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映画「カラオケ行こ!」、計5回見に行く人間の感想


映画館に二日連続で行ったのは初めてでした。同じ映画を、上映期間中に複数回見ることすら初めてでした。
初めて見た日、映画館を出た足でそのまま同じ施設の本屋に駆け込み原作と続編を買いました。おそらくそういう客のためにあの本屋さんは店頭に映画「カラオケ行こ!」の宣伝ポスターを置いてコミックスを並べてくれていたんだろうと思います。ありがとうございました。

私がまず言いたいことは、こんな文章を目にする前に急いで映画館に向かって映画を見て 聴いてくださいというただそれだけです。





感想の羅列です。
ネタバレしかありません。見ないでください。
基本的に映画本編・原作以外からの情報はまだ仕入れていません。許してください。




・視聴後の感想第一声「爆萌」 申し訳ない。
・個々の登場人物に対して、ならびにそこに生じる関係性や感情に対して、全身が愛おしさに溺れてしまって凄かった。愛だ、あまりにも間違いなく。人と人の間に生じる愛が好きだ。愛というのは、ただ愛であり、そこに他の意味は存在させないとする。また原作や続編などを考えると違う意味合いがあるのかもしれないが、少なくともこの映画を見た私にとってその右腕はどうしようもなくデカい愛なのであった。そこに真実があるのかないのかは大きな話ではなく、ただ、見た人間にとってそう感じたというそれこそがひとつの事実であり、綾野剛演じる成田狂児という男のひどく狡いところなのであった。

・音楽をテーマにした作品なので、映画という形で音楽ならびに音響を楽しめるのが本当に嬉しいと思った。合唱部の合唱も、カラオケのシーンも、BGMの雰囲気も、全ての音が大きく作用していて、それが良かった。
 タイトル……なんて言えばいいのだろう、あの、タイトル画面、からカラオケのシーンにうつっていく所。ブンブンズンズンと低い音にぱっぱらっぱっぱと明るい音が重なっていく、狂児との出会いの怪しさや怖さ、それでいて映画のコメディ感にふっと気が抜けてしまうような雰囲気があってすごく好き。
 要所要所でこのBGMが使われるわけだけど、低い音が基盤になっている感じが狂児(と関係を持つこと)のヤクザとしての拭えない恐怖の印象や闇深さ、それをどこか誤魔化されてしまうような親しげでおどけた振る舞いを感じて、良いな。
・これはSNSで見かけてかなり震えたものだけれど、作中の合唱曲にて歌われているフレーズが「天国なんかに住んだりしない」なの、かなりくるものがある。そういう部分の膨らみというか、可食部もあるのがこの作品を映画にする上での大きな価値だと感じた。直接的に作中で意味を持つ部分では無いけれど、一切の妥協・隙の無さが見える。ずっと丁寧だ。

・映画から原作を見た身としては、この順番で味わえてかなり良かったと思った。原作と比較すると映画はかなり情緒的というか、ストーリーというものがより際立って演出されている様に感じて、それを何一つ情報なく初見でまっさらに噛み締められたのがとても嬉しかった。
 個人的には、聡実くんの変声期を迎えることに対する感情や姿勢がより複雑なものになっていたのがすごく良かった。他の部活の時間や合唱部員とのやりとりは映画オリジナルのものだったが、その部分でより岡聡実くんという「中学三年生の男の子」という存在のシルエットが濃くなったように思える。
 聡実くんに限った話ではないが、映画で描かれている彼らはより感情的で、人間的だった。漫画で描かれているキャラクターを ストーリーを、人間が演じ映像として改めて紡ぐことの大きな意味を感じる作品だと思った。

・聡実くん、狂児とカラオケ行く中でカルピスとかなんかちょっとぶどうっぽい感じのやつとか色々飲んでんのに、狂児が聡実くんのために飲みもん頼むときいつもオレンジジュースなの、ガキ扱いの感じがあって好きだ(最初の入店時はおそらく狂児が頼んでいるためそれもそう)(途中で普通に聡実くんの意思でオレンジジュース飲んでそうな時もある)

・聡実くんの部屋にとかげか恐竜かみたいなクッションあるの、かわいすぎる〜

・聡実くん、季節かわってパーカーを着るようになって合唱祭に向かう時にいざ学ランになるの、普段使いで学ランとパーカーならパーカーを選ぶところに見た目の印象よりも真面目きっちりくんではない部分が見える気がして良さを感じるし、もちろん合唱祭という大会の場には学ラン着ていくだろうという常識も踏まえた上で 合唱部及び己の変声期に対する姿勢の変化の表れにも思えるしで、良いな……になる

・聡実くん、関西弁の中学三年生男子で両親の呼び方「お母さん」「お父さん」なの好きだ……

・序盤、聡実くんが音叉の説明をしている時の狂児は目線をきょろきょろと表情豊かに動かしていて 聡実くんの説明をちゃんと理解しようとしてる様子が伺える(その様子が少しわざとらしさすらあるのが綾野剛演じる成田狂児の大人の狡さが出てる気がして好きだ……)のに比べて、同じように聡実くんが説明をずらずらと並べる曲紹介の時の狂児はもうじいっ……と聡実くんを見つめているの、その行為に対する嬉しさというのもそうだし、狂児から聡実くんへの興味が前よりも深まっているようなそれもあって、似たようなシーンの比較として面白いね……になる
・あとここの曲紹介のシーン、勿論大好きなんですけど、紙を渡してからの 聡実くんが説明を始める→聡実くんから距離をつめる(狂児が見つめる)→撫でる→聡実くんが離れる→狂児から距離をつめる の、この動きの感じが、めちゃ良いね〜……になる
 原作を読み返すと元から聡実くんから距離をつめる(対面から隣へ)シーンだけど、映画版だともっと説明の途中で勢いでぐっと行く感じがあり、歌番組のついでにと言いながらも色々考えたんだろうしそれを説明するのは楽しいだろうな……というのが伺えて好きだ

・映画を見る部の描写がかなり好きだったな。まず映画研究会でも映画部でもなく「映画を見る部」なのにどこか原作イズムのようなものを感じて好きだなと思う。
 聡実くんが変声期という壁にぶつかって、自分の限界やそこに代役がいることに対して様々な感情を抱いた時、ちゃんと逃げられる居場所があるということに安心感がある。狂児との話を共有出来るのも安心感があるし、それでいてここだけの秘密にもしているような雰囲気が好きだ。映画を見る部の子(名前が分からないよ)があまり興味無さそうで踏み込んでこない感じも良い。
 ミナミ銀座へ行くエピソードに自然に繋がる理由にもなっていいなと思う。原作と比べてより等身大の中学三年生として描かれる聡実くんだと思うと、ここまで「行かなくてはいけない」という理由がある方が納得がいく気がする。それに加えて、後のお守りのシーンで「事前にLINEしてしまう聡実くん」「元気をやると言われたから会いに来てしまった狂児」という描写が生まれるのが、嬉しいですね。

・全体的に 動きの勢いが目に見えて伝わりやすくなる分、ヤクザの方々の怖さの説得力が増すの、ウオ〜ッ!になる。たんぽぽ言うなも然り、なんやと小僧も然り、男が頭下げんなも然り、キョンキョンの鞄も然り……。
 キョンキョンの鞄のシーンを見るために劇場に通う価値すらある。

・ハイエナの兄貴がたんぽぽに行くくだり大好き。原作の「ヤマハの教室に入っていく姿なんて見たなかった」をしっかりがっつり描写してくれたの、めちゃくちゃ嬉しいな……。「週4も通ってるらしいねん」「合唱部より練習してる……」面白すぎる。

・ヤクザの方々大集合カラオケのシーン、大好き。ずっと好き。ビール出されるのも好き。遅れて入ってきたハイエナの兄貴の怒声にビビった聡実くんが狂児の腕掴むのも好き。聡実くんのやや苦笑いしながらの「狂児さん、 帰りたい。」の言い方も好き。キティの兄貴が本当にずっと優しい顔で見てくれるのも好き。
 初見の時まだ原作未読で 和山先生の他作品(女の園の星を全巻読んでいます)だけ知ってる状態だったのだけど、「声が汚いです」「うるさいです」「カスです」のシーン(ならびにその前の評価から)で脳内に紙面でのコマ割りがはっきりと思い浮かんだのが衝撃だった。その後原作を読んでそのシーンを実際に見た時、「だよなあ!」という気持ちになった。原作の面白さを本当に大事にしてて好きだなと思った。

・聡実くんブチギレのシーンは、個人的に原作の方が好きだ。というよりも原作が好きすぎる。「組長に全身うんこの刺青彫られたらええねん」←好きすぎる。
 映画と違って変声期にぶつかりながらも合唱部で練習を続ける聡実くんだからこそ、その中で良かれと思ってした行動が怖い体験に繋がって今まで抱えてきた複雑さがより強くなる瞬間だからこそ、あの激昂の説得力が出るんだな……。しかし 映画での 合唱から一度逃げることによって聡実くんの葛藤や苦しみを描くのもかなり好きで……。
 つまり私は原作/映画問わずこの「カラオケ行こ!」という作品において、聡実くんの抱える苦しみというものにひどく惹かれているのだろう。

・組長の「歌え」 ←怖すぎ(最高)

・聡実くんの紅の入り、原作での思い出が薄い前奏も好きだし、映画での叫びからはいるのもそれぞれ好きだ…。どっちにしろ、合唱祭の「曲目は…」から繋がるのが大好きだ。
 うってかわって思い出が沢山入ってくるのも好きだし、キョンキョン鞄ぶん殴りシーンの回想が聡実くん視点のそこだけのためのカットなのも好きだ……。
・それまでの中ではっきりと聡実くんの歌声を聴けるシーンが無い(合唱シーンも高音が綺麗に紡がれているので明確にひとりの声を感じることがない)からこそ、この紅でその感動が爆発するのが凄い。合唱の歌い方を感じる入りにこれまで聡実くんが積み重ねてきた歌というものを感じるし、それがどんどん苦しくなってもう高音の出せない男の子の それでも必死に感情でかき鳴らす歌声になっていくのが本当に……本当に凄い。

・聡実くんの紅の途中で狂児の描写が入るの、初見時「生きとるやんけ!!!!!」の衝撃があってめちゃくちゃ良かった。隣に座っている友人を一度確認してしまった。オイ狂児生きとるやんけ!!!!!!
 ここで入れてくるのが最高だと思う。聡実くんの紅が狂児の耳に届いている描写があるのが本当に……本当に嬉しい。
 お先に狂児生きとるやんけを済ませているからこそ、聡実くんの狂児生きとるやんけのシーンの面白さや良さを既に知っている者として堪能出来る部分があるように思える。組長のちょけ方も好き。

・「聡実くんを置いて死なれへん」 綾野剛と書いて罪



・綾野剛演じる成田狂児が本当に好きで、本当に本当に 本当に好きで、だから何度も劇場に足を運んでしまう部分があるのだけど、本当に、何か言おうとするとそれ以外の部分の方が言葉になる。言語化が追いつかない。

今後どれだけテレビで放送されても、円盤が出ても、綾野剛演じる成田狂児のあの狡い大人の低音が映画館にそっと響くのは今だけなんです。
今だけなんです。


今だけなんです。




多分もっと見てもっとちゃんと考えて言語化してもっと もっと良い感想文を出すべきなんですけど、本当に、今だけなので、とにかく世に残すことを優先として、今回の感想文はここで終わりにしようと思います。

映画「カラオケ行こ!」本当にありがとうございます。今後もまだ見に行きます。(3回視聴済/あと最低2回視聴予定あり)
いつかの未来で齋藤潤さん演じる岡聡実くんがバカクソ高い時計を煮込むところを劇場で見たいです。よろしくお願いします。


続きもある