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伊藤詩織さんが、杉田水脈に逆転勝訴

ジャーナリストの伊藤詩織さんを誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したことが伊藤さんの名誉感情を侵害したとして、自民党の杉田水脈衆院議員に慰謝料など220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10月20日、東京高裁であり、石井浩裁判長は、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、杉田議員に55万円の賠償を命じた。 
 ツイッターの「いいね」で不法行為を認めた判決は初めてとみられる。 
 ただ、代理人の佃克彦弁護士は「この判決が『いいね』が不法行為になったという先例として世の中に広まっていくのは本意ではない。特定の事例における判断で、人の悪口に『いいね』を押せば損害賠償と言っている判決ではない」と強調した。 
 名誉感情侵害は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められるかどうかが判断基準となる。 
 石井裁判長は、「いいね」を押す行為が名誉感情を侵害するかどうかの判断材料について、行為者の主観や行為者と被害者との関係、「いいね」が押されるまでの経過も検討する必要があるとした。 
 佃弁護士は「『いいね』の意味を解釈するには、これまでの経緯や主観といった事情を見なければ判断できないということをきちんと示してくれた。文脈から判断することは、重要、かつ、当然のことだ」と評価した。 
 一方で、あくまで今回は杉田議員と伊藤さんとの関係やこれまでの経緯に照らして「いいね」が違法と判断されたものであり、「特定の事例における特定の判断だと認識してもらいたい」と話した。 
 高裁判決によると、元TBS記者の山口敬之から2015年4月に性暴力を受けたと訴える伊藤さんに対し、ツイッター上で「枕営業の失敗」などとする複数の匿名投稿がなされた。杉田議員は18年6~7月、こうした投稿25件に「いいね」を押した。 
高裁判決は「いいね」の特徴として「押すか押さないか二者択一で、対象投稿のどの部分に好意的・肯定的な評価をしているかは明確ではない」と指摘。
名誉感情を侵害したかどうかを判断するには、「いいね」を押した人と投稿で取り上げられた人との関係▽「いいね」が押されるまでの経緯▽投稿のどの部分に好意的・肯定的な評価を示しているのか――を検討する必要があるとの考え方を示した。 
その上で、杉田議員が18年3月のネット番組で「枕営業大失敗」と書かれたイラストを見て伊藤さんを中傷しながらせせら嗤い、同6月の英国のBBC放送の番組内で「(伊藤さんは)明らかに女としても落ち度がある」などと発言した経緯に着目。

【杉田議員が「いいね」した25件のツイート(一部要約)】

(1)顔を出して告発する時点で胡散臭い・・同情で国を貶め、それを飯のタネにしたいという意図が見えて賛同できません。

(2)最初っから今まで自分の私利私欲。自分から危ないとこに飛び込んでってんの。・・この女のやってる事は・・自己中の延長だよ

(3)自称#伊藤詩織は、そもそもレイプの事実関係が怪しすぎる。

(4)彼女がハニートラップを仕掛けて、結果が伴わなかったから被害者として考え変えて

(5)枕営業の失敗ですよね。

(6)言ってる事の整合性がなく、被害妄想?を疑いましたよ。売名行為なのかな?

(7)伊藤おばさんは、薬を盛られたくせにホテルで泥酔・・自分の望みが叶わないと相手をレイプ魔呼ばわりした卑怯者。そして、貴女は、それを知りながら杉田さんに因縁をつける最低の人間。

(8)ニコニコ顔で自分のレイプ体験語るヤツが被害者って変だと思わないかなぁ!?

(9)被害者ぶるのもいい加減にして下さい。

(10)詩織さんの行動が招いた結果でOKだね(笑)

(11)お前は本当のキチガイか?・・この屑野郎!

(12)クレーまであり、キチガイそのものだろ!!どういう育て方を受ければここまでキチガイになれるんだ!?(※原文ママ)

(13)(漫画の女性キャラクターの画像を使って)「誰だよてめーは」「いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねーぞ」(と語らせるもの)

(14)悪意に騙されやすい、まっすぐでお花畑の方でしょうか。・・確信犯のサヨクなら知りませんが。

(15)見苦しい 品性の無い 情けない

(16)こっち来るなよ

(17)こいつ詩織が被害者だってマジで思ってんのかな?馬鹿じゃねえの?

(18)お前はもっと品性ねーよwww

(19)このちはる上野とか言う人、変態やな

(20)なんだこいつ 品性ねぇのはあんただ

(21)バカの典型文

(22)貴方の品性のない発言こそ、下劣で不愉快ですよ。

(23)どう考えてもカネを摑まされた工作員

(24)伊藤さんが嘘をついて日本を貶めている事を責めているだけ

(25)ジャーナリストになる為のコネを作ろうとホテルに行ったのに、上手くいかなかったと分かるとレイプされたと虚言を吐き始めたのです。

【判決文の中で「いいね」行為に至る経緯と認められた杉田議員の過去の言動】

(1)2018年3月頃にインターネット番組「日本の病巣を切る」に出演し、「枕営業大失敗」と記載されたイラストを披露した漫画家らとともに、伊藤さんを揶揄した。

(2)2018年6月28日に放送されたイギリス・BBC放送「Japan’s secret shame」の中で、「彼女(伊藤さん)の場合は明らかに女としても落ち度がありますよね」「伊藤詩織さんがああいう記者会見を行って、ああいう嘘の主張をしたがためにですね、山口さんや山口さんの家族には、「死ね」とかいうような誹謗中傷のメールとか電話とかが殺到したわけですよ」などと発言。

(3)2018年6月29日に「もし私が、「仕事が欲しいという目的で妻子ある男性と二人で食事しにいき、大酒を飲んで意識をなくし、介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性」の母親だったなら、叱り飛ばします。『そんな女性に育てた覚えはない。恥ずかしい。情けない。もっと自分を大事にしなさい。』と」とツイート。

(4)2018年6月30日に公開された自身のブログで、BBC放送の番組を取り上げ「伊藤詩織氏のこの事件が、それらの理不尽な、被害者に全く落ち度がない強姦事件と同列に並べられていることに女性として怒りを感じます」と投稿。

判決は「伊藤さんへの批判を繰り返す杉田議員が、伊藤さんを侮辱する投稿に賛意を示すことは、伊藤さんの名誉感情を侵害する」と結論付け、国会議員であり約11万人のフォロワーを擁する杉田議員の影響力も踏まえ、慰謝料を算定した。 
 今回の杉田議員の「いいね」行為について、伊藤さんは「私を守るようなツイートをしてくれた人に対して個人攻撃するものもあって、私にダイレクトに届かなかったとしても、恐怖を感じるものだった」と振り返り、「画期的な判決」と評価した。「『いいね』は、指先一つでできてしまう行為です。簡単にできてしまう『いいね』という行為で、誰かを誹謗中傷する言葉が拡散されてしまう、賛同していると思われてしまう可能性がある、ということを判決で認めてもらった」
 また、今回の訴訟を起こしたことで「表現の自由という言葉が何度も聞こえてきました」と振り返り、「表現の自由という一言で言葉の暴力を許してしまうことを、一度立ち止まって考えるきっかけとなるような判決ではないか」と話した。 
 一審で不十分だった杉田水脈が、伊藤詩織さんに対して誹謗中傷するツイートにだけ「いいね」を押した感情を普段の自身のツイートや杉田議員と伊藤詩織さんの関係を、ちゃんと考慮した判決で、非常に公平な判決だった。
この判決が、杉田水脈を訴える他の裁判に影響するか、要注目。

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