ペイン・ハスラーズ アメリカを震撼させたオピオイド危機とは?
あらすじ
労働者階級でシングルマザーのライザ・ドレイク(エミリー・ブラント)は、職を失い生活に困窮していた。
そんな時、ザナ製薬の製薬販売員のピート・ブレナー(クリス・エヴァンス)との偶然の出会いをきっかけに、販売営業職を得ることができ、家計も上向きに転じていく。
しかし同時に、ザナ製薬のセミナーに医師を賄賂など使って招待し、末期ガンの鎮痛剤ロナフェンを副作用が少なく依存性がない安全薬だと処方箋を書いて患者に使用させる危険で不正な金儲けの陰謀に巻き込まれ、倫理的に疑わしい道へと足を踏み入れていってしまう。
次第に正気を失っていく上司でザナ製薬のCEOジャック・ニール博士(アンディ・ガルシア)や、娘フィービー(クロエ・コールマン)の持病の悪化に苦悩するライザは、会社が世間に及ぼしている悪影響を実感していくうちに、自身の選択が正しかったのか、考え直すようになるが……。
2018年にニューヨークタイムズで取り上げられた、バデュー・ファーム社がオキシコンチンを依存性や常習性が低い安全な末期ガンの鎮痛剤と積極的に広報・販売したことで麻薬依存症になる入り口にオキシコンチンがなり、オキシコンチン依存になった人々がより安いヘロインやフェンタニルに中毒になる依存症者が増えた「オピオイド危機」から着想を得て、「ハリー・ポッター」「ファンタスティック・ビースト」シリーズのデビッド・イェーツ監督がエミリー・ブラントを主演に迎え、娘を養うために苦心していたシングルマザーの女性が、経営難の製薬スタートアップ企業に就職し、不正な金儲けの陰謀に巻き込まれていく姿を描いたクライムドラマ映画。
感想など
様々なビジネスを起業したが失敗して、トラブルメイカーの娘フィービーを抱えて貧困に苦しんでいたライザが、ザナ製薬の製薬販売員ピートに人の本質を見抜く才を見抜かれ、ザナ製薬の末期ガンの鎮痛剤ロナフェンの売り上げを上げる為、賄賂などで医師を買収してザナ製薬のセミナーでロナフェンを依存性や常習性が低い安全な鎮痛剤であると広報しロナフェンを処方する処方箋を作成させる不正で危険なビジネスに加担していく実話ベースのクライム・サクセスストーリーを、どのように医師を買収しロナフェンの処方箋を作成させたかを実話に基づいてライザの目線から描きつつ、アメリカを蝕むドラッグ依存や健康保険制度の不備や利益のために不正に手を染める製薬会社のモラルの無さを問う骨太な社会派サスペンスに仕上がっている。
不正に加担して成功への道を登る貪欲さや自らが加担したために過剰摂取で死亡者が出たことで罪悪感に悩み自首して真っ当な道を歩み直そうとする良心や母に対する愛憎も含めたライザの複雑の内面を演じ、プロデュースまで手掛けたエミリー・ブラントの名優ぶり。
欲望という名の電車に乗り、ライザをザナ製薬の不正に加担させた張本人ピートを演じ、キャプテン・アメリカのクリーンなイメージを裏切る人間味溢れる名演技だけでなくエミネム張りのキレッキレのラップを披露したクリス・エヴァンスの芸達者ぶり、ふたりの演技バトルと社会派サクセスストーリーの組み合わせが絶妙な社会派サスペンス映画。
「痛みは、痛みだ」
Netflixで、独占配信中。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?