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あなたの中の迷子に3

圭一と比べてはいけない。
そう思いながら私の体は応えていく。
若い彼は最初は遠慮がちに、やがて抑えきれない力のままに私の中であっけなく果てた。
思わずクスッと笑った私に
「ごめん」 とまた彼は言った。
「許してあげるから手伝ってね。」
私は果ててしまった彼の体を口に含んだ。
やがて若い体は幾分抜けはしても力を取り戻し、私はもう一度彼を迎え入れた。
ゆっくりと私の体は彼を包み、そのまま永遠が続くかのように幾度も刹那を超えていく。
その度に走馬灯のように記憶がよぎる。
それは圭一との時間なのか、それとも太古の昔から体に刻まれてきた命の記憶なのか
やがて全てを呑み込んで深い泉に流れ落ちた。
「こんなに安らかで幸せな気持ちになったのは初めてだよ。」
「私も幸せよ」
久しぶりに誰かの暖かさのそばで眠りについた

翌朝、まだ眠っている彼をベッドに残して朝ごはんを作る。 遅刻しないように会社に送り出さなくては、母親のような自分がおかしかった。
声をかけても布団から出てくる様子はない。
体をゆすって起こそうとした途端、ベッドに倒された。
「もう一度」
「ダメよ、もう朝なんだから」
「大丈夫、まだ5時だよ」
そう言ってパジャマを脱がせて私の体を呼び覚ましていく。 朝日の中に私の体は晒される。
若い体は眩しく、二人の間に流れる年月も残酷なまでに露わになる。
それでもこの一時を愛おしく求め合ってもいいと思った。

シャワーを浴びてテーブルにつくと
「すごく豪華な朝食だね」
スクランブルエッグとトマトとレタス、バタートースト、コーヒーの簡単な朝食を見て言った。
「普段朝は何を食べてるの?」
「ギリギリまで寝てるから朝ごはんは食べない」
ちゃんと食べなきゃダメじゃないと言いそうになって、なんだか変なことになったと苦笑してしまった。


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