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ウットワードの研究

今回は、製造技術に関して最初に影響力を与えたイギリスの産業社会学者、ジョアン・ウッドワードの研究を紹介します。組織の整合性がどれほどパフォーマンスに影響するのかかが、この研究からみてとれます。
では、はじめていきます。

ウッドワードの研究

ウッドワードはまず、製造業者がどのように組織されているかを知るために100社の実地調査を行いました。彼女は調査チームと共に各社を訪問して、マネージャーにインタビューし、会社の記録を調べ、製造の現場を観察しました。その集めたデータは、広範囲な構造の特徴(スパン・オブ・コントロール、マネジメントの階層数)やマネジメントスタイルの特徴(書面によるコミュニケーションか、口頭によるコミュニケーションか、報酬の使い方はどうか)、また、その会社の商業的な成功の度合いを示すデータにもおよびます。

ウッドワードは、その100社を技術の複雑性に従ってグループ分けをしました。技術の複雑性は製造プロセスが機械化されている程度を表します。技術の複雑性が高いということは、作業の多くが機械で行わているということであり、逆に低いと、労働者の生産工程で大きな役割を果たしているということになります。このグループ分けは以下のようになります。

グループ1:小パッチでの生産
1、顧客の注文に応じる単一製品の製造
2、技術的に複雑なものを一つずつ生産
3、大型装置を段階を追って、組み立てる
4、小パッチ単位での生産
5、大パッチ谷で部品を生産したあと多様に組み立てる
グループ2:大パッチでの生産
4、小パッチ単位での生産
5、大パッチ谷で部品を生産したあと多様に組み立てる
6、大パッチ単位での組み立てライン方式
7、大量生産
グループ3:連続工程生産
7、大量生産
8、連続工程生産に大パッチ単位での大量生産を組み合わせたもの
9.パッチ単位での化学物質の連続生産方式
10、液体、ガス、固体の連続的に流れる生産

※重複あり
※数字が上がるごとに技術の複雑性は高くなる

グループ1では、顧客の特定のニーズに応える少数の注文品の製造、組立てをする顧客別作業が多くなります(例:ピアノ製造)。グループ2では、自動車の組み立てラインが具体例となります。グループ3での具体例は、石油精製工場、原子力発電所などがあります。

この技術による分類は、いくつかの示唆を与えてくれました。
例えば、マネジメントの階層とマネージャーが占める比率は、技術的な複雑性が高くなるほど、増えていることがわかりました。また、スパン・オブ・コントロールや公式化された手順、中央集権化といった特徴は、大量生産技術には多く見られ、ほかの技術にはみられませんでした。これは作業が標準化されていると理由からきています。単位生産と連続工程の技術には、機械を運転するための高度の職人と、移り変わる条件に適応するための口頭のコミュニケーションを与える必要があるため、このような特徴はあまり見られませんでした。さらに、単位生産と連続生産のマネジメントシステムは有機的だったのに対し、大量生産では、機械的なマネジメントシステムを取っていました。つまり、単位生産と連続生産は手順が少なく標準化されていないのに対し、大量生産では標準化された職務や公式化された手順が多いという特徴があるということです。
このように技術に関するウッドワードの研究は、組織構造に新しい洞察を与えました。

戦略、技術、パフォーマンス

もう一つの考察として、ウッドワードは組織構造と技術との関係を商業的な成功と照らし合わせて比較し、成功している企業は相互補完的な組織構造と技術を持つ場合が多いことを発見しました。成功している企業の組織的な特徴の多くは、技術分類の平均に近い企業でした。
このウッドワードの研究結果は、今日の企業にとって何を意味するでしょうか。それは、戦略、組織構造、技術との整合性をとらないと企業の成功は難しいということです。例えば、コストパフォーマンスをねらう企業は、効率性を重視した組織構造、技術を採用しなければならなければ、高いパフォーマンスは期待できないということです。
現在では、グローバル化が進み、それだけ市場の変動は激しく、製品のライフサイクルも短くなり、消費者はますます賢くなっています。戦略を支援する技術の採用を怠ったり、新しい技術を採用しても戦略をその技術に整合させなかったりしたのでは乏しいパフォーマンスしかあげられないでしょう。



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