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就活で企業が重視する「研究に対する姿勢」とは?




「今、研究室で研究を行っていてそれなりに楽しい。ゆくゆくは企業で研究職につきたい」

今日は、そう考えている大学院生に向けたお話です。

まず、大学と企業では、同じ”研究”といってもその性質はまるで違います。
研究職を志望する学生にとって、「企業研究とはどのようなものか」そして「企業が求める研究に対する姿勢とは何か」を理解することは、満足する就職活動のための土台になるはず。

この記事では、企業が研究職に期待する要素や、採用においてどのような点が評価されるかを、具体的な事例を交えて詳しくお話していきたいと思います。
さらに、皆さんが研究室で研究に取り組んでいる今、今日から実践できる具体的な準備方法も紹介しますので、これからの就活に役立てつ内容となれば幸いです。


研究職の実態:イメージと実際のギャップ

研究職を目指す学生にとって、そのの実態とイメージが乖離していることはめずらしくありません。

例えば、「研究職=一日中ラボで実験」と考えがちですが、企業で求められる研究職はそれだけではありません。企業における研究は、単に学問的な探究心を満たすものではなく、会社に利益益を生み出す具体的な成果を出すことが求められます。

以下で、製薬会社を例に見ていきます。

製薬会社における新薬開発の実例

製薬業界における新薬開発は、企業の利益に直結する重要な業務ですが、そのプロセスは複雑です。研究者の役割は、ただ新しい薬の成分を見つけることだけではないのです。

市場ニーズの把握
市場調査を行い、どのような病気や治療法が不足しているか、どの分野で新薬が必要とされているかを分析します。例えば、高齢化に伴うアルツハイマー治療薬の開発が進められる際には、まず患者数やその増加傾向、既存の治療法の効果や欠如点、さらに高齢化に伴う健康意識の変化などを詳細に分析します。そして、そのデータをもとに、どのような薬効が求められているか、どの部分に新たな治療法が必要とされているのかを明確にします。このような調査結果が、企業の研究開発の方向性を決定する重要な要素となります。

有効な化合物を生み出す
市場ニーズを把握した後、次に行われるのは、ターゲットとなる病気に効果的な有効化合物の探索です。
これは、数万から数百万の化合物ライブラリーの中から、ターゲットとなる分子に作用するものを選び出すスクリーニングプロセスを経て行われます。例えば、アルツハイマー病の新薬開発においては、記憶を改善する分子を見つけるために、複数の候補分子を試験し、その中から最も効果が期待できる化合物を選定します。このステップで有望な化合物が見つかると、次に動物実験や臨床試験でその効果が試されることになります。

臨床試験と規制対応
動物実験や臨床試験を経て、新薬の効果や安全性が確認されると、次に規制当局に提出する書類を作成します。この書類には、研究データだけでなく、実際に薬を製品化した際の生産コスト、販売計画、市場での競争力などが含まれます。たとえば、薬がどの程度の価格で提供され、どれだけの患者に使用されるかをシミュレーションし、製品化による利益の最大化を見据えた計画が検討されるのです。

コスト管理と特許管理
新薬開発には、非常に多額の費用がかかります。プロジェクトが進行するにつれ、試験や製造プロセスが複雑化し、コストが増大します。そのため、コスト管理は不可欠で、どの段階でどのように資金を投入するか、費用対効果を常に考慮する必要があります。また、研究職は単に新薬を開発するだけでなく、特許や知的財産の管理も重要です。特許を取得することで、競合企業が同じ技術を模倣するのを防ぎ、企業の利益を守る役割を果たします。特許の範囲や競合の特許に抵触しないかなども慎重に調査し、権利を守りつつ、開発した薬を市場に出すための戦略を立てることが求められます。



企業が求める「即戦力」研究者か?

ここまでで、研究職とはどのようなものか、かなりざっくりとですが説明をしてきました。続いて、企業が研究職を採用するときに博士と修士で企業が求めるものの違いについてもお話します。

博士は特定領域での即戦力としての期待が強く、研究成果が実務に直結することが求められます。
例えば、バイオテクノロジー企業では、採用した後、大学院で学んだ技術や発見をプロジェクトに応用できるかが重視されます。一方、修士の場合は、即戦力というよりも「研究に対する姿勢」や「基礎的な力」が問われることが多いです。
修士卒で研究職への就職を考える場合は、修士1年生から就職活動を始めることが一般的ですが、この時期ではまだ大きな研究成果を示すことが難しい人が大多数です。
そこで、企業はその人の「研究成果」ではなく、「研究に対する取り組み方や姿勢」を評価し、その人が入社したあとに企業に利益をもたらす研究を行えるかを見極めたいと考えています。この後、その具体的な内容を解説していきます。



自分が研究職に向いているか見極める方法

研究職が自分に適しているかどうか、少し不安に思う人もいるかもしれません。転職も当たり前の時代とはいえ、最初に就職する会社はその後のキャリアに大きく影響を与えます。じっくりと自分の気持ちと向き合いましょう。

研究職の適性を見極める解決策としては、まずは現役の研究者に話を聞くことです。

現在では、OB訪問を通じて社員と直接話すことができるツールが充実しています。例えば、「Matcher」「ビズリーチキャンパス」「VISITS OB」といったサービスがあり、気になる企業の研究者に話を聞くことができます。これらのツールを活用し、就活前に自分の適性を確認することが非常に有効です。企業側も優秀な学生を採用したいと考えているので、学生からの連絡に対して丁寧に対応してくれるケースが多く、実際に話を聞くことで自分に向いているかが見えてくるでしょう。
また、研究職に就職した研究室の先輩などであれば、気軽に話が聞けるかもしれません。ぜひ有効活用しましょう。就職活動には情報収集が欠かせません。



企業が面接で重視するポイント:研究姿勢の重要性

それではここから、私が採用に携わってきた経験を基に、研究職における評価基準で特に重要視されていると感じた4つのポイントを紹介します。
これらを理解したうえで自分の言葉で話せるようになれば、自分の強みをしっかりとアピールでき、企業に好印象を与えることができるはずです。

1. 研究室での役割:リーダーシップとコミュニケーション能力

企業研究では、1つのテーマを複数人で担当することがほとんどです。また、企業には様々な領域の専門知識をもった人が集まるため、異分野の人にも自分の研究を理解してもらうための説明力も求められます。
そのため、採用においては、研究室内で自発的に行動できるか、リーダーシップを発揮しているかが重要視されます。
自ら問題を発見し、解決策を見つけて実行できることが評価されます。リーダーシップをアピールすることは、企業にとって魅力的です。

2. 研究に対する姿勢:問題解決能力と論理的思考

企業での研究は、学問的な成果を出すことだけが目的ではなく、実務に応用できる解決策を見つけることが重視されます。問題解決能力や論理的思考が求められ、これを面接でアピールすることを意識しましょう。
「実験が失敗した際に、その原因をどのように捉え、分析したのか。そして、どのようにして(例:異なる視点でのアプローチを試みた、など)成果を得られたのか」といったエピソードを話せるように整理しておきましょう。
企業側は、あなたのが論理的に考えられる人物か、題解決の能力を持っているかを見極めようとしています。

3. 研究への熱意と俯瞰的視点

研究職では、単に自分の研究が優れているだけでなく、それが社会にどう役立つかを俯瞰的に考える視点が求められます。
市場ニーズや社会的な意義を理解しながら自分の研究に取り組んでいる学生は、それだけで企業研究者からは魅力的に映ります。そして、研究に対する熱意もしっかりとアピールしましょう。多くの企業で研究職の採用をする場合には研究内容を発表する技術面接が用いられますが、そこでは研究部門のトップ層が面接官となることも珍しくありません。面接官は、学生の話しぶりから、研究に対する熱意を感じ取ります。

「自分はこの分野で誰にも負けない」「私の研究、面白いんです!!」という自信をもって臨みましょう。そのための準備ももちろん大切です。

4. 他分野から学ぶ力:柔軟な対応力

研究職では、専門分野に縛られず、他の領域から学ぶ姿勢も高く評価されます。なぜなら、今多くの企業で求められている「イノベーション」は、一つの分野の延長線上にあるものではなく、一見異なる分野の掛け合わせによって生み出されるものだからです。

実際、私が働いていた企業で評価の高い研究者の多くは、他分野の知識を積極的に取り入れていました。例えば、「うまくいかないときに他の研究室や社外の専門家に相談して新たな視点を得た」といった経験は、企業で高く評価されます。


優秀な研究者たちの持っている能力

私が勤めていた企業では、評価の高い研究者たちには共通の特徴がありました。それは、「常に新しいことを学び続ける姿勢」です。彼・彼女たちは、他分野の知識や専門家からの意見を積極的に取り入れようとしていますた。
このように、他分野の組み合わせから新しいものが生まれる事例は多くあります。例えば、ある化学メーカーでは、新しい素材開発が行き詰まった際に、他の研究部門との協力によって製品化に成功した例があります。
VUCAといわれる現在、分野を超えた協力と柔軟な対応力が、企業の生存に欠かせないと経営層は強く実感しています。そのため、そのような素質を持った学生を喉から手が出るほど欲しています。


研究職志望者に向けた結論と今からできる準備

研究職志望の学生にとって、就職活動に向けた準備は早めに始めることが肝要です。まずは、研究職の実態を把握し、自分が本当にその職に適しているかを見極めましょう。そして、企業が求める「研究に対する姿勢」を理解し、面接では自分の問題解決能力や熱意をアピールすることが成功への道です。
さらに、今いる環境の中で異なる分野から学び続け、柔軟な対応力を養うことが、将来的なキャリア形成に大いに役立つでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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