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寺山修司『ポケットに名言を』の”きょうい”的名言3選したら世界が滅んでアップルティーだけが残った

こんにちは羽仁男です。

寺山修司の『ポケットに名言を』より
名言3選したらストーリーができあがったので、
どーぞお付き合いください。


名言1

もし世界の終りが明日だとしても私は今日林檎の種子をまくだろう。

ゲオルグ・ゲオルギウ


これを発したゲオルグ・ゲオルギウ(以下ゲオゲオ)は
applephilia(林檎性愛)であることが窺えます。
世の末が明日であろうともリンゴの種子をまく非合理的変態だからです。
その変態性により彼はリンゴ農家として成功を収め、この世界に必要以上のリンゴをもたらしました。


名言2

一杯の茶のためには、世界など滅びていい。

「地下生活者の手記」


こちらはある地下生活者(以下チカちゃん)が放ったもので、彼女は
抱いた願望を、見合わぬ代償をもってして自動実現する能力の持ち主でした。
人々は無闇な情報の干渉による能力の発現を防ぐため、生来彼女を懐柔し、一人ひっそり地下牢で生活させ制御、管理しました。
決して外に出たいと思わせないように。

それでもチカちゃんが、一杯の茶のため世界は滅びてよし、などという
不可解な破滅的思考に陥ったことの発端は、先述のゲオゲオにありました。
リンゴ農家として成功したものの、人生に停滞感を抱いていた彼はチカちゃんの噂を聞きつけ、好奇心から地下へまんまと忍びこみ、きまぐれに彼女へ'持て余していたリンゴを使った'アップルティーを「一度きりだ」と伝えて与えました。
すると彼女はたちまちその'とりこ'となり、林檎茶への渇望の度合いを世界の存在を意にもかけないほどにまで昇華させていくことになったのです。


名言3

「いのちをたもつのも、いのちをほろぼすのも、どちらもたのしいあそびだったら、ほろぼすほうをえらんだからって、どうしてそれがざいあくかしら?」

香山滋「海鰻荘奇談」


さいごに香山滋(以下シゲ)の言。チカちゃんをアップルティーに耽溺させたのがゲオゲオなら、そのために命を、世界を滅ぼしてもよいと唆したのがこのシゲです。彼は希死念慮の持ち主で、ゲオゲオとは旧知の仲、親交がありました。地下へのルートを聞くとすぐさま彼女と接触し、滅亡の後押しをしたのです。

そうして彼女は世界とひきかえに、再び一杯の林檎茶を願いました。


かくして世界はチカちゃんをも残さず滅び、
あとにはアップルティーだけが残りました。



余談:ゲオゲオの辞世の句は「汝の林檎を愛せよ」


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