見出し画像

シュレディンガーの恋人

秋空に無理して取り繕ってかっこいい風吹かせている。薄っぺらいかっこよさだって自覚はあるから君と中央線の駅で手を振って別れたあと、ひとり帰りのホーム、膝から崩れ落ちてる。いつメッキが剥がれるかもしれない恐怖心から今日もとりあえず解放された。君が友達に彼氏って言ってるのはこんなやつだ。LINE開いたスマホ握ってる右手だけ幸せな時間の余韻につっこんで、ほっぺたが秋風に吹かれて冷える。

純度の高い自分をさらけ出すのはまずいよなって苦笑いしながらカシスオレンジ混ぜるクセがある。耳元をちょっとだけ金に染めたショートボブの彼女は高校で軽音部のベーシストだったらしい。きっと俺の無邪気な地金なんか見えたら冷めちゃうんだと思う。まっすぐですきって言ってくれる前髪は実は毎朝ヘアアイロンで伸ばしてんだ。高校のアルバムをかたくなに見せないのも、そこに君の思うような彼氏はいないから。

スタバの新作飲んでそうな君の笑顔を背伸びしてみてる。次は下北沢いかない?なんて知った風にきく。そんなお店の固有名詞で返してこられても俺はもうカードを切れない。途切れない会話の波間に冷や汗を拭いてる。

いつもありがとう。でもってごめんな。君の思うような器じゃない。いつも切り札切って繋いでる。こないだのデパ地下のアイス屋さんがスペードのキング。ほんとはインスタで見るようなおしゃランチより、特急も止まらない最寄り駅のナポリタンが好きで。ほんとは恵比寿の創作和食に添えられたワインより、高架下の居酒屋で地元の友達と安いカシオレ飲むのが好き。

現役で受かる気でいたら浪人したから、完璧な彼氏なんてできないかな。きっとリアクションの期待値は50:50で、半年後の君はシュレディンガーの恋人。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?