見出し画像

印象に残った本2023(Impressive books for me this year)

今年もそれなりの数の本を読み、印象に残ったものも幾冊もあった。
自身の備忘録のために、そして僭越ながらもこの投稿が誰かにとっての本との出逢いに繋がれば嬉しい、とも思ったので筆を執った次第です。
ちなみに以下で挙げる本は私が「今年読んだ本」なので、「今年発売になった本」に限りません。


李琴峰「星月夜」(集英社/2020年7月15日発売)

タイトルは「ほしづきよ」ではなく「ほしつきよる」と読む。
初版は2020年に発売されたけれども、文庫化されたのは今年。
初版は読んだことがなく、この著者の方の作品を読んだことも今まで無かった。
私が本を買うに至るパターンはおおよそ2通りあって、まずひとつが著者のSNSや書評サイトを見て、興味を持ち買うパターン。もうひとつが特別目的も無く書店に足を運び、そこで惹かれて買うパターン。該当作品は後者。
この作品は「言葉」の話だと思った。人として成長していく過程で言葉というコミュニケーションツールを得ていくわけだけれども、そのツールは本当に多様性に満ち満ちていて、時に繋がりになるものでもあり障壁にもなり得るし、武器であり盾でもある。
この作品において、言葉を以て、違う世界を見詰めて、それでいて分かり合おうと藻掻く人達が沢山出てきたことが印象的だった。国籍も性自認や好意の対象、因習や規制、それ等は全て言葉で構築されていて誰もが、互いの言葉を必死に手繰り寄せていた。
最後にその言葉を通じて見えた世界が穏やかで、どこか寂しげで美しくて、とても好きだった。
ジェンダーマイノリティーであったり、人種のことであったりも非常に大きな割合を占めているので苦手な人もいるかもしれないけれども、私はこの本は是非、色々な人に読んで欲しいなと思った。

金原ひとみ「パリの砂漠、東京の蜃気楼」(集英社/2020年4月23日)

若干20歳にして芥川賞を受賞した彼女の著作も私はやっぱり、読んだことが無かった。
彼女のお父様の訳した本は読んだことがあるけれども、彼女自身の本に触れたことは無かった。でも、この「パリの砂漠、東京の蜃気楼」は確かどこかの(いや、集英社なんだろうけれども)ウェブマガジンで連載されていて、たまたま目にして少し読んだ。
その時からとても印象深い作品だった。何故なら、彼女がとても生き辛そうで人間臭かったからだ。豊かな才能と感受性と引き換えに、あたかも安寧を神様に返してしまったような人だ、とさえ思った記憶がある。
なので今年の文庫化を機に、手に取って全編を通して読んでみた。
まるで彼女の血で書かれたみたいな2つの都市。
読み終わったあと、普段の空が全然違う色に見える本だった。

ハン・ガン「すべての、白いものたちの」(河出書房新社/2023年2月7日)

韓国文学、台湾文学、華文ミステリー...アジアの文学が流行っている印象を受けるし、
私も実は台湾文学は去年ぐらいから好んで読んでいる。特に呉明益の作品が好きだ。
でも、実は韓国文学は今まで読んだことが無かった。特段理由があったわけではない。
そんな私はこの数ヶ月の間、結構な頻度で韓国の著者の作品を読んでいる。
韓国文学は、とても面白い。例えは良くないかもしれないけれど、新鮮なプチトマトみたいだ。咀嚼と同時に弾ける色濃い感情。とても良い。
そんな風に韓国文学を読み始めるきっかけになった本が、この作品だったかもしれない。
詩のようにも感じられる、美しい文章と静謐さの中の揺らぎのようなものが、とても印象的だった。何と言うか、とても浸れる。決して長い作品では無いのに、没入感が大きい。
斎藤真理子さんの翻訳も素晴らしいのだと思う。

京極夏彦「鵼の碑」(講談社/2023年9月14日)

皆大好き、読む鈍器。
シリーズ最新刊であり、もう何年ぶり?という最新刊。
前作から結構なブランクがあるにも関わらず、この人は一切の世界観のブレが無く、
とんでもない質量の話を書き切る。その才と気力に脱帽する。
久し振りの京極堂と、久し振りの関口君と、久し振りの木場さん、とにかく久し振りの面子ばかりだけれどもその空気感が損なわれることは一切無かった。凄い。
シンプルにいつまでも手に残る厚みも印象的だけれども、難解なのにあっという間に引き込まれていく物語がやはり印象深い。
ミステリーと言うにはちょっと毛色が変わっているとは思うけれど、娯楽小説としても最高に面白いと思う。
ちなみに一応は四六判でないにも関わらず、とんでもない厚さ・重さで、
私は通常の文庫のように片手で持つことは出来なかった。なので恐らく満員電車だと、物理的に読み辛い本かもしれない。

野々井透「棕櫚を燃やす」(筑摩書房/2023年3月16日)

特に何かが起きる訳でもない。強いて言うなら、「何かが起きた後」だ。
「事後」、そんな言葉をふと思い起こさせた本。穏やかで、淡々としつつも繊細な筆致で綴られるのは密やかな日常だったけれども、私は何故か読後、妙に苦しくなった。
こういう苦しさは、決して悪いものではない。
冬の朝に全速力で走ったあとの肺の痛みみたいな苦しさは、「生」を実感させる。
これは、そんな特別な起伏が無いのに感情を炙られる作品だった。
少しだけ、悲しくなったりもする。
短編なので読み易く、私は表題作ではない2作目の作品も好きだった。

about "Legatus505"

さて、もうひとつ。
印象に残った、という観点からふーちゃん(Fulgur Ovid)の「Legatus505」についても触れたい。
At point of my view that I was impressed in, I want to write about “Legatus505” written by Fu-chan(Fulger Ovid).
今も読んでいる最中だ。英語で。おかげで、遅々として進まないわけだけれども...。
I’ve been reading it in English.my pace is so slowly, because my English is very poor.
恐らくはボキャブラリーがとても洗練されていて豊富なんだと思う。なおさら、遅い。
I think that he has wide range and sophisticated vocabulary. So, that’s all the more.
実を言えば、SFは決して得意ではないジャンルだ。
Actually, I’m not good at SF genre of books.
でも、彼の「静謐な熱量」を有した、と言うか、冴え冴えとした文章が描く物語は暗く退廃的で、それなのに生々しくてとても魅力的だ。
But, his sentences which have “tranquil fever”, is not only sharpness but beautiful, and moreover,dark,decadent and real. This is very fascinating.
彼の文章を通して彼に興味を持ち、気付いたらチャーミングな彼のファンになっていたので、触れておきたかった。
I was interested in him through his work, consequently, I became his fan, so, I wanted to say about “Legatus505” in this topic,too.


来年もまた、素敵な本との巡り会いに期待して。



この記事が参加している募集

#読書感想文

189,685件