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歯医者にてLOSER

 つい先日、歯医者にいった。歯医者に通うのはかなりひさびさで新鮮に溢れている。
不安こそない、幼い頃から病院は嫌いであったがそれは痛いとか怖いからではない。「虚無」しかないからだ。虚無というとかなり語弊があるが上辺だけの看護婦のマスク越しの笑顔、医者の即物的な取り扱い。逆に熱心にやられても、それはそれである意味イタいのだ。

 今回は二回目、銀歯の被せものがふと取れてしまった。そして、歯が少しかけた。歯医者に行こうとしたのはその2週間後であった。
取れたときはなんだがその銀歯の残骸が爪や髪のように汚く思えて、生ゴミと一緒に捨てた。本当は捨ててはならないとあとから知った。

 歯医者に入る。コロナの影響か?一人づつの診察、治療で下駄箱もガランとしていた。なぜかわからないが歯医者の予定が入ると雪が降っている。受付で静かに「予約していた〇〇です…」というと、即体温を測られた。
受付の事務の女性は少し小柄で腕を懸命に伸ばして、レジのピッてやつみたいな非接触の体温計を僕の額にあてようとした。

腕が震えていた。なので、少しのけぞった。

そして問診票のようなもの
Q1 最近、県外にいったことがある yes/no
といった類の質問が多数あった。何も読まなくても単調に自動的にすべてnoをつけられる。

「こちらへ…」
 女性の歯科医師で身長160センチほど。足の開きからバレエかなにかをやっていた。髪型は完全に後ろでまとめキッチリと結んでいる。マスクをしてるが蒼井優に似ている。目が笑っている。しかし、マスクの下はどうだろうか?黒目の多いその人に連れて行かれた。後ろを歩くと靴下のかかとが少し濡れている。おそらく雪かきをしたのだろう。
 治療に入った。もうひとり歯科助手の女性がやってきた。薄目で確認すると髪は少し染めて、少々ふくよかな女性だ。雰囲気から察するにまだこの歯科医院にきてまだ間もない。前に、ここの歯科医について調べたが歯科助手を求人していた。

僕は口をあけて無防備に二人の女性に口をいじられる。口の中の感覚を鋭敏化させるとどちらの女性の指が口に入ったのかわかるほどであった。
歯科医「トレイを胸に乗せさせてもらいますねー」
   「助手さん、これ、おねがいします。」
   「はい、ありがとうございます。」
 僕が察するにこの歯科医はせっかちだ。上辺ではものすごく丁寧な言葉。その丁寧な言葉を放つたびに彼女の指は少し強く、僕の口角を抑える。口の触覚と耳だけでこの二人が徐々に険悪になっていく雰囲気が取れる。さらに口の感覚を研ぎ澄ました。指越しの脈を感じられるようになった。
これは、良い。落ち着く。脈をカウントできるほどに接触時間はない。接触時に時間が止まればいいと思ったが、時が止まったら脈も止まる。
そんなことを考えていた。しかし髪切るときににも思うのだけどあの無防備な状態で相手に凶器をもたせた状態で動かないでいるという感覚。とても複雑な優越感ではある。たまにああいうサービスは受けたいし、口で指の脈を取るというのも悪くはないと僕は思った。

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