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「認知症⁈ 全然大丈夫、全部O.K.、 ケセラセラ♪」3

認知症の人と家族の会
福岡県支部会報「たんぽぽ」2021年12月号 寄稿エッセイ
 


第2章 七転八倒の暗黒時代(2)

考えてみれば、十数年来の介護生活の中、要介護5の今よりも、アルツハイマー型認知症との診断が下り、要介護認定を受けた認知症初期の方が精神的に大変でした。

因みに、一番大変だった時期は、頭はまだしっかり弁も立つ。
しかし濡れた尿取りパットをほじくったり、パットをトイレに詰まらせたり、「長らくお世話になりました」と書置きを残し、行方不明になるなど、問題行動が大きくなっていった、認知症中期。

精神的にも身体的にも辛く、まさに修行の日々(笑)でした。

今は私の名前も娘であることもすっかり忘れられ、身体介護の負担は大きくなってはいますが、大変というより平穏な日常に感謝しています。


話を戻しましょう。

あんなに威厳を振りかざし、躾にも非常に厳しかったのに、その裏腹な行動をする。当たり前に出来ていたことが、だんだん出来なくなっていく。

反発はしていたものの、いざという時は頼れる唯一無二の親が壊れていく。

病気の進行は抑えても治すことが出来ないという絶望感や、今後どうなっていくかわからない、どうしていいかわからない不安…。


母は夫を立ててきたと言えば聞こえはいいですが、結局夫にずっと依存した人生で、いざ一人になった時自分で積極的に生きることから逃避した結果が認知症を引き起こした…

そんな風に考えていた私は、母を責め、不安や怒りや苛立ちなど感情のはけ口を母に向けていました。

このような言動がいかに悪いか、高齢者福祉に携わっている者として十分に理解していたがため、かえってそれが出来ない自分自身にも苛立ち憤り自己嫌悪に陥り、けど目の前の母は許せない…そんな七転八倒の介護生活が数年間続きました。(つづく)

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