King Gnuと偉大なる無名達〜King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN 2024.01.28 東京ドーム公演 ライブレポート〜
約4年ぶりのNEW ALBUMとなる『THE GREATEST UNKNOWN』を引っ提げて、現在5大ドームツアーを開催中のKing Gnu。今回は、ツアー折り返し地点の東京ドーム公演2日目の模様を綴りたいと思う。
大阪公演、名古屋公演を経ての東京公演。メンバーのSNSを見ていて、全公演予想以上の盛り上がりとなっていることは伝わってきていた。この日は映像収録日。これまで以上に、伝説のライブにしたいという気概が会場を覆い尽くしていた。
開演時刻を少し過ぎてからの開始となったが、予定時間になると観客が自然と手拍子を始めていた。まるでアンコールのような熱気が、開演前から渦巻いているようだった。会場が暗転し、手拍子にも拍車がかかる。オープニング映像は、ヌーのオーロラのようなものが星に変化して、先に飛んでいる4つの星に追いつき、5つの星となって自由に飛び回っていくもので、この映像がステージ上の5つの星に繋がる演出だった。King Gnuの楽曲でもあり、観客(あなた)の楽曲でもあるというアルバムのコンセプトが濃縮された演出に感動していると、唐突に「"U R MY SPECIAL"」という歌声が響き『SPECIALZ』が披露された。予想外の1曲目に、驚きと喜びの歓声が上がり、会場の熱量が一気に高まる。続く2曲目は、『一途(ALBUM ver.)』。手拍子と光線の嵐が吹き荒れ、最高潮の盛り上がりを見せた。勢いをそのままに『千両役者(ALBUM ver.)』で一体感を作り上げる。『STARDOM(ALBUM ver.)』では、観客の歌声と炎に包まれて、圧倒的王者感を見せつけた。
束の間の静寂の後に『MIRROR』が流れ、『CHAMELEON』へと繋がっていく。聴き入る人も居れば、口ずさむ人も居て、そこに居る全ての人が本当に自由に音楽を楽しんでいた。『DARE??』は、アルバムの中ではインタールードの楽曲だが、これまでライブでしか演奏されていない未発表曲のVivid Redのアレンジが加わり、井口さんと常田さんの掛け合いが披露された。想定外の展開に、一瞬時が止まったかのような不思議な時間が流れる。続く『白日』では、MVを彷彿とさせる白黒の映像に切り替わり、ドーム全体がその世界観に引き込まれた。
会場が明るくなり、MCタイムヘ。井口さんの「100年後の見知らぬ人が観て、こんなライブがあったんだと思えるような日にしたい。映像の中に生きているって夢があることじゃない?」という呼びかけに、大きな歓声が上がった。
常田さんのピアノソロから『硝子窓』が始まる。井口さんの澄んだ歌声に、印象的な新井さんのベースと勢喜さんのドラムが混ざり合い、King Gnuの世界観を構築する。『泡(ALBUM ver.)』では、序盤のロックとは異なるチルな空間が広がっていく。続く『2 Μ Ο Я Ο』でも、心地良いメロディーに身を委ねた。次に披露されたのは『Vinyl』。ファーストアルバムに収録されている楽曲で、まさか今回のツアーで聴けるとは思っておらず、観客は大盛り上がり。初期の楽曲に大盛り上がりの観客を前に、メンバーも嬉しそうに演奏していた。
真っ赤な照明にベルの音が鳴り響き、『W●RKAHOLIC』をパフォーマンス。暗転したステージに登場したのは、なんと椎名林檎さんだった。ステージ中央でスポットライトを浴びて『W●RK』を歌唱する姿は、まさしく降臨と呼ぶのに相応しかった。常田さんは、拡声器を持って中央の椎名林檎さんの周りをクルクルと回りながら歌唱。どよめくとはこのことかと思うくらいに会場全体は驚きを隠せていなかったが、完璧に歌い上げて颯爽とステージから去っていった。
茫然自失の観客。状況を整理をする暇もなく『):阿修羅:(』が披露されたが、一瞬にしてKing Gnu一色に塗り替えて、再び最高潮の盛り上がりとなった。『δ』から『逆夢』へと移行し、壮大なバラードがドーム全体を包み込む。次に演奏されたのは『IKAROS』。不思議な照明も相まって、神話のような世界観が広がっていく。
穏やかな雰囲気から一転、『Slumberland』へ。最近のライブではアレンジされることが多く、今回のツアーでも新たなアレンジが加わっていた。続いたのは『Sorrows』。この楽曲も比較的初期の楽曲で、歓喜の声が上がった。観客皆で「Sorrows」と歌い、メンバーも笑みが溢れる。勢喜さんのドラムソロが響き渡り、次の楽曲が『Flash!!!』であることを予感させる。まばゆい光線が、観客のテンションを最高に持っていく。
再び、MCタイムヘ。井口さんの「もう後半です。」の宣言に、大きな惜しみの声が上がり、メンバーは嬉しそうにしていた。
本編終盤に差し掛かり、披露されたのは『BOY』。MVでお馴染みのメンバーの幼少期を演じている子供達がスクリーンに登場。同じ構図で子供達とメンバーが交互に映し出され、まるで成長した姿を見ているかのようなエモさ全開の演出だった。井口さんが『SUNNY SIDE UP』を歌い上げ、『雨燦々』へと繋げていく。「雨燦々と降り注ぎ」という大合唱が会場に響き、この楽曲の持つ魅力が存分に引き出された。『仝』から『三文小説(ALBUM ver.)』へ移行し、歌、ピアノ、ベース、ドラムが優しく会場全体を包み込んでいく。『ЯOЯЯIM』とともに、スクリーンにエンドクレジットが流れ、『THE GREATEST UNKNOWN』が締め括られた。
鳴り止まない拍手は、そのままアンコールへと変わっていく。
ステージが明るくなり、再び登場したKing Gnu。「いいバンドだね。」と井口さん。いつも通り、ゆるゆるMCを繰り広げた後、話し始めたのは常田さんだった。「ここまではアルバムの通りの曲をやってきたけど、アンコールの2曲は昔からの曲、Teenager Foreverと飛行艇をやります。皆で歌うことを想定して作った曲だから、もう十分歓声もらってるんだけど、あと10倍くらい頂戴?」あまり話すことのない常田さんのお願いに、観客も大歓声。「もう全部置いていって。俺らも歌うから、皆も歌って。」と言う常田さんに「俺らの声を掻き消してよ。笑」と井口さん。「本当にそう。そうしたらPAも頑張るから。もっと良くなっていくから。」そう言い残して、演奏に入っていく常田さん。その宣言通り『Teenager Forever』では、「ティティティティティンエージャーフォエバー」の大合唱、『飛行艇』では、「大雨降らせ 大地震わせ 過去を祝え 明日を担え 命揺らせ 命揺らせ」を何度も何度も噛み締めるように、声が枯れるまで、皆で大合唱をした。最後は、勢喜さんのドラム台の上に、常田さん、新井さん、井口さんそれぞれが飛び乗って、ジャンプして飛び降りた。メンバーが本当に嬉しそうで、楽しそうで、そこに生きていた人の命が揺れていた。鳴り響くギターが映し出されたスクリーンを背に、最高のライブを終えたKing Gnuは去っていった。
アルバム発売前、常田さんは『THE GREATEST UNKNOWN』に込めた想いを綴っていた。
King Gnuの楽曲を、あなたにとって大切な楽曲にして欲しい、King Gnuのライブを、あなたにとって最高のライブにして欲しい、皆でバンドをより良いものにしていこう、King Gnuとあなたで見たことのない景色を見に行こう、そんなアルバムのコンセプトがとても伝わってきたツアーだった。
そして、King Gnuと偉大なる無名達が創り上げたライブは、至高の音楽空間になった。