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戦略と人的資源管理活動

戦略と人的資源活動の関係性には、大きく分けて3つの考え方があります。

普遍的な人的資源管理活動

どんな企業でも通用する人的資源管理活動があるという考え方を、普遍的パースペクティブ(universalistic perspective)と言います。この考え方は、好業績に対する調査から見出されたものです。好業績企業はそれぞれ異なる戦略持っていたのですが、共通する人的資源管理を行なっていることが見出されました。

普遍的な効力を発揮する人的資源管理活動としては、雇用の保証、慎重な採用、権限の委譲、業績に応じた報酬、幅広い教育訓練、待遇の平等化、情報の共有などが挙げられます。これらの活動に共通するのは、従業員を信頼・尊重している点です。これらの活動は、従業員に対する信頼・尊重をすることで、企業に対する貢献を上手に引き出しているのです。

企業の戦略に応じた人的資源管理活動

企業には、それぞれ異なる戦略があり、事業部や職能もそれぞれ異なる戦略を持っています。そうした戦略の違いに応じて必要となる人的資源管理活動も異なるという考え方をコンティンジェンシー・パースペクティブ(contingency perspective)と言います。この考え方を、戦略的人的資源管理の中でも垂直的適合を重視したものです。

戦略を実行するために必要とする従業員の行動を、役割行動(role behavior)と言います。企業が戦略を実行するためには、必要な役割行動を引き出す人的資源管理が必要となります。

例えば、革新的な戦略を持つ企業では、従業員の役割行動として、高い創造性の発揮、高次元での協力、リスクを引き受けることなどが必要となります。そうした役割行動を引き出すために、集団としての業績評価、幅広い技能の開発、同僚間での公平な報酬などの人的資源管理活動が必要となります。

人的資源管理活動内の整合性

人的資源管理活動は、企業の戦略と適合したものである必要があります。しかし、それぞれの活動が矛盾しているものであれば、従業員は混乱してしまいます。例えば、長期間にわたる技能の習得を促す教育訓練を実施しながら、短期的な成果を強く求める評価制度を導入している企業がいえるでしょう。そのような企業では、従業員は長期的な視点から企業を身につければいいのか、あるいは短期的な成果が出やすい仕事に取り組むべきなのか、わからなくなってしまいます。

そのため、人的資源管理は戦略を実行するために一貫したものものでなければなりません。この考え方をコンフィギュレーショナル・パースペクティブ(configurational perspective)と言います。この考え方は、垂直的統合だけでなく水平的統合も重視したものです。

3つの考え方の関係

この3つの考え方を整理するためには、人的資源管理活動を二つに分類する必要があります。一つ目は、基盤となる活動です。人的資源管理活動の中には、普遍的に有効な基盤となる部分があります。それは、普遍的パースペクティブによって明らかとなった、従業員に対する信頼・尊重です。具現化した活動は、どのような戦略を持つ企業にも対応可能なものになります。

二つ目は、表層の活動です。表層の活動は、企業内外の状況に大きく影響を受けます。企業の戦略は、環境の変化に応じて変化していきます。そうした変化に対応できなければ、企業全体の業績は悪化し、企業としての存続が危ぶまれることになります。つまり、企業は戦略を持つことで、企業としての存続を図っているのです。人的資源管理活動も、そうした戦略に対応する必要があります。

この二つに分類すると、基盤となる活動は普遍的に必要となりますが、表層の活動は企業ごとに異なると言えます。つまり、人的資源管理には、従業員の利益を重視した基盤となる部分と、企業としての利益を重視した表層の部分があります。戦略的人的資源管理の最大の課題は、この両者のバランスにあります。

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