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戦略的人的資源管理

戦略的人的資源管理とは

全ての企業はそれぞれ異なる戦略を持っており、戦略を無視して闇雲に優秀な人材を集めても、企業として機能しない場合があります。反対に、学生から見ると就職先として人気がない企業の中にも、企業として戦略を実行するために必要な人材を育て上げ、優良企業として世界的に認められている企業もあります。戦略的人的資源管理(Strategic Human Resource Management:SHRM)とは、人的資源管理を企業の活動全体から捉える考え方です。

戦略的人的資源管理の考え方には、3つのポイントがあります。

・企業の戦略との関係
・人的資源管理のそれぞれの活動の整合性
・企業全体の業績との関係性

この3つのポイントの中でも、一つ目と二つ目に関しては適合という概念が重要になります。適合とは、ピッタリと当てはまっている状態です。戦略的人的資源管理では、企業の戦略と人的資源管理活動がピッタリ当てはまった状態で、さらに人的資源管理活動同士がお互いにピッタリ当てはまった状態であれば、企業全体に好業績がもたらせると考えられています。

企業の戦略との関係

企業の戦略は、その企業が取り組むビジネスの種類や数を決定します。それに応じて、その企業に必要となる人的資源管理活動も決まります。比較的安定した製品を供給している企業では、安定して供給する従業員の育成が重視され、一方で、変動的な製品を供給する企業では、外部よりリソースを獲得する従業員の育成が重視されます。一つのビジネスを行う企業では、スペシャリストが必要ですし、複数のビジネスに取り組む企業にはゼネラリストが必要になります。このように人的資源管理はkぎょうの戦略に応じて決まります。

戦略的人的資源管理の特徴の一つは、企業の戦略との関係性を重視することです。このような人的資源管理と企業の戦略の適合のことを、垂直的適合(vertical fit)または外的適合(external fit)と言います。

それぞれの活動の整合性

企業の戦略によって、必要となる人的資源管理活動は決まります。しかし、それぞれの活動がバラバラであれば従業員は気持ちよく働くことができません。反対に、それらが矛盾なく整合した状態であれば、従業員は快適に働くことができます。

例えば、長期的な雇用が約束され、企業の中で昇進できる見込みがあり、勤続年数に応じて報酬が増えていくのであれば、従業員は家族同様の企業一員として仕事に参加することができます。しかし、報酬に関してだけは個人の成果に応じて支払うことにすれば、同僚との関係が悪化して家族同様の関係が崩れてしまうこともあります。

戦略的人的資源管理のもう一つの特徴は、人管理の様々な活動との整合性を重視することです。このような人的資源管理の適合のことを水平的適合(horaisonal fit)もしくは内的適合(internal fit)と言います。

企業全体の業績との関係

人的資源管理が企業の戦略に応じて決定され、しかも全体として整合性を持つようになると、一人一人の従業員は戦略を実行しやすくなります。つまり、従業員は自らの能力を思う存分に発揮できるようになり、企業に対して適切な人的資源管理活動を提供すれば、欠勤率や離職率が低下し、不要なコストを削減できる効果も期待できます。

こうした一人一人の従業員の成果が高まれば、企業全体として高い業績を上げることができます。一人一人の成果が小さなものでも、それらがまとまれば企業全体として高い業績を維持することができるのです。そうすれば、ライバルとなる他の企業よりも市場において優位なポジションを得ることができます。これを競争優位の獲得と言います。つまり、二つの適合を満たした人的資源管理活動は、企業に競争優位をもたらすのです。

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