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VESPERA新譜【vespera2】発売記念、石川琢弥氏へのインタビュー

先日、久しぶりに新譜でパンクのCDを購入した
​​2年前の私の誕生日に来山されライブも見た事があり、私のパンクの師匠である石川琢弥氏さんがジャケットアートワーク等デザインを担当している【VESPERA】というバンドのものである
​​VESPERAさんはソリッドで硬質な腰の座った女性ボーカルのバンド、という印象を私は持っている
​​石川さんからCDを購入したのだが、アーティストから直接作品を手渡しで受け取り内容や思いなどを教えて頂いた後にプレイヤーにセットし耳を傾ける作業は、いまだに脳が働き出し身体がほてってゾクゾクしてくる
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​​VESPERAさんのことやジャケットのアートワークのことを聞いてみて、改めて石川さんに制作秘話などインタビューし、記録してみたいと思った
​​すぐに石川さんに打診してみたところ、快諾を得て事を進めた
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​​石川さんは、故郷を離れ山形という地で絵画を制作しておられる
​​(目が覚めたら、画家のYouTubeをみて勉強している、もっと絵が上手くなりたい)と話す氏は、産みの苦しみも受け止めながら絵画の制作に没頭され、魂を燃やしている
​​資本を生み出す事が目的ではなく、己の大好きな事を突き詰めて、魂を込めた美しい作品を生み出している方に興味を持てない自分でありたく無いと思うし、石川さん事を皆さんに知って頂きたいとも思う
​​料理や話が上手であるが、機械に弱にはめっぽう弱く、お酒や〇〇に(やばい事では無いです)溺れたりされているところも、人間力として人を惹きつける事なのだと思う
​​以下、インタビュー内容になります
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​​心してどうぞ
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​​Q.1)どういった経緯でジャケットデザインをやることになったのか教えてください
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​​a) 個人的に女性ボーカルのハードコアパンクに思い入れが大きくて。2012年くらい?から、90年代のメロディック・アナーコパンク的なアプローチのバンドが東京にいる、というのは聞いてて、それがVESPERAでした。
​​実際ライブを生で観た感じだと、90年代ユーロ・アナーコパンク的な感じはあまりなかったです。
​​日本独自のクラストコアの夜明け的バンドとも言える、MACROFARGEのハジさんがベーシストとして在籍してることや、DSBのドラムのエイジさんがドラムなのかぁ、という、前バンドの血脈などをすごく感じました。
​​そこからどういう経緯か、VESPERAのドラムのエイジさんは、ヴィーガンレストランの「VESPERA」という店を運営しているのを知り、実際お店に行ってみたんです。
​​最初、「どーせ、パンクスが飲んだくれてるテキトーな店なんだろう」とナメた気持ちで(すんません、苦笑)行ってみたら、ヴィーガンの人もそうでない人も同じ食卓を囲むという事のアイデアを実践するお店であり、もちろん味も値段もボリュームも大満足で、「食」という切り口のパンクにも感銘を受けて、VESPERAという店もバンドももっと深く知りたいと思ったのでした。
​​そこからの交友がVESPERAのアートワーク面で協力させてもらうキッカケであったのではないかと思います。
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​​Q.2)ジャケット制作の依頼を受けて、まずはじめに思ったことはどんなことだったでしょうか?
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​​a) パンク/ハードコアの世界はDIYで、それこそ自身の手で作られることがヨシとされています。しかし、「自分で作ればナンデモOK」みたいなすごく独りよがりで自己満足に思われる物にはしたくありませんでした。 例え完成度が高くなくくても、しっかりとした見応えのある作品として提案すること。それでしょうか。当たり前のことだけど。
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​​Q.3) CDジャケットというパッケージを描く側になった時に、最も意識することはなんでしょうか?
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​​a) うーん、最も意識?というか、レコードでもCDでも、絵のサイズからすると大きくはない正方形なんです。「音源」というそこそこ限られた制約のなかで静粛に暴れること、とでも言いましょうか。
​​小さい絵でも小さいなりの難しさや、原画と商品でも多かれ少なかれ乖離します。
​​そのイメージの乖離は許せる範囲での乖離であることですかね。
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​​Q.4) 音楽CDというメディアが持つ良さ、特色は何だとお考えですか?
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​​a) 今やなんでもデータ化されて、音楽そのものもデータ化されて、まぁもちろん便利であると同時に「物として手に入れている」ことや「ディスクが回って音が鳴っているのが見える」というのが、目に見えなくなってるのが、音楽媒体がなんだか希薄になった要因の一つなんじゃないかな、と思います。一部の若い音楽ファンがカセットやレコードに新鮮味を感じているのも、「音楽を物として手に入れたい」という単純な動機なんじゃないかな、て思ったりします。 レコードもカセットもCDも、再生されると回転するじゃないですか。それが目で見える。音が鳴っている様子が目で見えるって重要だと思うんですよ。 スマホの音楽データを再生しても回転しているサマは、ないですもんねぇ。
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​​Q.5) 楽曲を聞かれた時の第一印象は?
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​​a) まぁ、VESPERAは初期の頃からメロディックな彩りは冴え渡っていた印象でしたから、今回もそのメロディの冴えはみなぎっているだろうと思ってました。が。 愛知岡崎のPROLETARIARTで、ゲストボーカルでMAYUMI嬢がマイクを取った時に見せた攻撃力は今までのVESPERAになかったんではないかな、と思いました。(昨年リリースされたPROLETARIARTのアルバムも併せて聴いて欲しいところです。)今作でMAYUMI嬢の歌唱でのキレ方はより一層感情的にキレてると思いました。
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​​Q..6) VESPERAさんにどんな印象を持っておられますか?
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​​a) オッサンたち。笑 でも自分も多分そういう立ち位置になってるし、フヌケなオッサンオバサンになるよりも、気持ちが精鋭化されてる中年になったらかっこええかなと思ってます。
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​​Q.7) ジャケットに込められたメッセージや思いなどはとういったものでしょうか?
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​​a) VESPERAは全曲のタイトルがVで始まるアルファベットであるので、Vというサインに意味合いを考えました。 ザリガニのハサミは、当然Vサイン以外できない。 しかも、ザリガニの腕はちぎれても新たに生えてくるそうです。
​​自身を象徴するものを失っても、それを自己解決できる能力は、ひょっとしたら今の時代に求められる能力なのかな、と思いました。 VESPERAはVサインを諦めないんです。
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​​Q.8) 今の時代、様々な表現手段があり、メディアも多様で情報も簡単に手に入りますが、そんな中で絵画が持つ力というのを、どのようにお考えでしょうか?
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​​a) それは今現在ぼく自身も考えていますね。 時代がどういうモノを求めているのか。そして、応えることのできる美術が作れるのか。 単純に絵が上手くなりたい、という子供のような欲求もありますが、先に述べたとおり、独りよがりにならないように、との気持ちも大きいですね。
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​​Q.9) 幼少期に影響を受けた作品はありますか?
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​​a) 高荷義之氏のパッケージ絵全般、石原豪人の妖怪の絵、佐伯祐三の「立てる自画像」、鴨居玲の「静止した刻」。  日本の絵がすきだったんだな、と思います。
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​​Q.10) 色へのこだわりはありますか?
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​​a) そんなないです。笑
​​色よりもフォルムや質感にウェイトを置いているというか。
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​​Q.11) 油絵に対してどういった魅力を感じておられますか?
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​​a) 油絵の魅力と言えば、単純に600年くらいの深い歴史のある画材ということでしょう。
​​その歴史のなかで様々な技法であったり、新たな顔料であったり新たな溶き油や樹脂などが誕生し、未だに西洋絵画の数々あるなかでも画材の代表格として君臨してることですかね。
​​アクリル絵の具なども現在ではポピュラーな素材で市民権を得た画材ですが、アクリル樹脂を水可溶性の技術が開発されてここ100年ほどの歴史しかなく、画材として確立されたのも60年ほどなので、まだまだ未知な画材でもあります。 油絵の具に比べて、可塑性(絵具の盛り上がり)と透過性(絵具の透明性)がアクリル絵の具では大きく劣る点や、乾燥時間が早すぎて油絵の具ほど広い表現の幅に対応できていない点では、やはり未だに油絵の具は究極の画材と言ってもいいんではないでしょうか。
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​​Q.12) 油絵を通して、何を表現していきたいと思っておられますか?
​​a) 非常に難しい質問だと思います。モチーフに迷うことの多い美術家は多いのですが、モチーフという言葉はそもそもラテン語の「動き」や「行動」「行動原理」などの意味合いを持ちます。 つまり絵を描くという事の行動原理として、自身がどんなことに重要性を感じているか、ということを視線を合わせなければいけません。 ぼくの今絵を描く単純な行動原理として、絵具という物体を操り、絵という物体を作りたいという純粋行動に他なりません。
​​美術家たちは自分が観たい絵を描きます。 ぼくは自分が今後どんな美術作品を作りたいかが観たいのであります。
​​そこの興味と、単純に整合性と純度の高い画面を作ることだけ、そこにまず興味があり絵を描くのでしょう。
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​​Q.13) デザインやアイデアのインスピレーションはどこからくるのでしょうか?
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​​a) 改めて言うまでもなく、美術家はいかに思考し制作したかが重要だと思います。ぼくが絵を描いていないときに考えることが作品の裏付けや純度につながっていくのですが、そういう時って常に「怒り」が付き纏っています。その怒りとは自身を取り巻く環境や人間への怒り、そして自身への怒りです。 「キレたい」というプリミティブな人間の感情は、この世の中で簡単に吐き出すことは結構難しくもあり、メシを食うことも忘れてハラワタが煮え繰り返った状態が続くこともあります。そんなときに自身と周りへの怒りはPUNK/HARDCOREが代弁してくれたり、怒りを爆発させてくれたりします。 単に音楽のジャンルと捉える人もいますが、ぼくはこの音楽に何度となく命を助けられています。(大袈裟ではなく) 
​​ぼくは美術家、でありながらPUNKSを耐えず目指していると言えるのかもしれません。
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​​Q.14) 最後に今後の活動や、やってみたいと思っていることを教えてください
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​​a) いい作品を作る。それだけ。絵で喧嘩売られたら、絵で喧嘩を買う。 そして負けない。
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​​押忍
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