静岡空港に訪れたことがありますか
皆さんは静岡空港に訪れたことはありますか?私はあります。
遠い、不便、便数が少ない、と、申し訳ないですが存在意義が疑われる空港に思えますが、だからこそ多くの日本人にとって訪れた経験は貴重で、訪問したことがあれば話のネタになると思い、私は訪問しました。
私は東京在住ですが、関東圏在住の人が飛行機に乗るために静岡空港に訪れる理由はゼロです。なので、飛行機に乗るためでなく、ただ訪問する事だけを目的に、訪れました。
静岡空港訪問記
島田駅。大井川流域の旧宿場町がある場所ですが、大井川を挟んだ対岸に静岡空港が位置しており、駅から空港バスも出ています。
という情報だけを頼りに、「さすがに空港バスは何本か出ているだろう」とあまり下調べをせずに11時ころに訪れました。
本当は下調べして訪れました。そして、実際は静岡駅からの方がバスの本数は多いので普通の人は静岡駅からバスで訪れた方が良いです。それでも1日7便しかなく、バスの時刻にあわせるのも結構難しいです。時間も50分ほどかかります。
私はどうあがいても今回のスケジュールに合うバスが無い事がわかりきっていたので、電車で空港近くの駅である島田駅まで訪れました。
バスが使えないとした場合、代替手段は何か、グーグルマップ先生に質問をした結果が以下。
ということで、徒歩で訪れます。
何の誇張でもなく、11時台に静岡〜島田周辺に訪れた場合、公共交通機関で静岡空港に訪れる事ができる唯一の方法かつ最速の到達手段が、徒歩です。
大まかなルートとしては、蓬莱橋経由で大井川を渡り、牧之原台地を登り、空港までたどり着く、という流れ。
蓬莱橋は明治時代に架橋された木造の橋のようです。先日訪れた岩国の錦帯橋に比べるとメンテナンス状態が悪く、一部壊れたり腐食している?と思われる箇所があり、なかなかスリリングな体験ができる橋でした。欄干が低いので小さい子ども連れの人はガチで気をつけた方が良いです。落ちたら下手したら死にます。通行には通行料(100円)が必要です。
橋の先に木が生い茂っていますが、ここを登りつめた先が牧之原台地であり、静岡空港です。
牧之原台地までは結構な山道です。山道を登る際は太ももやふくらはぎの筋肉をなるべく使わないように小さい歩幅で登っていくと疲労しづらいと思います。
台地の上にのぼると茶畑が一面に広がり、しばらく平らな農道っぽいところを歩くことができます。茶畑は広がるのですが、家や人影は基本的に見当たらず、もちろん店や商業施設もない空間を歩きます。
茶畑の広がる地域を抜けると、急な下り坂を下り、また坂を登り直し、みたいなことを何度か繰り返します。これが意外と精神を削るかもしれません。
台地を流れる湯日川という川が地面を削り取ったことによる造作で、この川が台地の茶畑に水を供給している役割も果たしているのでしょう。川沿いには人家も見当たります。
そんな感じで、静岡空港に到着です。僕の実績値は、11時に島田駅を出発し12時40分ころに到着。おおよそ1時間40分くらいかかりました。ちょっとした散歩気分でたどり着けます。
空港周辺に着いたのに飛行機の音が聞こえないな、と思いましたが、昼時の静岡空港はそもそも離発着する飛行機が少ないようです。
ただこの日は、韓国のJEJUairの臨時便が発着していたようで、空港に訪れたのに飛行機を全く見ることができない、という事態は回避できました。
静岡空港はコンパクトな空港です。滑走路は2500mあるため本来なら比較的大きな飛行機が発着可能ですが、国内線はFDAのエンブラエルの小型機(乗客80名弱)が中心、国際便も過去の実績ではボーイング737などの小さめの機体が中心のようです(※2023年2月現在定期便の国際便は存在しない)
施設もかなりコンパクトで、僕の印象としては稚内空港や南紀白浜空港に訪れた時と同じような雰囲気だと感じました。
歩いて空港に訪れてお腹がすいたので、昼時でもあり食事でもいただこうかとレストランに訪れたのですが、「韓国からの観光客が来るのでお断りです」と断られました。たしかにこの日はJEJUairからのツアー客が来日していたようなのですが、レストランの前で30分くらい待機して観察していた限りそのような人の群れを見かけることはありませんでした。
後で国際便の到着口あたりに訪れた感じだと、到着時間から1時間くらい経ってるのに手続きに手間取っていて、おそらくイミグレーションを空港側が捌ききれず時間がかかっていたのでしょう。日本までわざわざ訪れたのに昼時かなり過ぎてもレストランにすらたどり着けないとは、ご愁傷さま、申し訳有りません、と素直に思いました。折返しのソウル行きの発着口も、結構ギリギリまで人が捌けず並んでました。
いずれにせよ、空港で食事をする機会も失われたので、JEJUairの飛行機が飛び立つのを見送り、とくに何も買うことも無く静岡空港を後にしました。
なお帰路ですが、帰りもバスの時刻が合わないため、もちろん徒歩で帰りました。軽い散歩、近くのコンビニにぷらっと訪れるようなものです。
帰りは島田駅の隣の金谷駅の方に向かいました。このルートはずっと平らで歩きやすいですが金谷駅周辺だけびっくりするくらいの急坂になっており、金谷駅から静岡空港に向かう場合は注意が必要です。
静岡空港の雰囲気はかなり独特と感じました。人は決していないわけではなく、親子連れ中心にそれなりのお客さんは見かけるのですが、どう見てもこれから飛行機で旅行に出かける、という居で立ちの人が少ないのです。
おそらく、静岡空港に訪れる人達の多くは近くに住んでいる人で、遊興施設・観光施設の一つとして車で訪れてるのでしょう。実際展望デッキから飛行機の写真を撮ったり、航空無線を聞いたりしている人がとても目立ちました。
どの空港でも一定数こういう人はいるのでしょうが、静岡空港は「飛行機に乗る」ために訪れる人の比率が少ない、もしくはいないため、他の空港より目立つのだと思います。
また静岡空港の周囲数kmの範囲で、商業施設や公共施設を全く見かけない、というのも異様でした。コンビニや公民館、公園ですら見つけることはできませんでした。
今回私は無事完走しましたが、同じ様に徒歩で訪れようという奇特な方へ助言できることとしては、「道中にトイレすら皆無」「遮るものが少ないため風が強く日差しも強く浴びる」「食料や飲み物の調達もできない」という環境だという事を理解してください、という事。夏場に今回と同じことをするのは僕は絶対無理そう。入念に準備をして訪れた方が良いと思います。
また、静岡空港は「富士山静岡空港」という名前になっているのですが、今回空港周辺から富士山を見ることはできませんでした。雲がかかってなければどこかしらからチラ見する事はできるのかも知れません。
周囲の看板がメンテナンスされてないものが多いのも印象的でした。使う人が少ないから誰も気にしないんでしょうね…
静岡空港の置かれている状況
静岡空港の真下には東海道新幹線が走っている、ということから「新幹線新駅を建築したらどうか」という構想が存在します。昨今のリニア問題との絡みもあり、政治的な駆け引きの駒としての性質も持ち合わせています。
この構想の妥当性は、空港が置かれている状況を多面的に見ていくことでクリアになっていくのではと思います。
東京との位置関係
新幹線とリンクさせたいというのは、地元住民の足としてよりも東京や名古屋などの周辺大都市圏との接続を重視した視点だと思います。羽田・成田を補完する「首都圏第三空港」として期待する声も一部あります。
(Wikipediaには静岡空港については記載されていません)
東京駅から、東京周辺にある空港の距離と所要時間を表にまとめてみました。よく色々な資料では東京駅からの直線距離で議論されてますが、直線的に行けるわけがないので車や鉄道・バスで移動した際の数値を記載しています。
関東人から「遠い」と忌避される成田で71km、首都圏第三空港の有力候補である茨城空港までが96km。これらと静岡空港は比較対象になりうる条件を満たしておらず、どちらかというと松本空港や福島空港と同じ位置付けの空港です。
実際の所要時間で見ると大都市圏の「仙台」や「セントレア」に行く方が速くたどり着ける可能性があり、だったらそれらの空港に羽田・成田の機能をオフロードすれば良いじゃん、という結論になります。
「静岡=近い」と東京の人は誤解しがちですが、静岡空港は県の中央から西よりに存在していてかなり離れています。「富士山」の名前を冠していますが、その富士山からも100km以上離れていてかなり遠いです。薩埵峠のさらに西側ということで富士山を眺める事も意外と難易度が高いです。
ちなみに、東京圏からだと、横浜〜富士山の距離がおおよそ120kmで、静岡空港〜富士山と同じくらいの距離になります。静岡空港が「富士山静岡空港」と自称できてしまうのなら、横浜も「富士山横浜駅」と名乗っても何も問題ないと思います。
静岡空港に新幹線駅が出来たらどれくらい便利になるか
なので、普通に考えたら「首都圏第三空港」などと背伸びをせずに地元密着のローカル空港として活路を見出すべきですが、真下に新幹線が通っているということから皆の気を迷わせている部分があると思います。
上下線それぞれ3分に1本の間隔で高速運転している東海道新幹線の営業を止めずにトンネルを拡張し新駅を建築する、というのもとても現実的には思えませんが、仮に技術的・金銭的な問題がすべてクリアされて新駅が出来たとした場合、どうなるのでしょう。
所要時間と料金について見てみます。静岡空港〜掛川駅の間がとても短い(直線距離で16km)、と話題になっていますが、ここでは掛川駅≒静岡空港駅と仮定してシミュレーションしてみます。
東京から掛川駅までおよそ1時間半で、同じくらいの時間でたどり着けるとした場合茨城空港と肩を並べることができるようになります。「のぞみ」や「ひかり」を止めるみたいな話になったらもう少し短縮も可能かもしれません。
しかしそれでも1時間を切ることは現実的ではなさそうで、「あの成田よりも遠い」という心理的な壁を乗り越えるのは難しそうです。
時間もそうですが、費用もかなり高額になり、成田や茨城空港と比較しても倍以上の値段がかかります。
首都圏の人間が成田や茨城空港に訪れる強い動機として、安いLCC便に乗れる、というものがあります。たとえ所要時間がかかっても、安い値段で移動できるからこそ需要もうまれます。
成田空港を例にあげると、東京駅からは1300円、大崎駅からだと1000円という格安料金で一時間程度で空港まで移動できます。茨城空港もかつては1530円で移動できるバスがありました。そして札幌や福岡などの主要都市に片道5000円以下の金額で移動することができます。
つまり、バス+LCCを使えば静岡空港まで移動する費用よりも安く目的地までたどり着けるということです。あえて高いお金を払って時間をかけて遠い静岡空港まで訪れる人が果たしているのだろうか?という気持ちになります。
まとめると、たとえ静岡空港の下に新駅が出来ても、所要時間は競争力が生まれるほど速くはならないし、お金も余計にかかり、使う人が増えることは想像できない、ということかと思います。
静岡空港〜掛川が近すぎる問題と、静岡空港の利用者数問題
静岡空港の新幹線駅の建築には、「掛川からの距離が近すぎる」という声が多く、JR東海もこれを根拠に否定的な立場を取っています。
実際どのくらいの近さなのか、東京の人間でもわかりやすい比較として、「東京周辺で新幹線と交差している駅」から新幹線最寄り駅までの距離を算出して比較してみました。
場所は以下の動画を参考にしています。
距離的には高座渋谷駅〜新横浜駅間が、掛川〜静岡空港と似通っています。
感覚的には御嶽山駅が、新幹線が駅の真下を通過するというシチュエーションから類似点を感じなくもないです。
倉見駅には実際に新駅計画もあるようで、地域の商業施設や研究開発施設の誘致も含めたトータルな都市計画として構想されているようですが、ここまでしても費用便益的にはなかなか実現は難しそうです。
首都圏の人からすると、大半の意見は「こんな近くに作っても無駄でしょ」となるでしょう。都会の肌感でもそうなので、駅間が広くなりがちな地方なら尚更でしょう。
それでも、万が一上述の新幹線と交差する駅のどこに新駅を作るとしても、静岡空港に比べたら経済的な効果は期待できます。理由は、静岡空港の利用客が少なすぎるからです。
静岡空港の発表している資料等を色々参考にして埋めてみた、直近10年の乗降客数が以下。
直近2年はコロナの影響で致し方ないとはいえ、ピーク時でも日当たり平均にならすと1日あたり2000人前後、という数字になっています。
さらに、静岡空港は、訪問記でも書いたとおり周囲に人が住んでないので、周辺住民が静岡空港駅を使用するという可能性はほぼ無いです。あえて台地の上の不便なところまで車を走らせるくらいなら、静岡なり掛川なりの既存の新幹線駅を使うでしょう。
ということで、静岡空港の利用者数が、そのまま静岡空港駅の利用者数の最大数になります。もちろん飛行機を使用する人の全員が新幹線に乗ることは考えられないので、新幹線を実際に使用する人はもっと少なくなります。
この程度の規模の新駅を作るくらいなら、首都圏の新幹線と交差している箇所に駅を作った方が、まだ利用者数は見込めます。
ちなみに、静岡県内の新幹線駅の利用者数についても付記しておきます。新富士駅が1万人を割り込んでいて東海道新幹線の中ではかなり少ないですが、その新富士駅と比較しても、静岡空港駅がこの数字を超えることはちょっと想像ができないのが現実です。
静岡空港の需要は回復するのか問題
それでも「コロナが収束してインバウンドが加速したら海外から訪れる人も増える」と考えている人もいるでしょう。ここでは、静岡空港が最も賑わっていた2019年の就航便を振り返ってみます。
静岡空港の国際便は毎日就航のものは少なく、曜日指定のものが多いため、週辺りの便数で計算しています。台湾から週2便、ソウルから週3便で、残りがすべて中国。およそ8割が中国便。圧倒的に中国からの就航便が多いことが伺えます。静岡空港はコンパクトな空港ということもあってか、長距離路線はなく東アジアの諸国からの便に集中していえるのが特徴です。
一方国内便については、コロナ前後で就航本数はそこまで大きく差がありません。変わったのは那覇便が無くなったこと、北九州便が熊本便に変わったこと、くらいです。搭乗率についても2022年11月のデータを見る限り、コロナ前の水準を完全に回復しています。しかし増便という話が出てくるほどの水準ではないようです。
静岡空港は福岡行きの便が他路線より多く4便が就航しています。早朝など新幹線で訪れるよりも飛行機に乗ったほうが速くたどり着ける時間帯があり、その需要を拾っているのだと思います。コロナ前後関わらず搭乗率が7割強で安定しており、需要が逼迫することもなく、かといって減便になるような状況ではありません。
他路線は1日1便で、これらも増減を議論するような水準ではなく、安定した数値になっています。
つまり、国内需要については、もう既に回復し拾い尽くしている、ということかと思います。
となると、静岡空港の浮沈は、国際便次第、ということになるかと思います。3月からソウル便の定期路線が復活する模様ですが、全路線の8割を占めた中国便の復活が何よりも求められるでしょう。
しかし、昨今の日中関係は、ビザの発行すらままならない状態で、日本全国で中国大陸からのインバウンドは停滞しています。2023年1月と2019年を比較した国別来日数を見ると、他の各諸国が順調に回復をするなか、中国大陸からは2019年比でわずか4.1%(-95.9%)と、落ち込みが顕著です。
昨今の政治情勢からして、この状況は悪化することはあっても改善することはなかなか望みづらく、中国からのインバウンドが急回復することはもはや期待はできないでしょう。かといって他諸国からの便を中国便並に増やす、ということも現実的には難しそうです。
つまり、静岡空港は、コロナ前の2019年の状態にすら、回復させることは現実的には不可能、という状況だと思います。
さらに困ったことに、静岡空港は、一番景気が良かったように見える2019年でも単年で5.7億円の赤字を抱えていました。
静岡空港の収支状況のデータはなぜかコロナ後の数字は公表されてないのですが、状況について想像に難くありません。
この状況下で、静岡空港が単年黒字を達成することは現実的ではなく、このまま営業を続ければ続けるほど赤字を抱え、県民の負担も増える、そういう状況に追い込まれていると思います。
これは2019年の時点でもそうだったのですが、コロナにより情勢が悪化し、より絶望的な状況になっている、と言えると思います。
これらの話を踏まえて、「静岡空港に新幹線駅を作るべきだ」と考えられる方は、どれくらいいるでしょうか。そもそも空港の存続すら怪しいのに。
もちろん、100%請願駅として全額静岡県のお金で作るのであれば、他県在住の私みたいな人間からしたらどうでもよく、自由にやっていただければ良いと思います。
ただ、苦しむのは静岡県の住民です。税金が静岡空港に投入され続ければ、その分住民の生活が苦しくなるわけで、そのことには心が痛みます。
静岡空港について政治の駆け引きの駒にするのはほどほどにしてほしい、せめて現地に一度でも訪れれば現状が理解できるだろう、という気持ちは抱いています。
静岡県の置かれている状況
最後に蛇足的に、静岡県の置かれている状況についても書いていきます。
コロナ禍において、リモートワーク中心のワークスタイルが定着してきたこともあり、東京中心ではなく地方都市への人口流入が加速しました。東京からとんでもなく離れた場所へ、というよりは、東京に通える範囲の郊外への流入が増えたようです。
その傾向は各都道府県の超過転入出の数値を見ることでも把握できます。
転入超過数は東京が引き続き強いのですが、関東圏(神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬)や東京都に隣接している都道府県(山梨県)はすべて転入超過、もしくはマイナスであってもほぼイーブンの数字になってます。
そのなかで、静岡県は大幅な転出超過で、首都圏との距離の近さを考えると一人負けの状況です。報道によると、20代の若者中心に東京圏に転出をしているようです。
人口についても年々右肩下がりで減少をしており、2022年には360万人を割り込んだとのことです。
人口が減り続ける理由の詳細をこの記事で深堀りするのは難しいです。
要因として関係あるかどうかはわかりませんが、個人的にひとつ気になっているのが、他県に比較しての静岡県の交通利便性の低下です。
日本に新幹線が東海道新幹線しかなかった時期、新幹線が通る県ということで、静岡県の優位性は極めて高かったと思います。他県の同距離の区間に訪れるより、静岡であれば速達性が高く、その事が経済的にも観光的にも優位に働いた時代があったと思います。
今では東北・上越・北陸と、多種多様な新幹線が東京から発着するようになり、新幹線の速達性を多くの地方が享受できるようになりました。
たとえば、静岡駅、宇都宮駅、高崎駅、の3駅で、平日の朝の7時台に東京方面に向かう新幹線の本数が、一番少ない駅、つまり一番不便な駅はどこでしょう?
答えは、静岡駅です。
昔は新幹線通勤・通学といえば静岡、というイメージが強かったですが、現在は栃木や群馬の方が利便性の観点では上位になっています。移動・流動の利便性の向上は、経済活動の活発化にも当然寄与していると思います。経済が活発になれば、人や物が集まり、人や物が集まれば、経済が活発になります。その逆もまた然りです。
この話は、新幹線だけでなく、高速道路網についても言えると思います。昔は東名高速道路が圧倒的な存在感を誇ってましたが、関東圏の高速道路は近年飛躍的に整備され、放射状に「網」として強固なネットワークが構築されています。一方静岡は、地形的な制約があるとはいえ、依然として横につながる「線」としてのつながりしかありません。
相対的に静岡県の交通の利便性が下がっている事が、静岡の地盤沈下につながり、その事が人口減少の要因ともなっている、という可能性があるかもしれません。これは私の憶測なので、真偽のほどは定かでは有りません。
静岡県の交通利便性を向上させる施策の一つとして、考えられる施策は、東海道新幹線の県内停車数を増やすことです。
ただ、静岡県内の新幹線停車駅の利用者数は相対的に少なく、現状の運行体制のままだと停めることに理由を見出しづらいのが現状です。
名古屋や京都、新大阪などの巨大ターミナルに劣るのは想像できますが、駅の規模として静岡や浜松は豊橋にすら劣ります。
現状は、豊橋駅は新幹線は日中2〜3本が停車、速達の「ひかり」は2時間に1本、となっており、1時間に1本は停まる静岡・浜松の方が上位です。しかし駅の規模を考えると、静岡・浜松をスルーして豊橋に停めた方が良いのでは、その方が皆も便利だしJR東海は儲かるのでは、とも思えます。
今の時点でもこの状況ですが、静岡の人口は目に見えて減少が続いているので、将来はより一層利用者が減る可能性が高く、そうなると静岡・浜松と豊橋のパワーバランスが逆転するのもそう遠くは無いかも知れません。
リニアが開業すれば、東海道新幹線の飽和状態が解消され、そこまで名古屋や大阪への速達性を追い求めなくてもよくなり、結果的に静岡県内の停車本数も増えるのでは、という話もよく聞きます。
こう考えると、リニア開業は、静岡に残された少ないチャンスのうちの一つで、経済浮揚、もしくはこれ以上の地盤沈下の抑制策として静岡県こそ積極的に取り組む課題のようにも思えます。
しかし、静岡県の将来をどう考えるかは、静岡県民の手に委ねられています。どのような選択肢を取るのも自由だとは思いますし、その選択による結果についても責任を負うべきとは思います。
極めて冷徹な言い方をすると、静岡県が今のまま衰退してくれると、国内の別の地域はそのパイを奪い成長できる余地もあるわけです。
静岡空港の状況や、周辺の様々な話を見聞きするにつれ、静岡はそんな事にお金と時間を使っている余裕はないのに、と個人的には感じざるを得ません。
静岡空港に実際に訪れてみれば、そんなリアルな静岡の現実を、皆さんも実感できると思います。
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