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LINEとインスタと寝れない夜

僕「眠くないの?」

ピコン
「今日はなんか眠くない」「なんか話そ」

僕「あー、そういえば最近インスタ始めたんだよね」

ピコン
「え、今更?笑」

当時好きだった子と度々こんな感じで始まる1秒で既読がつくLINEのやりとりをしていた。

いつもは返信がこない時間にLINEの通知がなって、僕からの「眠くないの?」というメッセージに、彼女が「今日は眠くない」という趣旨の返信がくるのが寝れない夜のお決まりパターンだった。

勿論彼女が眠くないだけで、僕は顔にスマホが落ちてくるくらい眠たい夜もあった。

「詩は眠くないの?」と聞かれて、「今日は全然」なんて強がって見せた夜も沢山ある。

そんな見栄を張ってでも、彼女とLINEのやりとりをしている時間を捨てられなかった。

その日もいつものように会話が始まった。

話題は僕が流行に乗り遅れてインスタを始めてことについて。

当時でも既にインスタ映えという言葉が流行り始めていて、今ほどインフルエンサーと名乗る人がいた訳ではないけれど、時代は確実にSNSブームの渦が大きくなり始めている時だった。

僕「今更だよね。なんか始めたら負けな気がしてさ」

彼女「なにそれ」
「誰かフォローしたの?」

僕「アカウント作って最初に芸能人フォローさせられた」

彼女「え、それだけ?」
「フォロワー誰かいないの?」

僕「いや始めたばっかだし、特に誰も」

彼女「アカウント教えて」

僕「これで検索できんの?」

そういって僕は彼女に名前と誕生日が連ねられた単純なアカウント名を送る。

彼女「インスタ開いて」

僕「りょ」

言われた通りインストールしてから一度も開いていなかったインスタを開くと、右上に通知がきていて、タップしてみると彼女からフォローされたことが分かった。

フォロワーの数も0から1になってる。

彼女「見えた?」

僕「うん、見た」

彼女「私がフォロワー第1号だね」

僕「なにそれ笑」

なんて言えばいいか分からなくなってしまうと、僕はいつも「なにそれ笑」と返信をしてしまう。

その後も電話でした方が進むような他愛もない会話を続け、唐突に「眠くなってきた」とどちらともなく言い始めて「おやすみ」と言い合ってその日の会話は終了した。

僕はその後インスタを開いてフォロワー欄に1人だけ表示されている彼女のアカウントを覗いてみた。

アカウント上には20ぐらいの投稿が表示されていて、友達と一緒に笑っている彼女の写真なんかが並べられていた。

「私がフォロワー第1号だね」という言葉が頭を反芻する。

僕は意味もなく彼女の投稿を表示しては戻してを繰り返した。

なんとなく暫く寝れない夜が続くような気がした。



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