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はだしのゲン 不朽の反戦漫画のアニメ映画版第1作

 世代を超えて読み継がれる、中沢啓治の反戦漫画の劇場アニメ化第1作。 
1945年4月の広島。国民学校(戦時中の小学校)2年生の中岡ゲンは、父親の大吉が戦争を批判したことから非国民の子といわれていた。だが苦渋の生活に耐える一家の前で8月6日、広島にピカ(原子爆弾)が投下。ゲンは父大吉、姉の英子、弟の進次を一瞬のうちに失った。このショックで早産した母・君江と、生まれた赤ん坊の妹・友子の面倒を見ながら、他の被災者とともに必死に生きるゲン。彼は死んだ弟・進次にそっくりな戦災孤児・近藤隆太を家族に加え、そして原爆のため全身に大火傷を負った画学生の青年・吉田政二の看病をしながら戦後の世を生きていく。だが、友子は、栄養失調で死んでしまう。悲しみに沈むゲンたちは、友子たち死んでいった者を弔うように、いつかゲンが進次と川で浮かばせる約束したおもちゃの船を、川に流すのだった。
飢えに苦しみながらも、家族仲良くたくましく生きるゲンたちの毎日を、妊娠中の母・君江に精をつけるためにゲンと進次が鯉を屋敷の池から盗むエピソードなど原作コミックの名シーンを絡めて描く前半は、明るくコミカルな調子で描いている。
だからこそ、原爆により皮膚が焼け爛れ、爆風で飛び散ったガラスの破片が突き刺さり亡霊のようになった原爆犠牲者や戦争で傷つき大火を負って帰った吉田政二などの戦争被害者の無残な姿の悲惨さ、ゲンと戦災孤児の隆太がたくましく生きる姿が、際立つ。 ゲンの父親大吉が戦争批判したことから、隣組から配給などで差別されたり、町内会長の息子たちにゲンたちがいじめられたり、ゲンの父親大吉が憲兵に捕まって拷問されたり、ゲンの父親の隣人の在日コリアンの朴さんが在日朝鮮人ということで差別されたり、ゲンの兄浩吉が家族のために海軍に志願するエピソード、隣組同士の同調圧力で戦争協力を強いられるシーンがカットされたことは、残念。
子供たちに原爆の悲惨さを伝えるためにも、戦争の記憶が風化しつつある今こそ改めて見たい反戦アニメ映画。

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