ANNA SUIちゃん

ペシミストのようになってしまった僕にも、間違いなく幸せだったと思えた時期がある。

もう17年前の大学生時代。一目惚れした綺麗で長い黒髪の、ワンピースの似合いそうな同級生のあの子。

彼女はANNA SUIが好きだったみたいだから、ANNA SUIちゃんとしておこうか。

ANNA SUIちゃんにに想いを寄せていたあの時だけは間違いなく幸せだった。

今では好き=下衆な感情の僕が、あの頃は本当にピュアだったと思う。

ANNA SUIちゃんが視界に入るだけで、一言話せるだけで、その日一日中ハッピーで、

会えない土日や祝日は僕にとって耐え難い日だった。

自分のことにいっぱいいっぱいで、傷つくことを恐れて

想いも告げられず疎遠になって。アドレスも変えられてしまって。

それでも彼女を忘れられず、

せっかくの大学生活を棒に振ってしまったとも言える。

別に初恋では無かった。けれど一目惚れから始まり、好きで好きで胸が苦しい日々だったあの時の恋心。

ほとんど初恋に近かったんじゃないかな。

ANNA SUIちゃんのことを今でも夢に見ることがある。

女々しくて情けないのだけど、彼女が夢に出た朝は懐かしくて切ない、だけど温かい幸せな感覚が僕を包んでくれるのだ。

彼女は今も僕の中で生き続けている。

けれど悲しいことに、彼女の顔が少しずつぼやけて、思い出せなくなっているのだ。

声の方がまだ記憶に残っている。

当時のことを思い出し、後悔という名の切なさに胸が少し痛くなるけど

幸せだった記憶の余韻に浸かると少し救われるのだ。

タイムスリップしたとしても、生まれ変わったとしても、彼女に必ず会いにいく。

なんて、そんな叶うはずない妄想が、願いが、僕を今日も生かしてくれる。生かされている。

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