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組織における意思決定-マネジメントサイエンスアプローチとカーネギーモデル-

前回、個人における意思決定の話をしましたが、今回は、組織における意思決定の話をしたいと思います。
組織における意思決定のプロセスには、複数のマネージャーが関与しており、問題の特定と解決は多くの部門や多様な視点、場合によっては他の組織までもが巻き込み、マネージャー個人の視野を超越します。では、意思決定の研究として、どのようなモデルがあるのでしょうか。
組織レベルの意思決定として4つがあります。それがマネジメントサイエンスアプローチ、カーネギーモデル、漸進段階的意思決定プロセスモデル、ゴミ箱モデルです。今回は、マネジメントサイエンスアプローチとカーネギーモデルを紹介します。

マネジメント・サイエンス・アプローチ

組織における意思決定を行うためのマネジメントサイエンスアプローチは、マネージャー個人によるアプローチと類似性を持ちます。マネジメントサイエンスが生まれたのは第2次世界大戦中のことでした。当時、個々の意思決定の能力を超えた緊急かつ大規模な軍事問題には、数学的技法および統計的技法が応用されていました。
マネジメントサイエンスは多くの軍事的問題のおいて驚異的な成功をもたらしました。この意思決定のアプローチは企業やビジネススクールにも普及し、そこで様々な技法が研究され精微化されました。数量的な分析は様々な部門で見る事ができると思います。
マネジメントサイエンスが組織における意思決定の優れた手段となるのは、問題の分析と変数の特定および測定が可能な場合です。数学的モデルには1000以上の変数を投入することが可能であり、各変数が最終的な結果に何等かの意味を有します。これによって、テストマーケティングや通信サービスの提供方法など、多様な問題が適切に解決されるようになりました。
このアプローチでは、明示的な変数が人間の処理能力を上回る問題を正確かつ迅速に解決することが可能です。このシステムが本領を発揮するのは、分析および測定が可能で、論理的な構造を与えることのできる問題に適応された場合です。
しかし、このモデルにも欠点があります。それは定量的データが豊富でない場合です。定性的なものはマネージャーが個人的に感じ取る必要があります。重要な要因を定量化し、モデルに取り込むことができなければ、どんなに高度な数学的分析も役に立ちません。そのため、このアプローチが示す結果をすべて信憑するのではなく、定性的な要因も盛り込む必要があるでしょう。

カーネギーモデル

カーネギーモデルは、カーネギーメロン大学にゆかりがあるリチャードサイアード、ジェームズマーチ、ハーバードサイモンの三人の研究に基づくものです。彼らの研究は、個人による意思決定への合理的なアプローチの公式化と、組織の意思決定についての新たな洞察の提示に貢献しました。
カーネギーグループの調査によって、組織レベルの意思決定には多くのマネージャーが関与し、最終決定はこれらのマネージャーの合同に基づいて行われることがわかりました。合同とは、組織の目標や問題の優先順位について含意したマネージャーの連帯のことを指します。
意思決定に関してマネジメントの合同が必要となる理由は二つあります。
一つは、組織の目標は往々にしてあいまいであり、各部門の業務目標に一貫性のない場合が多いためです。目標があいまいで一貫性が欠けると、問題の優先順位をめぐってマネージャーの意見が分かれます。彼らは問題について交渉し、どの問題を解決すべきかについて合同を築かなければなりません。
もう一つの理由は、個々のマネージャーが合理的であることを志しながらも、活動に際しては認識力の限界をはじめ、さまざまな制約を受けるためです。マネージャーには意思決定にかかわらずすべての面を特定し、すべての情報を処理するだけの時間、資源、あるいは知的能力がありません。こうした制約が合同構築行為につながります。

合同構築のプロセスは組織における意思決定行動にいくつかの意味を持ちます。
第一に、意思決定は問題解決策の最適化よりも満足化を目的に行われるということです。満足化とは、組織が最高水準ではなく「満足できる」水準でパフォーマンスを受けることにより、複数目標の同時達成を可能にするということです。意思決定は、全メンバーにとって満足できる水準での解決策の散策が行われます。
第二に、マネージャーは目の前にある問題や短期的な解決策に関心を持っているということです。彼らは、「不確かな探索行動」と称したものに従事します。不確実な探索行動とは、マネージャーが問題をすばやく解決するために、ごく身近な環境を見回して解決策を探そうとすることを言います。カーネギーモデルでは、探索行動は満足できる解決策を示すのに十分なだけ行われ、マネージャーは通常、最初に浮上した満足できる解決策を採用しがちになるとしています。
第三に、意思決定の問題特定段階では議論と交渉がとりわけ重要だということです。提携のメンバーが問題を感知しない限り、行動は起こりません。

カーネギーモデルでは、マネジメントの合同を通じての含意構築は組織における意思決定の重要な構成要素だと指摘します。議論や交渉には時間がかかるため、探索の手順は通常、簡素化され、選ばれた選択肢は問題解決を最適化するよりもむしろ満足化を目指します。

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