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デジタル人材育成の広島県の取り組み

前回はデジタル人材育成の論点整理のためのフレームワークを提示しました。今回から具体的な事例として、デジタル人材育成学会で着目している「地域」「地方」のデジタル人材育成事例を紹介していきたいと思います。特に産官学連携が進んでいる広島県の取り組みを紹介していきたいと思います。

DXを県として推し進める広島県


広島県は2010年に「イノベーション立県」として中長期的な計画を策定し、デジタルトランスフォメーションが今日の潮流になる以前より、県として人材育成を含めイノベーション創出に向けた様々な施策を講じてきました。今日の広島県におけるデジタル人材育成の推進策のベースになっていると考えられます。イノベーションの創出拠点として設置した「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」やAIやIoT等の最新のデジタルテクノロジーを活用した実証実験の場である「ひろしまサンドボックス」も整備されており、広島県として県全体のデジタル変革の産官学金連携の牽引を果たす役割を担っています。

また2019年には県直轄の「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進本部」を設置し、「仕事・暮らしのデジタル化」「地域社会のデジタル化」「行政のデジタル化」という3本柱で県内のデジタル化に向けた様々な施策を講じています。

民間企業との連携事例も生まれており、県内外の様々な企業が広島県でのデジタル人材育成の取り組みを実施しており、例えば外資系ソフトウェア企業であるServiceNowJapan合同会社が、広島大学に学生向けにDX人材育成のための教育プログラムを提供したり、広島の基幹産業である自動車や造船、製鉄などものづくりのDXを進めるためのIoTを活用したデジタルトランスフォメーションの推進をする事例も出てきています。

一方で教育機関に目を移すと、2022年6月に広島大学の情報科学部では、少子化が進む今日において定員を2倍の150名にし、人工知能、データの処理・解析などデジタルに強い人材を育成することを表明したり、広島県教育委員会としても「未来の教室 LIFE TECH ACADEMY ™ in 広島県」というプロジェクトのもとでEdTech×STEAMのプロジェクト型学習による高校生のための学習の高度化を目指す取り組みを2020年から実施しているなど教育機関でのデジタル人材の育成も盛んです。

広島県の産業、行政、学術機関が連携をしてデジタル人材育成の取組、またその先にあるデジタルトランスフォメーションに向けた取り組みを行っていることがこの地域の特徴であると考えています。本節では行政がリーダーシップを取りDX支援を県全体で実施している中で、地域産業、コミュニティや行政、アカデミックと連携しながら仕事・暮らしのデジタル化の推進をしている事例を通して、デジタル人材育成の事例を紹介します。

広島県ってどんなところ?

広島と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか。お好み焼き、牡蠣などの食べ物、カープやサンフレッチェなどプロスポーツ球団。原爆ドームなどの「戦争と平和」を考える都市。広島自身が一つの経済・文化圏を構成しており、歴史も含めて様々な特徴を持っています。

筆者自身、2012年より7年間、広島のある製造業様のITコンサルティング、システム開発・保守のプロジェクト支援を行い、日常的に生活もしていたことから広島のデジタルトランスフォメ−ションの取り組みを滞在中は垣間見ながら、高い関心を持っていました。

平和の都市としての広島は言わずもがなであるが、第2次世界大戦の終戦間近に長崎とともに原子爆弾が投下され、筆舌に尽くしがたい甚大な被害を被った地域です。終戦から75年以上経った今でも原爆ドームはじめそのときの遺構が残され、核兵器廃絶に向けた様々な取り組みが推進されています。「平和の象徴」、「希望の象徴」被爆地ヒロシマとして核兵器廃絶と世界恒久平和を希求し続けている都市です。

観光都市としての広島も魅力的です。広島市をはじめ尾道や呉にも様々な観光拠点があり、瀬戸内海と接する尾道での瀬戸内しまなみ街道の絶景やお好み焼き・海鮮などのグルメなど美食の都市でもあります。またスポーツ振興も盛んであり、野球・広島カープやカタールサッカー・ワールド杯で日本代表の指揮をとった森保一監督が現役でプレーし、監督も務めたサンフレッチェ広島などプロスポーツ集団があることも観光に寄与しているでしょう。

また広島経済圏も非常に発展しており、県内の産業は,ものづくりを基軸として、造船・鉄鋼・自動車などの重工業から、電気機械・電子部品産業まで、調和のとれた産業クラスターを形成している。自動車のマツダや造船業の常石造船、中国銀行やひろぎんホールディングスなど製造業を中心として、金融や社会インフラ企業も多数拠点を置いていることも一つの特徴となります。

2023年5月にはG7広島サミットがあり、今後日本だけでなく世界からもますます注目される地域となるかと思います。デジタル人材育成において産官学連携で積極的に活動している広島県の取り組みを紹介することは、日本各地域のデジタル人材育成を考える上で非常に価値があると考え、本稿の執筆に至っています。

文責:デジタル人材育成学会副会長 中村

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