先進企業のキャリアラダーから考える、事業に貢献するエンジニアの姿

【モデレーター】佐藤 大典[Joystruct]/渡部 啓吾[メルペイ]/小賀 昌法[LayerX]/大城 信孝(おーしろ)[ゆめみ](以下人名敬「さん」、社名敬称略で統一)

デブサミ夏。
当日外気温が35度を記録する猛暑の中、朝イチの会場は早くも疲労のムードが高かった。
モデレーターの佐藤さんはそれを察して、「せっかくの夏ですから、盛り上がっていきましょう!」と参加者たちに発破をかけた。

そうして始まったパネルディスカッション。
参加者はメルペイの渡部さん、LayerXの古賀さん、ゆめみの大城さん
今回のデブサミ自身も「電磁にあの事業貢献を応援するカンファレンス」と題していることもあり、キャリアラダーと事業貢献の2軸をテーマとしていた。

パネルディスカッションの前提として、キャリアラダーとは何か。ということを先に述べたいと思う。
グーグルで検索すると「従業員がひとつひとつステップを踏みながらキャリアを重ねていくためのキャリア開発制度のこと」とある。
要はその会社に入って頑張っていくとこういうキャリアアップの進み方になりますよ。というもの。
よくある昇進などと分かれているのも「技術職」の面白いところである。
マネジメント職が上司という立場だったとしても職位が上とは限らないのだ。

というわけで、パネルディスカッションではまず、
パネレーターのキャリアラダーがどのようなものなのか。
という話からスタートした。

メルペイ(メルカリグループ全体ではあるものの便宜上以下メルペイで統一)では行動指針(VALUE)と職位事の期待値を基にOKR※1を設定し、それに沿って出来たかを示す行動評価と、実際の成果評価を組み合わせた総合評価を持って評価を行っている。

LayerXではOKRを設定後、適宜1オン1の実施や中間面談を踏まえながら評価を実施していくというシンプルなものだったが、キャリアラダーとは?というものの軸がしっかりしていた。
LayerXでのキャリアラダーの高さとは「どこまで不確実性の高いものを任せられるか」ということだった。
ここでいう不確実性とは「対象の規模×時間の長さ×影響範囲」であらわしており、定量的な視点は難しい。そのため業績評価を保証するものではないことを伝えつつ、星取表をアンチパターンとした「プロダクトのためにどう考えられるか」そのために今何ができ、何ができていないかを上司部下の間で擦り合わせるためのコミュニケーションツールとしての役割が大きいとのことだった。

ゆめみの評価制度はユニークだ。
給与自己決定制度と題し、まずは自分で職位ガイドライン(一般公開されている※2)を基にして給与について月一で申告し、レビューを受けて納得できればコミットとしている。常に転職活動を行うようなイメージだ。
キャリアパスはあくまで対外的にわかりやすくするためのものとのこと。

続いてエンジニアの事業貢献についての評価についての議論となった。
古賀さんは最初に一言「難しい」と口にした。
エンジニアは作り手だが、作って終わり…では作業者である。
LayerXでは要望をDBに貯め、その要望とリリースしたものを紐づけることで作ったものが何のために作られ、その後使われているのかの後追いもできるようにしておくことで、そういった顧客視点を考えられる人を育て、評価できるようにしているとのことだ。

大城さんは事業貢献についてはアピール材料とすることになっていると述べた。
では謙虚なタイプのエンジニアはどうなるのか。という問いには、常に行ったことのFBを得られる制度が整っており、チーム内でフォローや促すようにしているとのことだった。

渡部さんはかつてメルペイでは悪かろう速かろうなタイプの評価が高いことがあった。それが悪いというわけではないが、事業ステージが変わっていくとメンテナンスに時間をかける必要性が生じてくる。すると速くはないが品質を向上させるという意味で事業貢献しており、そういう人を評価したい。ということから現在の職位別のVALUEにのっとった行動についてを評価制度に組み込むことになったそうだ。

最後に、キャリアラダーを活かすためにはというテーマで話が進んだ。
大城さんはガイドラインを公開することで採用のミスマッチを防ぐというような活かし方を提案した。
渡部さんは制度の理解のためにも、上司部下のコミュニケーションを取ることに利用できるとの考えだ。ただ、星取表ではなく事業貢献を目標にしてほしいとの理想もつぶやくように語っていたのが印象的だった。
古賀さんは、得意なところだけでなく、仕事の幅を広げるためにあるのがキャリアラダー。考え方や挑戦を広げて言ってもらえたら。と語っていた。その背景には事業規模に対しての人手不足、いわゆる意思決定できる人間を増やすという喫緊の課題感にも基づいており、そうした人材を外から求めるよりも内に求めるのが大きな特徴と言えそうだ。

講演の後、渡部さんと質問コーナーでお話させていただいた。
星取表に近い評価制度だと慣らされてしまってとがった人材が放出されがち…といった悩みなどを話しつつ、打開策として評価者が横のつながりで被評価者について話すといったものだった。
とがっている人は目立ちがちだから他の部署の人の目にもついているはず…と。
そのままは使えないかもしれないが、評価する側としては「これが最善と言えるのか。」という不安がぬぐい切れずどうしても定量的なものに目を向けてしまう。定性的な評価へ対応するためにも評価者の不安を減らす工夫を取り入れていきたいと思う。

最後に、ここまで得た知見について締めくくろうと思う。
エンジニアに対しての評価は難しい!!!
成果と一口に言っても何が成果なのか。どう測るのか。改めて制度を作る人には頭が下がる思いだ。
その上で評価する側は既存の制度に沿って評価していくだけでいいのか。それならむしろAIに任せた方が忖度なく受け入れてもらえるに違いない。
個人的にはメンバーにはお金をむしり取っていただきたい。上司から上げすぎだと怒られたときに反論できるくらいに活躍してもらいたい。
パネルディスカッションの直前、アンケートが行われた。
「事業貢献できていると実感できている人」「事業貢献できていると評価されている人」
手を挙げた人数はほぼ同数だったそうだ。
逆に言えば、事業貢献を評価されている人がそれを実感できていると仮説を立てられるのではないだろうか。
評価者として、具体的に貢献度合いを実感させられるような評価とFBを与えていく。そのために何が必要で、どうアプローチをすればよいのか。
今回のディスカッションで、それぞれの企業のアプローチを参考にしながら、自身が評価をするときのアプローチを組み立てていこうと思う。これ私が得た知見である。

※1 OKRとは、目標設定や目標管理の手法です。 「Objectives and Key Results」の略称で、「達成目標(Objectives)」と、その目標の達成度を測る「主要な成果(Key Results)」を設定することで、企業やチーム、個人が、全力で同じ重要課題に取り組めるようになる点が特徴です。
参考:https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000226/

※2 ゆめみのオープンハンドブック。評価制度だけでなくユニークな制度が多く公開されている。社外秘扱いじゃないところがすごい。
https://yumemi.notion.site/cfc9c58ef5ce43a5bdb9b9311e565365

登壇者様たちの所属会社一覧

株式会社Joystruct

メルカリエンジニアリング

株式会社LayerX

ゆめみ | DX推進、システム・アプリ開発、内製化支援、プロダクトデザイン支援


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