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活気のある1990年代

今回は、アメリカ経済の活気づいた1990年代の状況について紹介します。
この当時のアメリカは、産業展開の動きがダイナミックなものでした。
アマゾンやマイクロソフトが誕生したのも、このときであり、学生起業家の活躍も見られたのもこのときです。このタイプの起業家はテクノロジーに精通した学生でした。では、始めていきます。

1990年代になると減速していたアメリカ経済が大きく回復し、ふたたびグローバルリーダーに返り咲きました。
この繁栄には、内的要因と外的要因の二つに起因します。
まず、雇用の増大です。雇用は、1995年から2005年の間に1800万の新規雇用が生み出されました。そして、アメリカの経済成長です。アメリカの生産性は年率2.5%で上昇し続けました。最も関連するには、アメリカの研究集約的な産業において確固としたリーダーシップを獲得したという事実があります。宇宙航空、医薬品、コンピュータ、通信設備、工作機械、精密機械において、世界シェアの20%以上のシェアを獲得していました。

このようなアメリカの成功要因を決定づけたのは、国内市場の規模、国際競争の圧力、そして効率的な制度的な枠組みと柔軟な資本市場の存在がありました。公共調達政策における取組みと、知的財産権と科学研究の支援は、アメリカの競争優位の源泉になります。
このアメリカの成功は、国際貿易と海外投資の増加に反映されていました。
通信、金融サービス、ビジネスサービスといった知的集約型のサービス産業は、ハイテク製造業と同じようなパターンを描き、アメリカのサービス産業はGDPの三分のニを占めるようになります。

外的要因として、アメリカのそれまでもよりも大きな貿易の増加とクリントン政権下での政策による企業活動の支援が挙げられます。クリントン政権は、企業家の創造性を支援し、それによって生産性と国富を増大させるためのインフラ設備、通信ネットワーク設備の増大を行いました。これらの政策は、民間投資の増大を促します。

ニューエコノミー

この外的要因は、企業家活動の活性化に好都合な枠組みを構築します。労働集約的産業は徐々に消え去り、高付加価値活動に対する新しい投資が導かれました。これらの新しい投資のかなりの部分は、ICT、エレクトロニクス、マイクロエレクトロニクス、コンピューター、バイオテクノロジー、インターネットの開発などの技術集約的、知的集約的な産業へと投資されました。
これによって、アメリカの労働生産性は、1995年から2000年の間に2.5%以上の上昇が見られました。
ニューエコノミーは多くの雇用とスタートアップ企業を、ICT産業で創出しました。1985年から1995年の間に毎年130万前後の新しい企業が設立されました。
また、革新的な金融手段のであるベンチャーキャピタルが、技術集約的な産業での起業を支援し、持続させました。ベンチャーキャピタルは、シリコンバレーの何百もの新しいベンチャー企業の成長を促しました。
1970年代に設立されたアップル社も小さなスタートアップ企業の一つでしかありませんでした。創設者であるジョブスは、インテル社の前社員のベンチャーキャピタルにアプローチをし、9万ドル前後の投資をしてもらいました。また、経営アドバイスも受けていました。
またジョブスは。ビジネスにコミットする有能な経営者と技術者を引き付けて雇用するため、ストックオプションを付与するやり方を導入されました。ストックオプションとは、株価が上昇した時のキャピタルゲインを実現するために、一定の低価格の自社の株式を購入する権利のことをいいます。これによって、経営者はスタートアップ企業に深くコミットするようになりました。
ハイテク産業で設立されて間もない企業は、リターンで不確実で、しかも実現が遅れる特徴があるため、かなりの金融資源を必要としました。預金保護ルールが一部緩和されたのち、機関投資家とな年金基金は巨額の資金をニューエコノミーに投資し始めた。1960年代末には30億ドルがベンチャーキャピタルが投資され、このうちに機関投資家によるものでした。ベンチャーキャピタル投資の規模ひゃ1990年代から安定的に成長しつづけ、1996年には100億ドル以上になりました。彼らは、先進的サービスを開発する企業への投資へと向かいました。
2000年代の俗にいう「ドットコム・バブル」の劇的な収縮にもかかわらず、ニューエコノミーは、産業全般、特に消費者と密接に関連した産業の競争構造を変革した。インターネットプラウザはを開発したネットスケープ社はナスダックですぐに上場するような出来事が置き、この産業が小売システムとグローバルな商取引に変革を起こすかもしれないということを実証しました。
しかし、2001年に起きた株価の大暴落により、ニューエコノミーの企業たちは多大な損失を起こしました。しかし、アマゾン、ヤフー、イーペイ、AOLといった企業は、この市場のなかでも利益を得る事ができ、彼らの主導的地位は確固たるものになりました。
ニューエコノミーのもう一つの特徴として、静態的であるという産業にも根本的な変化を起こしたことです。新技術は、流通に深く作用し、販売および在庫管理にもITが使われるようになります。こういった技術がウォールマートのような企業の成功を支えました。

巨大企業のリエンジニアリング

ニューエコノミーのような企業の動きはアメリカの復活のほんの一部でしかありませんでした。実際にこの復活を支えたのはアメリカのグローバル経済の最前線にあった企業の徹底したリストラクチャリングによるものでした。
1990年代半ばに、アメリカの巨大産業の三分の二は、「リエンジニアリング」の徹底的なプロセスに着手していました。この用語は、大規模なレイオフと、戦略と組織構造の大きな変化を意味していました。これらの変化は企業に競争への強い圧力があります。
有効な方向転換戦略をとる能力は、産業リーダー間で異なっていました。
このことは長い間競争をしていたGEとウエスチング社の事例から見る事ができます。両者は、1970年代初めにはアメリカ大企業の上位20社にランクインしていました。しかし、時が経つにつれて、両者とも緊急のリストラクチャリングが必要であることを認識しました。ここに、戦略の分かれ目があります。ウエスチング社はリスクのある不動産貸付や投資銀行といった事業への多角化をしました。これが結果的に多額の損失をもたらしたのです。
一方GEは、100前後の事業を売却し、その資金をつかってハイテク産業へお進出していきます。これが功を奏し、GEは1300億ドルの収入のある「多角化された技術、サービス、製造企業」になることができました。
この二つの例が示すように、確固たる地位をもつ老舗企業であっても安泰ではないということが明らかになり、アメリカの大企業は、新しい競争ルールのなかで戦っていく必要がありました。

一方、ニューエコノミーでは、才能ある起業家が事業を起こし、短期で巨大な企業帝国を築き上げる機会つくりあげていました。これには、マイクロソフトやアップル、アマゾン、インテルなどが含まれます。彼らの成功物語を可能にしたのは、彼らの企業家的素質とベストな資金調達に関するものでした。
一つ目は、科学とハイテクの知識が、創業者が持っていたという点です。ニューエコノミーの企業家の多くは、コンピューターサイエンスあるいはエレクトロニクスを大学で学んでいる学生あるいは、卒業生でした。
もう一つは、事業初めてまもない段階にあるプロジェクトが、適切な金融資源を市場から得ることが容易になった点です。それは、ベンチャーキャピタル企業を通じて行われ、彼らも技術者か企業家によって創設され、そして経営されていました。技術とスキルを併せ持つ資本が関連し、アメリカのニューエコノミーを支えていました。

投資家資本主義

1990年代の特徴的な金融の動きとして、機関投資家がアメリカ株式を、個人や家族が保有する株式を上回ったということが挙げられます。
この新しい「有権者」は、個人株主とは全く異なった期待をしていました。投資信託と年金基金を行っている投資機関は、株主価値の短期的な最大化を指向していました。このような資金源の圧力が企業活動に影響を与えていたことは間違いありません、
単一のファンドが単一の企業に大きな利害関係をもつことはめったにありませんでしたが、1980年代になると、世界の工業の資本を機関投資家が四分の一を所有していたこともあり、相当の影響力をもっていたことは間違いありません。
彼らの投資を行ううえで、経営陣に求めるものは、効率性と価値創造の追求でした。彼らがもっていた「株主価値」の哲学は、主要企業のマネジメントのほとんどの意思決定、行動、そして戦略を駆り立て、これらは効率性、業績の復活、そして情報公開の点である程度のプラスの効果をもたらしました。「価値創造」の協調は、ストックオプションのような新しいインセンティブをもたらし、企業は、自分たちの作った利益の多くを株主に向けました。それは配当と自社株買いで通じて行われ、自社株買いには株式を高く維持できることと、経営陣にストックオプションを通して利益を得させるという二重のメリットがありました。

往々にしてゲームの新しいルールとガバナンスの必要条件は、経営者が短期間に株価を高めることをめざす強いインセンティブに帰着します。この結論は、内部資源を競争源とする企業の経営をひどく傷つけたと同時に、不正会計のような詐欺行為をもたらします。
これを問題視した政府は、上場企業のコーポレートガバナンスの規制強化を目的とした「企業及び監査の説明責任に関する法」を2001年に制定しました。これによって、投資家、労働者双方の保護が必要だという考えが浸透しました。

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