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西に沈む夕陽に未来を信じる

西に沈む夕陽を見つめながら
「あなたの病気はがんです」と
言われた時のことを思い出し振り返る。

僕たちは、4年前のその時、妊活中だった。

未来は、必ずやってくるものだと信じて
ワクワクしながら眠り、
明日が来るのを楽しみにしていた。

ところが順風満帆だと思っていた人生が
一夜にして逆転することもあると
癌は教えてくれた。

多恵子は子供が大好きで、やっぱりいつかは
家族を持つと思っていたから、
子供をつくることさえ無理かもしれないという、
未来に希望がないのはひどく辛い現実だった。

大切な人に先立たれるかもしれない悲しみと、
大切な人を残して逝くかもしれない悔しさで、
お互い未来へいいようのない不安を抱え
明日が来るのが怖くなり信じられなくなった。

術後、全身に転移していたがんを
少しでも大人しくするため、命をつなぐためには
生殖機能に影響のある抗がん剤治療を
選択するしかなかった。

抗がん剤治療をすると、
妊よう性(妊娠するさせる力)を
失う可能性があることは分かっていた。

それでも命には代えられない。
生きることが最優先だった。

やっぱり、できる限り生きていたいという思いで必死だった。
他のことは全て後回しだった。

たとえ、妊娠できる状況になったとしても、
なかなか妊娠に踏み切れないこともある。

がんと共に生きる中で、
新しく家族をつくるということは簡単ではない。

がんの再発や死別の不安、
治療による後遺症のリスク、
妊娠・出産・育児に対する問題、
お互いの関係性の中で子供を持つことの意見の
食い違いなど、数え切れないいくつもの不安や
葛藤を乗り越えなければならない。

子供がいる未来を選ぶのか、
もしくは2人で生きていくのか、
それとも・・・。

答えの出ない先の見えない不確定な未来と
心の思いを話続けることもまた
苦しかったりもする。

こうして振り返れば、辛い現実も
深く人生を味わうための大切な経験だと思えば、
生まれてくる奇跡もまた、
僕たち夫婦にとって特別な1ページになる。

子供を持つことを一度は諦め、
何があっても死なせないと彼女の献身的な
看病があったからこそ、今がある。
辛く心苦しい話し合いも逃げ出さず、
向き合った結果がここにある。

未来はいつも不確定だから、
不安が心の中を簡単に支配してしまう。

たとえ今日と同じ明日が続くか分からなくても、
未来は今日の延長だと気づけば、
今日よりも明日、明日よりも明後日と、
少しずつでも未来を変える努力ができる。
そして未来を変えることができるのは
いつだって今日でもある。

生まれてくる命を前に、多くの学びを得て
また明日が楽しみだと、
未来を信じられるようになり、
前を進めるようになった。

沖縄を離れ、一時は治療に専念するため
アースを残し寂しい思いをさせた。
闘病生活の中で新しい命を迎えることもできず、
多恵子にも寂しい思いをさせた。

それぞれの思いを胸に、4年前のあの時よりも
ずっと成長して新しく家族を迎える。

これからも不安に思い眠れない日があるかもしれない
それでも明るい未来を信じて、DAY BY DAY。

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