小型の補助人工心臓とは?ニュースの落とし穴
補助人工心臓に関するニュース
補助人工心臓に関するニュースを報道してくださるのは、とても嬉しいことです。
こういう医療機器が必要な人間もいるんだなっていうことを多くの人に知ってもらうことで、レアな病気のわたしたちが生きている存在を認めてもらえるような気がするからです。
これは個人的な考え方なので、みなさんが同じ思いかどうかはわかりませんが。
小型の補助人工心臓 国内初の装着手術
患者の負担減で注目
という見出しです。
タイトルに字数制限があるから、こういう言葉選びになってしまったという事情もわかりますが、
わたしがニュースで見たとき、「ん?」と違和感を持ちました。
小型の補助人工心臓
映像を見る限り、わたしたちが装着している植込み型補助人工心臓(VAD)ではなくて、
カテーテルで一時的に挿入するタイプのこと(Impella補助循環用ポンプカテーテル)だよね?
心臓のポンプの代わりをしてくれる点に関しては同じで、「人工心臓」ではあるけど、そもそも用途・目的・装着期間が違う。合併症やリスクの種類や確率も全然違う。
VADは年単位でつけるもの、毎月の通院は必要だが家に帰れる、自分で歩ける、一応カバンに収まる機械のサイズ(3kg~5kgやけど笑)、自己管理できる操作感。
インペラは数週間〜数ヶ月単位でつけるもの、ICUから出られない、基本ベッド上安静、常に機械を扱える医療従事者のモニタリングが必要。
VADに比べたらめちゃくちゃ短時間でカテーテルで留置できる分、
動脈から直接心臓にアプローチしているから、
出血したら…。刺入部からの感染がおきると…。
国内初?
以前から、インペラは使われていたよね?
救急車で運ばれてきて、一刻を争うショック状態、重篤な心筋梗塞や心筋症・心筋炎の人たちが何人も今まで救われてきたはず。
ただ、今回は、去年承認がおりた新型の拍出量最大5.5リットルのポンプを使ってみました。
っていう話よね?
このタイトルだと、インペラ自体が国内初みたいな取り方をする人が大半じゃないか?
患者の負担減で注目
いや、だから、前からあるから〜!
「負担減」というなら、PCPSやIABP、ECMO、体外式VADとかと比較すべきじゃない?
※循環を補助する機械
↑ちゃっかり自分のサイトのリンクを貼るという…笑
負担やリスクの比較をするなら、そっちのほうが近いと思います。
何度も言うが、VADとは目指す先が違います。
人工心臓先進国アメリカでは事情も違うそうですが、ここでは割愛。ここは日本。
IABP、四六時中動けないし、バルーンをパフパフさせる機械音めっちゃうるさいからね!(経験者は語る。意識下でつけてたんですよTT)
要するに
このニュースで使用されたImpella(インペラ)は、今までのインペラよりも拍出量が増えて、数週間のあいだ、弱りきった心臓を休めてあげて回復を待つために十分な出力をもっている。
カテーテルで挿入できるので、数分も惜しいくらい一刻を争う状態の時に、命を救う救世主みたいな存在(なのは前から。)
心臓の低拍出状態が慢性的で、持続的に補助しないと、今後生きていくことは難しいという場合は、これからも補助人工心臓(VAD)は必要。
補助人工心臓の手術に胸の切開(開胸)はこれからも必要だし、8時間以上かかる大掛かりな手術は不可避。患者の負担は変わらない。
体外式から植え込み式VADが主流になったのは確かに患者の負担が軽減されたよ。しかし今回のニュースでは体外式の話はしていない。
でも、
VAD(植込み型)は状態が安定して、自己管理できれば家に帰れる。
これはホンマにありがたいメリット。
病院の中と、外の世界。
QOLは雲泥の差です(経験者は語る)
ニュースの感想
心臓移植や新たな補助循環装置の取り組みを報道で取り上げてくれる事は、
わたしたち患者にとって、
新しい未来がひとつずつ開けていっているという明るい実感や励みになるので、これからもどんどんしていって欲しいと思っています。
しかし、誤解を生むような内容にまとめてしまうと、
わたしたち患者に無駄な期待と落胆を与えてしまう。
ということも忘れないでいただきたい。
体裁やインパクトよりも、
事実を伝えてください。
もちろん、事実を見極める視点も視聴者側にも必要なのですけどね。
NHK側の主張は聞いていないので、関係者の方、ご意見があればコメントでお伝えいただければ幸いです。
ほんでな、ついでに言わせてもらうけど、
肩の血管ってどこやねん?肩からどうやって動脈にアプローチするの?
動脈は少なくともからだの内側(ないそく)やろ。
…ちゃんと澤先生の話聞いてた?
ABIOMED(Impella作ってる会社)からの情報もファクトチェックした?
???が多く残った、ある意味印象的なニュースでした。
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