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VIVANT 日本のドラマの域を越えるアドベンチャードラマ

あらすじ

大手商社「丸菱商事」の社員・乃木憂助(堺雅人)が、所属部署で起きた誤送金事件の損失130億円を回収するため、中央アジアのバルカ共和国へ向かうところから物語はスタート。
爆破事件の容疑者として現地警察に追われる中、乃木を救った日本の公安・野崎守(阿部寛)と、医師・柚木薫(二階堂ふみ)に出会い、金の受け取り人が口にした「ヴィヴァン」の謎に迫っていく。
堺雅人が主演を務め、堺と「半沢直樹」シリーズでタッグを組んだ福澤克雄監督が原作・演出を手掛ける完全オリジナルの“アドベンチャードラマ”。
共演には阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、松坂桃李、役所広司といった日本のエンターテインメントを牽引するキャストが名を連ねる。

感想など

「半沢直樹」など大ヒットドラマの演出を手掛けた福澤克雄監督は、日頃から「日本のドラマは日本でヒットすれば良いという内向きな内容で、海外でヒットするものはなかなかない」という不満を持っていた。
3年前、タクシーで「別班」についてのニュースを聞いた福澤さんは、「別班」に興味を持ち様々な「別班」についての本を読んだりした中でストーリーを組み立てたアドベンチャードラマ、それが「VIVANT」だった。
ストーリーは、全体的に「半沢直樹」+「ミッション・インポッシブル」+「スターウォーズ」+80年代バディムービーというエンタメにフルスイングしたものになっているが、「半沢直樹」と違うのは勧善懲悪という目線で世界観を構築していないところ。
乃木が所属している「丸菱商事」などの商事会社や自衛隊の諜報工作機関「別班」、野崎が所属する「公安」、乃木の過去に関係するテロ組織「テント」でさえ、善悪不二として全肯定していない。
乃木が「テント」に潜入する後半から描かれる「テント」結成秘話と「テント」のリーダーのノゴーン・ベキの壮絶な過去のパートでは、「別班」「公安」が守る日本などの先進国の利益を守るために天然資源を保有している発展途上国を搾取するグローバリズムへの是非を問う硬派な社会派な日本ドラマの域を越えるテーマ性がある。
とはいえ、乃木と野崎がタッグを組んで誤送金事件を捜査するため、バルカ警察の追跡を振り切るために頑丈なトラックで包囲網を突破したり、砂漠地帯を乃木たちが決死行したり、誤送金事件の犯人を突き止めるために丸菱商事のサーバールームに潜入するなど、「アラビアのロレンス」「ミッション・インポッシブル」や80年代バディムービーをオマージュしたモンゴルロケが効果的なハラハラドキドキのサスペンスアクションにフルスイングした前半が、後半の「ミッション・インポッシブル」「ルパン3世」「半沢直樹」という社会派サスペンスアクションに向けた前フリになっていてメリハリが効いていた。
そして日曜劇場の十八番である家族のドラマは、前半で生死を共にした乃木と野崎と薫が擬似家族としての育む過程もしっかり描かれ、乃木の過去を知るノゴーン・ベキとノコルと乃木の関係がシェイクスピア劇的な重厚さで描かれるのが、日本人視聴者のツボを心得ている以上に、家族の記憶がなかった乃木憂助が野崎や薫たちと擬似家族的な絆を築く中で本当の愛を知り家族の愛を知り、ひとりの人間として成長していく骨太なヒューマンドラマとして見応えあって、乃木と野崎のルパンと銭形警部のようなバディ関係や乃木と薫のピュアなラブストーリーもしっかり軸になっている日本人のドラマの限界を越えたアドベンチャードラマだった。
福澤さんは、「3部作」の構想があるようなので、「テント」の残党が先進国の搾取に逆らうテロ組織「ローグネーション」を結成し、「別班」と「公安」が立ち向かうシーズン2を夢想しつつ楽しみにしています。
U-NEXTで、配信中。

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