研究レポート ”欧州選手権1988 オランダvsソ連" 1988.6.12 【90分動画あり】

欧州選手権1988 グループリーグ第一節 オランダvsソ連のカード。

●オランダ (0-1) ソ連○

得点者:52分 ラッツ (USSR)

┃スタメン┃

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オランダ代表のメンバーは、PSVとアヤックスの連合チーム。監督はオランダのトータルフットボールの創始者ミケルスで、1974W杯以来のナショナルチーム主要大会2度目の指揮となる。スポットの当たる選手としては、ACミランのオランダトリオとなるファンバステン、フリット、ライカールト。ライカールトはこの欧州選手権を挟んでのACミラン加入(ちょうどセリエAの外国籍選手が2から3へ変わるシーズンであったという)。当時のACミランのサッキ革命の中心選手の3人となる。

一方のソ連は中心選手のほとんどがディナモキエフ所属。監督はロバノフスキーでディナモキエフと兼任の指揮で、自身が良く知る選手たちが代表にも揃っていたことになる。

両チームはそれぞれ決勝に進むことになり、決勝での再戦はオランダに軍配が上がり、初の欧州選手権優勝を達成した。

【フルマッチの動画】

ACミランの監督サッキが参考にしていたというのが、ロバノフスキー率いるソ連だったというが、ソ連はマンツーマンディフェンスベース。サッキがACミランに落とし込んだのは、イタリアサッカー界では異質のゾーンディフェンス、ゾーンプレッシングであるから、やや趣は異なる。しかし、マークをリリースしながら豊富な運動量でボールに向かう部分は参考にし、オリジナル性に創りあげたのであろう。

ロバノフスキー率いるソ連では、マンツーマンでマッチアップさせて、最後尾に3番のヒジャトゥーリンを配する。ACミランのようなライン意識のユニットは基本的にはない。

マークにずっとつきっぱなしというわけではなく、たとえば、オランダ10番フリットについている15ミハイリチェンコはマーク関係OFFにし攻撃的に前線に出て行く。

最後尾にいるオランダのR・クーマン、ソ連のヒジャトゥーリンがいわば遠隔的に対峙する形となり、特にクーマンはどんどん前に出て攻撃参加してくる。その場合は、ヒジャトゥーリオンが寄せて消しに行くか、他のマーカーがマークリリースして消しに行く。

マンツーマンで相手に合わせる形のセットアップのため、並びの意味合いはそれほどないが、選手の特性を最後尾から1-3-2-1の山状にマッチアップで配し、GKと3枚のFWを配す。

オフェンス時のボール運びの主軸となるのは、オランダが10フリット、ソ連は9ザバロフであろうか。

最後尾のフルバックこそいない形であれ、2010年ぐらいのオランダの4-2-1-3(4-2-3-1)と、選手の特性と並べ方としては通ずるものも多い。

マンツーマンディフェンスといっても、マークが主目的とはいえず、優先事項はピンチとなりうるシュートやドリブル突破等を防ぐこと、もしくはインターセプトやクリアであるから、現代的なハイブリッドなディフェンス方式にも引き継がれている部分も多いはずである。

┃その他┃

ボンバー系毛量が多いのがオランダ10番フリット。左利きがオランダの8番A・ミューレン、ソ連の3番ヒジャトゥーリン、15番ミハイリチェンコ、6番ラッツ。

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