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「料理」に関するおすすめ本をご紹介

この記事では、私自身の「料理」に対する見方や考え方を変えてくれた、おすすめの本をご紹介します。具体的には玉村豊男さんの「料理の四面体」「男子厨房学入門」と、ウー・ウェンさんの「大好きな炒めもの」を取り上げていますので、よかったら読んでみてください。

はじめに

最初に、玉村豊男さんの本を知ったきっかけを紹介したいと思います。それは、畑正憲さんの著書「ムツゴロウの娘よ」を読んだのがきっかけでした。こちらの本です。

ムツゴロウの娘よ

畑正憲さんは、最近あまりテレビでお見かけしませんが、ご自身が出演する「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」というTV番組が大人気でした。また作家としても、数多くの本を執筆されています。

当時(20代半ば頃)は、古本屋で買った畑正憲さんの本をよく読んでいました。ちなみに「ムツゴロウの娘よ」は、娘の明日美さんに向けていろいろなことを語りかけるという体裁の本です。

この本の料理に関する話のなかで、「料理の四面体」という本が面白い、これは名著だと思う、などと紹介されていました。文章にとても熱が感じられたので興味が湧き、本を読み終わってすぐに書店へ買いに行ったことを覚えています。

これがきっかけで玉村さんの本をいろいろと読むようになり、また料理もはじめるようになったのでした。

玉村豊男さんについて

「料理の四面体」の著者である玉村豊男さんは、1945年生まれで東京大学のご出身。在学中に、フランスの大学へ留学もされています。そして世界をあちこち放浪されたのちに、エッセイストとして文筆活動に入られたようです。

現在は長野県東御市で、田園のリゾートを目指したという「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」を運営されています。公式サイトはこちらです。

こちらには、綺麗なガーデンを見ながら食事ができるカフェをはじめ、ワイナリーやショップなどが併設されています。

エッセイストの玉村さんが、なぜワイン作りを始めたりカフェを運営することになったのかは、いろいろな本のなかで書かれていたのを読みました。病など様々な経験を経たのちに、いわゆる「田舎暮らし」にたどり着いたそうですが、ワイン作りまで始めてしまう行動力は、ただただすごいなあと思います。

著書は「田園の快楽」「回転スシ世界一周」「絵を描く日常」(水彩画も描かれています)など、いろいろな本を執筆されています。

おすすめ① 料理の四面体

それでは、「料理の四面体」を紹介したいと思います。私が持っている本は、こちらです。今は装丁が違うかもしれません。

料理の四面体

まず本の「はじめに」にあたる文章を、少し引用してみます。

世界の国々を旅行して、いろいろなものを食べてみると、所変われば品変わるとはよくいったもので、まったく違った姿の料理が次々に出てくるが、いろいろ食べているうちにあまり驚かなくなってくる。
風土によって、得られる材料や調味料は異なるとはいえ、料理の方法じたいにはそう変わりはないのではないか。

こういった経験から「料理の一般的原理」を見つけて、誰でもが自由にレパートリーをひろげられる方法を提示してみようと考えたそうです。

四面体について

タイトルにも出てくる「四面体」ですが、これは4つの三角形を合わせた立体のことです。本では終わりの方で、四面体のモデルを使って「料理の一般的原理」を説明されています。

個人的にはこのモデルを頭に入れておいて読む方が、より分かりやすいように思いました。そのため図を使って内容を簡単に紹介しますが、「ネタバレ」と感じる方は飛ばして頂けたらと思います。

それでは本を参考に、Photoshopで作成した四面体のモデルがこちらです。

料理の四面体の図

「火」を頂点として、下の三角形の3つの角に「空気」「水」「油」を当てはめたものが「料理の四面体」のモデルです。

料理とは基本的に、素材に対して何らかの形で火を加えたものです。火の加え方には大きく3種類があり、「空気」「水」「油」の3つを介在したものになります。「火」とそれぞれを結ぶ稜線が、それらを表しています。

わかりやすくいえば「空気」を介在したものは「焼きもの」、「水」を介在したものは「煮もの」、「油」を介在したものは「炒めもの、揚げもの」です。

また「火」の頂点から下がるにつれて火の影響は弱くなり、底面に達すると3つの要素が介在した「ナマもの」の世界がひろがる、というのが「料理の四面体」の読み取り方だそうです。

世界各地で使われる食材や調味料は違っていても、料理の一般的原理は同じ、つまり料理方法(火の加え方)は「空気」「水」「油」を介在した3つのどれかである、ということです。

プラスしてサラダや刺身などの「ナマもの」の料理がある、というふうに理解しています。

本文を少しご紹介

上記の説明だけを読むと、かたい内容の本と思われるかもしれませんが、本文はとても楽しく読めると思います。

例えば第4章の「刺身という名のサラダ」の見出しは、「1 タイの洗い無意識風」「2 タイの干物置き忘れ風」・・・などと、ユニークな見出しがつけられています。

「1 タイの洗い無意識風」の内容は、こんな感じです。

料理というのは、いったいどこらへんからはじまるものなのだろう。一人の少年が海を泳いでいる。目の前を、一匹のタイが通りすぎてゆく。そのタイを彼は手でつかまえる、と仮にしておこう。そして彼はそのタイにガブリとかぶりついた。少年は空腹だったのである。・・・ところがあまり美味しくなかったのか、いったんタイの身を口から出して、海水で洗って食べてみた。すると海水の味が滲みて美味しかった。それ以降、少年は噛み切ったタイの身を、海水で洗って食べることにした・・・と仮定したら、このとき彼はすでに料理を発見していたのではなかろうか。・・・

「2 タイの干物置き忘れ風」の内容は、こんな感じです。

先ほどの少年がまたタイを捕まえたが、お腹が空いていなかったので、それを浜辺の岩の上に置いておいた。その後遊んだりしていたので、そのことをすっかり忘れていた。そして何日かしてその浜に戻ってきて、岩の上に置き忘れたタイに再会した。タイはすっかり干上がっていたが、とくにヘンな匂いもしないので、好奇心からその身を食べてみた。するとナマの身とは違うが、これもまたひとつの食べ物であった。・・・
もしそれが人の口に入らなければ、乾いた一匹の魚にすぎない。しかしそれを少年が食べたとき、乾いたタイの死骸は“タイの干物”になった。彼が同じ状態を再現してみようと意図的にタイを岩の上に置き去ったとしたら、そのとき彼は1億5000万キロメートル離れた天火で、魚を料理することを発見したことになる。

四面体のモデルでいえば、「1 タイの洗い無意識風」は底辺の「ナマもの」の料理。「2 タイの干物置き忘れ風」は、「火」と「空気」の稜線上でより「空気」の方に近い、太陽を「火」とした「焼きもの」の料理、ということになるようです。

こういった感じで、フランス料理でも和食でも変わらない、料理の一般的原理について述べられています。

おすすめ② 男子厨房学入門

次に紹介するのは、こちらも玉村豊男さんが書いた「男子厨房学入門」という本です。

男子厨房学入門

本の「はじめに」に当たる部分には、次のように書かれています。

この本は、いままで台所に立ったことさえない人々、自分で料理をつくろうとしたことなどまったくない人々のために書かれた、超初心者用の料理入門書です。・・・

一応、男性向けに書かれていますが、男女問わず面白く読める本です。また前述の「料理の四面体」を読んでからこの本を読むと、理解が深まると思います。

こちらの本には、はじめに揃える物や包丁での切り方、簡単なレシピなどが載っており、料理初心者でも具体的に料理のことをイメージできるのが特徴です。

例えば、はじめに揃える道具について、フライパンのほかに「中華鍋」をおすすめされています。中華鍋はとても合理的で、これひとつで「炒める」「煮る」「揚げる」「蒸す」などができるからだそうです。

これを読んで感化され、横浜の中華街に鍋を買いに行ったことを思い出します。その時に買ったものが、こちらです。

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「照宝」というお店で買った、鉄製の片手持ちタイプの中華鍋です。確か3000円代で買えたと思います。

料理が楽しくなったのは確かです。ただ鉄製のため、少し重いのが難点かもしれません。今はチタン製など、軽いものもあるようです。

また本では、いろいろな「スパイス」と「調味料」を揃えよう、とも書いてありました。「~の素」などは簡単に料理が作れていいが、単一の用途にしか使えないのでスペースがもったいないし、せっかく始めた料理の腕も上達しないとのことでした。

実際“素”などがなくても、麻婆豆腐やカレーは簡単にできるし、ましてやタレやドレッシングやその他のソース類は、基本的な調味料が揃っていれば、たいていのものが台所で簡単にできてしまうものばかり・・・

それなら最初に少し出費はかかるが、様々なスパイスと調味料を用意しておけば、料理のレパートリーは圧倒的に増えると説明されています。

中華風、インド風、西洋風など様々なスパイスがありますが、私は揃えやすい中華風のスパイスから買ってみました。特に「五香粉」というパウダーは、一瞬で中華風の香りをつけられるのでおすすめです。

また本には、同じ食材を使って和洋中のメニューを考える「料理パズル」の例題なども載っています。

おすすめ③ 大好きな炒めもの

当時せっかく中華鍋を買ったので、中華料理の良いレシピ本はないだろうかと探していました。

そんな折、何かの本で「ウー・ウェン」さんのある料理本がおすすめされていて、特にそのなかの「麻婆豆腐」を是非作ってみて欲しいと、熱を入れて書かれていたのを読みました。

それが「大好きな炒めもの」という本です。

大好きな炒めもの

本によると、ウー・ウェンさんは北京市生まれで1990年に来日し、北京に伝わる家庭料理を、本やTV番組などで紹介する活動をされています。公式サイトがありましたので、載せておきます。

この本では「炒めもの」を中心にしたレシピが紹介されていますが、特に中国の家庭料理の雰囲気が伝わってくる点でおすすめしたい本です。切り方や炒め方、下ごしらえなど、「家庭の火力」で美味しく食べるためにこんな工夫をしているのかという発見もあり、とても参考になります。

また使われている調味料や食材は、基本的にとてもシンプルで手に入りやすいので、レシピを試しやすい点でもおすすめです。

ちなみに本でおすすめされていた「麻婆豆腐」のページはこちらです。

麻婆豆腐

ウー・ウェンさんの一言コメントによると、

・・・麻婆豆腐の発祥の店、「陳麻婆豆腐店」のレシピに近いもので、味の決め手は花椒(ホアジャオ)と豆豉(ドウチ)です。このレシピにかぎっては、ぜひこのふたつの調味料を準備してから作ってほしいと思います。

私は辛いのが苦手なため、一味唐辛子の量を少なくして作っていました。これをご飯に載せて食べるととても美味しく、本のなかでは一番多く作ったレシピです。

レシピは他にも「えびチリ」や「青椒肉絲」といったメジャーなものから、「レタス炒め」「トマト卵炒め」など、日本ではあまり知らないようなものも載っています。

本は他にも「ウー・ウェンの北京小麦粉料理」など、いろいろと出版されています。またウー・ウェンさん考案による、「ウー・ウェンパン」という中華鍋もあるようです。

「料理」に関するおすすめ本のご紹介でした

少し長文の紹介となってしまいましたが、いかがだったでしょうか。

特に玉村豊男さんの2冊の本は、料理に対して苦手意識があったりハードルを感じている方にはおすすめです。私自身、料理はできないものと思いこんでいましたが、この本を読んで見方が変わりました。

当時は首都圏で働いて長く一人暮らしをしていましたが、本を読んで料理ができるようになり、自分で食べたいものを作れたことは、毎日の生活をとても豊かにしてくれたと思っています。

またできた料理を食べるのはあっという間ですが、作るのには時間や労力がかかるものだと分かったことも収穫のひとつでした。

もし興味が持てる本がありましたら、是非読んでみてください。それでは読んで頂き、ありがとうございました!

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