた。
この日もkenは同じタンクトップを着ていたため、ペアルックに気付いたファンたちの狂喜の歓声はもはや怒号だった。
さらにさらに横浜2日目はkenがタンクトップの上に、今回のツアーグッズのhydeプロデュースジャケットを着て登場。興奮の絶叫が方々から上がった。

tetsuyaは花道を飛び出し、客席のあるフロアに降りて演奏していた。
アリーナを軽やかに練り歩き、複数個所に設置されたお立ち台を巡りながらベースを鳴らす姿は、まるでファンの笑顔をすぐそばで見たがっているように見えた。

視覚的にも華やかな、アンダーグラウンドから一気に青空へと駆け上がる曲だが、
『ほらもう怖くはない 明日何が起こっても乗り越えられそう ここまで躓いても来れたから』のフレーズには、
これまでラルクが歩んできた軌跡の重さと、今こうして明るい希望を歌ってくれている奇跡を感じて、何度も泣かされていた。
ドラムセットの要塞にひとり残るyukihiroが刻むビートが、精密かつ精彩に溢れていたが、この曲では特に一音一音が力強かった
(公演によっては落ちサビで立ち上がってシンバルを打ち鳴らしたり、咆哮したりもしていたらしい。全部見落としていてとても悔しい)。

16.Killing Me

火花柱が上がり(大阪公演から実装)、ステージの上方からも火花が噴き出す(埼玉で追加)。
ステージ中央の吊り下げスクリーンや花道付け根のスクリーンには、剥き出しになったステージの鉄骨が映し出されていたのがかっこいい。

またステージがイントロから動き始め、南から反時計回りに回転し西向きへと変わった。

だがそんな硬派な演出が霞んでしまうほど、メンバー同士のちょっかい出し合いじゃれ付き合いがぎゅぎゅっと濃縮されていたのがこの曲だった。
自分が覚えている限りの光景は都度Twitterに残していたが、絶対に見落としている光景が多々ある。カメラマンさんスイッチャーさんも大変だっただろう。

メンバー同士の絡みは需要があるのはもちろん把握してるだろうから、打算的なファンサービスだったとしても、遊びをもって楽し気に演奏している彼らを見られるのはとっても嬉しくて毎公演めちゃくちゃに楽しかった。
公演を経るごとに睦みあいのバリエーションは増していき、千秋楽はとんでもないことになっていた。

これを映像化しないことは大きな損失だが、関係会社各位はそのあたりどうお考えだろうか(訳:お金ならいくらでも出すので何度でも見返せるように円盤化や配信してくださいお願いしますお願いしますお願いします)。

17-A.自由への招待

人生においてライブで聞いたことのないラルクの曲をまた1つ減らせて嬉しい。Aメロのyukihiroが鳴らす16ビートに大変テンションが上がった。
シングル表題曲なのに周年ライブですらセットリストに入らない不遇の立場にいるのは、サビのファルセットが厳しいからか等と邪推していたが、hydeはファルセットと地声を見事に使いこなして原曲キーのまま歌い上げていた。

17-B.NEXUS 4

LEDスクリーンの映像は香港の繁華街で見るようなネオンサインの看板たち。曲自体の近未来的なイメージにも合っているし、アジア中心のワールドツアー(TOUR 2008 L'7 〜Trans ASIA via PARIS〜)を回った時期にCD発売していたことを思い出したりもした。
大サビの『say three, two, one, go!』に合わせて、1カウントごとにL'ライトの色が変わっていたのが芸が細かかった。

MC②

今回のライブ内で一番長いMCゾーン。
hydeはL'ライトの色を変えさせたり、花道を歩いて楽しそうなおじさんファンを見つけたりのコミュニケーションをとりつつ、MC半ば以降はステージの床にどっかり座り込むどころか涅槃像のように寝転んで、リラックスした姿を見せてくれた。
過去のライブの長尺MCは、1日目ken・2日目tetsuyaのようにメインスピーカーを固定することが多かったが、今回はkenを中心にした3人のクロストークが主だった(yukihiroはいつものようにドラムセットの裏に隠れるように座っている)。
その構成+先述のリアルタイム翻訳テロップ(暴走含む)のおかげで、いつも以上にくだけた雰囲気が醸し出されていた。そしてこれは前からだけど、毎回打ち合わせなしで話題も全部違うのに、会話だけで一定以上の面白さを叩き出しすラルクのMCってなかなかすごい。

埼玉2日目の「デスノート」小噺は端的で面白かった。

FC限定の横浜公演にはラルクイズと同じく、ルシエルちゃんが登場。事前にFC会員から募ったメンバー宛の質問役として、ユーモアとウィットに富んだ回しにより、大変よい塩梅でメンバー同士とはまた別の視点から4人の良さを引き出しながら翻弄してくれた。
↓自分宛ての質問を待ち構えるyukihiro、なんてシャンと伸びた背筋か

ルシエルちゃんはもっふもふでとってもキュート。
ぬいぐるみ発売キボンヌ。

18.Bye Bye

直前のMCが下ネタばかりだったとしても、場を穏やかに綺麗に均してくれた1曲。
3月代々木公演からステージ下の外周スクリーンにメリーゴーランドのアニメーションが追加。曲の最初からではなく、hydeと同期音のパートから楽器隊が加わる『朝日が眩しい』のタイミングで木馬が回り始めるのが、とても綺麗だった。

19.ミライ

UNDERGROUNDの名目の元、セットリストの限界まで1つでも多くのレア曲にスポットライトを当ててほしかったのは、我儘なオタクの本音だ。
けれどコロナ禍以降初めての声出し可能となったライブで、この曲は絶対に必要だったと思える。

真っ暗な世界で 揃った歌声を糧に
進めないと思ってたその先へ あの向こう側へ

ミライ

歌詞はまさしくこれまでと今を歌っているように聞こえて、過去以上に心に沁みた。

そして初めてアウトロのコーラスを声に出してみんなが歌えるようになって、メンバー・スタッフ・ファンの全員がこの曲の完成形を聞くことができた。
声に出すと難しいメロディラインで最後までうまく歌えてた自信はないけれど、老若男女大勢の声が重なって生まれる渦はとても大きくパワーに溢れていた。
力強いのはファンの声だけでなく演奏もだった。
hydeはイントロにてマイクから口を外して、吠えるようにアドリブのフェイクを入れていたことがあったし、ファンのシングアロングを先導するようにコーラスするtetsuyaもギラギラした眼差しで叫ぶように大きく口を開いていた。
hydeはドラムセットの後ろに設置されたお立ち台に登り歌っていたが、真後ろから見られた時のその背中はあまりにも大きかった。

また『いま虹がかかりひとつにつながる』の歌詞に合わせ、虹色のレーザービームがステージ中央から放たれ、大サビの間はL'ライトも虹色にグラデーションして光るのが美しかった。

20.Link

ラルクのライブ終盤の定番曲。イントロで銀テープが発射された。
WOWOW放映用の撮影が入っていた埼玉公演では黒い巨大風船もアリーナに多数登場し、割れると中からカラフルな小さな風船が溢れ出した。
(銀テープや風船は多く掴んだ人たちから自発的に持っていない人たちへとバケツリレーで回されていく、やさしい世界があちこちでうまれていた)


hydeとtetsuyaは再びメインステージから花道に飛び出し、ファンの傍へ。
2人は逆回りに花道を辿っていくため、間奏あたりですれ違うのだが、時ににこやかに、時に少しぎこちなくはにかみながら、肩を組んだり背中合わせになったりしていた。
見目麗しい両者が同じフレームに収まっているだけで眼福だが、ボーカルとリーダーというバンドの顔同士であり、
tetsuyaが才能に惚れ込んだhydeを口説き落としたところからバンドが始まった、言わばL'Arc~en~Cielの礎でもある。
そのふたりが並んで笑顔で美しい音を奏でていると幸せで泣けてしまった。
なかでも千秋楽では大サビをふたりが肩を組んで歌っていた。

たとえ遥か遠く離れ離れになっても繋がりあう思い
いたずらな運命が降りかかろうとも壊れはしない

Link

歌詞の言葉がツーショットの眩しさと相俟って、
この日でツアーは終わって、しばらくラルクとしては休止期間に入るだろうけど、そう遠くない未来でまた会えるはずという希望を見出せた1シーンだった。

MC③

次曲に連なるインストBGMの流れる中でhydeによる最後のMC。
20代の頃に作った曲などを今改めて演奏することで新たな表現ができたなど、UNDERGROUNDのコンセプトに触れながらの感想と感謝が中心だった。
そのなかでも、
(名古屋2日目)「あまりやってこなかった曲を披露して、みんながニコニコしながら聞いてくれる、このバンドにこんな展開が待っているとは思わなかった」
(埼玉2日目)「昔の曲を聴くとこの曲の時はこうだったなって当時のことを思い出す。此処に来ている人たちの血には、そうやってラルクの曲が流れていると思いながら歌った」
(横浜2日目)「夢が叶うことはもちろん素晴らしいけれど、夢を見ること、叶えようとする過程にも意味はあり素晴らしい」
という言葉たち(全てニュアンスを要約)が特に印象的だった。

21.MY HEART DRAWS A DREAM

オープニングからのVTRで紡がれたストーリーを受けて、LArc~en~Cielは闇と光の双方を包括するバンドと再認識したのは先述の通り。
深い闇や暗鬱な感情も美しく描き出すから、何十年も世界観に囚われて止まないコアなファンが多く、
闇を知ってながらも光や希望に憧れ掴もうとするから、年齢も国境も超えたたくさんの人に支持され続けているのだと思う。

逆風であろうとこの胸は 夢を描いてくよ

MY HEART DRAWS A DREAM

視線は日差しを捉えてる どんな褪めた世界でも

同上

そう歌う曲はUNDERGROUNDの終焉にぴったりだった。
4年ぶりに声に出して歌うよう煽られた『夢を描くよ』は、スクリーンに歌詞テロップが表示されていたが、
文字の端に止まったチョウが淡い光の方へ飛び立ち、その光の中にはあらゆる言語で「夢」を単語が溶けているという、きらきらかわいらしいものだった。

またメンバーはイヤモニを外し、センターステージから客席のあらゆる場所に目を向け、歌声をしっかり受け止めてくれていた。
歓声の出せるライブが戻ってくることを、ステージ側のひとたちはファン以上に望んでいたのかもしれない。
そして美しく壮大な演奏で我々の想いに呼応してくれた。

自分にとってとびきりの一瞬だったのが、埼玉2日目。
プレミアムシートから見上げたステージでは、銀色の紙吹雪が天から降り注ぐなか、照明とL'ライトの虹色が眩しく照らされながら、力強くて繊細で美しい極上の音楽をL'Arc〜en〜Cielの4人が奏でていた。
さいたまスーパーアリーナの高い天井の客席まで全部が、ガラスのスノードームの中に閉じ込められたみたいに、美しさが完成してた。
良い意味で、この日だけ特別に演奏がよかったとかそういうことはなかったと思う。
それでも自分の目に焼き付いたのは、ずっと大切にしていたい、人生が辛くなったらそっと取り出して見つめたい宝物のような光景だった。

美しさに感涙したまま終わりを迎えられるライブ、とても幸せだった。

全体を通して

■センターステージまたやってほしい件
センターステージ構成で行われたライブは3度目だったが、過去2回は
ARENA TOUR MMXX:新型コロナ感染拡大のためツアー中断
30th LAnniversary Tour:客席数半減、声出し不可などの制限多数あり
という状態につき、ライブが「完遂」できたのは今回が初めてだった。

hydeがMCでセンターステージは客席を近く感じられてよいと度々発言していた通り、
メンバー・スタッフ側もこの構成には手応えを得ていたのだろう。
また参加者としても、向きによって見えない演出やメンバーがあるというデメリットはありつつも、
エンドステージよりもステージを近くに見られる、天井席であっても距離を感じず、
ダイナミックなライブを楽しめるためとてもありがたい。
それに大きなスクリーンやスモークなど派手な特効装置は複数あれど、「ステージ」の建物そのものは壁がなく柱だけなので、バンドセットは背面まで剥き出しになる。360°どこから見られても構わないという姿勢で挑まれるライブは、常に緊張感があってとてもクールだ。

しかし先に書いた通り、ついにセンターステージでのライブを完遂できたゆえ、今回をもって封印という線も考えられなくはない…………
どうかこれからもまた折につけセンターステージやってほしい!(その際にはスピーカーとかぶるスクリーンの映像がとても見づらかった問題も是非解消してほしい!!)

■もっと攻めた曲選でもよさそうな件
既に何度か書いた通り、確かにレア曲は普段より多いが、特に後半はライブ定番曲も織り込まれたセットリストだった。
折角UNDERGROUNDというコンセプトを事前に打ち出したのだから、もっと攻め込んだ選曲でも十分に成立しえただろう。カップリング曲、とかでなくレア曲という括りだから、シングル表題曲である自由への招待なんかも入れられたわけだし。
もっと言えば、普段のライブから定番曲とレア曲がこれぐらいの割合のセットリストでもなんら問題はないと思う。
所謂ハガレン新規、いつの間にやらラルヲタ歴20年を超えた自分でも、ライブで聞いたことのない曲がまだまだたくさんあるからというのが最大の理由だが、もう一つ理由がある。

これはアイドルグループ「美味しい曖昧」のメンバー切兎うずめさんのツイート。
美味しい曖昧は今自分が応援しているグループの一つなので、埼玉1日目が終わった時にこれがTLに流れてきた時にはびっくりした。この数日後に美味しい曖昧のライブがあったため、特典会でうずめさんとこの話をしにいった。
曰く、うずめさんはラルクのライブに初めて参加し、それほどラルクについて詳しくはないので知らない曲もたくさんあった。kenがギターを弾きながらタバコを吸っているのも初めて見た。
けれどあれは世界のエンターテインメントだった、あんなライブがやってみたいと、明るい声で語ってくれた。
美味しい曖昧は歌もダンスもすごく高度なことをやっている、自信をもってライブパフォーマンスを推せる大好きなグループなので、そのメンバーがラルクのステージをそう見てくれていたことが、私はとても嬉しかった。

閑話休題、つまり(n=1の感想ではあるが)初めてラルクを見るひとに対しても、定番曲が少ないUNDERGROUNDは十分に訴求力があったということだ。今まで馴染みの少なかった曲も、今回の演出や演奏でその魅力を大いに味わうことができた。
hydeはどんなライブにも初めて自分たちを見に来るひとがいるから、代表曲はセットリストに絶対入れるとよく言っている。確かにその方針はとても大事だし、先述の通り今回のセットリストに入ったライブ定番曲も新しい姿を見ることができてワクワクした。
けれどL'Arc〜en〜Ciel、あまりにもいい曲が多すぎる。ライブ1本分の曲数では、まだ日の目を見ていない曲の方が遥かに多い。それらが埃をかぶったままというのはもったいなさすぎる。

UNDERGROUNDのコンセプトでもライブのチケットは争奪戦になること、レア曲を聞けて喜ぶコアなファンがたくさんいるということは、このツアーでバンド側に実感してもらえたと思いたい。
どうかまた今後のライブでも、積極的に様々な持ち曲に光をあて、今だからこそできる表現で披露してもらえたら、こんなに喜ばしいことはない。

余談だが、今回披露された曲を収録アルバムで括ると、かなりの偏りがある。

AWAKEの曲が多いとは感じていたが、まさかHEART、ark、SMILEの収録曲が各0とはおもわなんだ。それにアルバム未収録のカップリング曲も0だった。
もういっそUNDERGROUNDはシリーズ化してもいいのでは。

結びに

最低限覚えておきたいと思ったことだけを書き連ねていたら、いつの間にかぐだぐだとこんな長さになってしまい、千秋楽から1ヶ月が経ってしまった。
けれどそれだけ色鮮やかな記憶に残るライブツアーだった。

レア曲中心というコンセプトもさることながら、公演を重ねてバンドが進化していく態を見られたツアーであったことがとても嬉しかった。
大きすぎるバンドゆえ裏には色々な事情があることは、1ファンにも理解に難くない。けれどL'Arc〜en〜Cielはまだまだミライがある、進化と成長の可能性に満ちたバンド。
単に曲中に絡んだからとかそんなことではなく、互いの才能を認め合い、負けないように切磋琢磨し、高めあっていく、良いパートナーシップがいまの4人の間にはあるのかもしれないと、彼らが奏でる音楽から肌で感じられた。

あとは、少なくとも表に見える形ではメンバー誰1人病気や怪我なく、スケジュール通りに全公演完走できたこともよかった。前回のツアーでは本番中にtetsuyaがステージから転落したり、kenが肉離れをおこして動けくなったりしたこともあったので。
ツアー終盤の公演ではやや体力的にしんどそうに見受けられる局面もあったが、今の彼らの年齢で、1本につき2時間半強もあるライブを計14本駆け抜けたのは凄まじいことだ。
どうか少しでも長く、自分のやりたい音楽が表現できるよう心身ともに元気であってほしい。

というわけで、改めて
L'Arc〜en〜Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND最高のツアーでした!!!!

WOWOWでの放送、そして千秋楽のフィナーレで発表された新曲、とても楽しみです!!!!

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