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拝啓Vivienne Westwoodさま

2022年の年末、Vivienne Westwoodの訃報をきいたとき、「ああ、私の青春がおわったな…」と、そう思いました。

いまもむかしも、いちばんすきなファッションブランドは?と訊かれたら、即座にVivienne Westwoodと答えます。

ヴィヴィアンのお洋服は数着しか持っていないし、ブランドのことを熟知しているわけではないのだけれど。
でも、あのオーブマーク以上に、私のこころをときめかせるブランドロゴはありません。

13歳のころからずっと、あこがれているブランドです。
十代の頃は、矢沢あい先生の漫画の影響を多分に受けていた時期でもあったので、そのせいもあると思います。

中学生のころ、校則の靴下カラーが白だったのですが、クラスでひとり、ワンポイントにヴィヴィアンのオーブマークが刺繍されたソックスをはいてくる女の子がいました。
ちんちくりんな私がはいていたら、きっとオーブマークだけ悪目立ちしてしまっていただろうけれど、彼女にはとても似合っていたし、かわいいなあ、いいなあって、羨ましかった気持ちをいまでも憶えています。

でも、白い靴下は履けなかったけれど、中学生のときに百貨店で母がウールソックスを買ってくれました(ヘッダーの写真がそうです)。
もう穴があくのがこわくて履けないけれど(実際あきかけている)、いまでも宝物です。

私の地元にはVivienne Westwoodの路面店があったので、街に出かけてお店の近くを歩いていると、ヴィヴィアンのお洋服を着たひととすれ違うこともありました。

何十年たっても忘れられないのは、クマのTシャツを着ていたショートヘアのおんなのひとのこと。
とろっと肌触りのよさそうな白いろのTシャツの前面に、水彩の青いろのクマがプリントされた、すごくすてきなTシャツをサラリと着こなしていて、すごく格好よかった。
「ああ、ヴィヴィアンのお洋服だ…」って一目見て分かるのに、そのひとにはブランドに負けない存在感があって、とてもよく似合っていたのです。
そのときは、私もいつかは…と胸をときめかせたものです。

数年前、オンラインショップでそのTシャツが復刻販売されていたのを見たのですが、買おうかものすごく迷って、結局やめてしまいました。
でも、それをいまだに後悔しています。

そのTシャツ以外にも、私があこがれているヴィヴィアンのお洋服がいくつかあって。

ラブジャケット、ライディングスカート、赤単色のオーブじゃなくてオーブがカラーで刺繍された黒色のカーディガン、テディベアのネックレス(これも数年前に復刻販売されたけれど、売切れで買えなかった…)、ロッキンホースバレリーナ。

インポートのものではなくて、ライセンスのものも多いけれど、それでもあこがれてあこがれて、あこがれが強すぎて、若い頃は買えなかったものたちです。

ロッキンホースなんて、いま履いて出かけたら転んで怪我しそうで、もう永遠のあこがれのまま、生涯履かずじまいで終わってしまいそう。
なので若いかたでロッキンホースに憧れているひとがいたら、がんばってお小遣いを貯めて貯めまくって買って、ぜひとも末永くかわいく履きこなしてほしい…!

でも、そんな私でも、一つ目の職場を退職すると決めたとき、ついにラブジャケットとライディングスカートを買いました。
ゴールドのブランドロゴが印刷された真っ赤な紙袋を提げて、オーブマークを象ったドアノブを押してお店を出たとき。
泣きたくなるほど、うれしかった。

それももう、何年もむかしのことだけれど、ジャケットとスカートは、いまもだいじに着ています。
私にとって、「いざというときは、これがあるから大丈夫」と思える洋服とアクセサリーの存在は、ものすごくたいせつです。

ご自分の洋服をどのようなものだとお考えですか?
―――もしみんなが同じ洋服を着ていたら、きっとみんな同じように見えるはず。街を歩いている人たちの大半は、ひどい格好をしているわ。なぜなら、誰もが、失敗するくらいなら洋服で主張しないほうがましだと考えているから。着る物に対していい加減で、自己表現に時間をかけることをしないのよ。(以下略)

ハイウェル・デイヴィス著 桜井真砂美訳『ブリティッシュ・ファッション・デザイナーズ ステラマッカートニーからイーリーキシモトまで』株式会社ブルース・インターアクションズ P.198

―――時代に追いつくことに、私はまったく興味がないの。みんな、時代に乗り遅れまいと必死になっているから、今目の前にあるものをすべて見逃しているわ。

同 P.201




拝啓Vivienne Westwoodさま。
私に永遠のあこがれを、ありがとう。

洋服にできることは、着る人を特別な存在に見せ、そのことを本人に実感させてあげることだと思う。私の洋服は人に影響力を与えるの。

同 P.198、201




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