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行き過ぎた多角化がもたらす末路

今回は、行き過ぎた多角化についてのお話をしたいと思います。自分たちがやっている事業とは関連のない企業との買収や合併を行い、複数事業部制のことをコングロマリットといいます。企業のコングロマリット化は、アメリカで1960年代から1970年代まで流行った現象です。コングロマリットについては今回は深く説明はしませんが、コングロマリットを行き過ぎた企業の末路について紹介したいと思います。結論からいうと、関連のない事業を実施しすぎると内部から崩壊します。この崩壊は、アメリカのRCAという企業の歴史からみることができます。

RCAの末路

RCAはラジオ産業のパイオニア企業でした。この企業は第2次世界大戦中に生じた需要をフルに活用することができました。ある部分それは、RCAがもっていた数多くの特許によるものでした。新しい特許は、RCAのオリジナルの商品と関連性のない、レーダー、ソナー、他のエレクトロニクス装置に関するものでした。これらの特許は軍用計器の発展と結びついて、RCAはアメリカ最大の企業にまで成長することを助けます。また白黒通信の技術を開発し、RCAは新興のテレビ産業でも一番手企業になりました。
1960年代にRCAは絶頂期を迎えます。そして1970年に転換期をむかえます。その当時CEOであったデビット・サーノフは引退し、息子である、ロバート・サーノフに経営権を引き継ぎました。彼は自社の優位性のあった電子機器系のみならず、新しい分野での多角化を戦略として掲げました。1968年から78年まで、同社の利益目標を達成するため、ハーツ社(レンタカー)、バンケット社(冷凍食品)、コロネット社(敷物)、ランダム・ハウス(出版社)、その他小規模企業を買収します。これによって、幅広い事業をもつコングロマリットになります(エレクトロニクスの売上は全体の25%以下)。そして、財政面と産業面での危機が訪れます。まず、多くの企業買収により多額の負債を抱えることになりました。それに加え、1970年代にもなると、ヨーロッパと日本企業とのグローバルな競争が始まりました。この危機に対し、RCAが行った行動は、事業の一部売却です。その事業は、自社の大本であったエレクトロニクスに関するものでした。そして、1978年に金融持ち株会社であった、コマーシャル・インヴェストメント・トラスト社(CIT社)を買収し、さらなる多角化戦略を再開するための試みが行われますが、これもうまくいかず、巨額の負債を抱えたままの状態でした。RCAがもった巨額の負債(最大で約26億ドル)はコアコンピタンスであったエレクトロニクス商品の質の悪化を生み、ついには倒産へと追い込みました。1986年にGEによって買収されたのち、GEはRCAを解体し、セグメントごとに事業を廃止するか、売却を行いました。アメリカの民生用電子機器産業で圧倒的な強さを保っていたRCAは、多角化戦略を展開したものの、イノベーションの不充分さを補うことができず、多額の負債と共に、アメリカ産業から消えてしまいました。


いかがだったでしょうか。RCAの例から、いきすぎた多角化は、最終的に消滅を引き起こすことがわかります。このコングロマリットがうまくいかない理由として、二つの理由があると言われています。

①技術的なプロセスとコングロマリットを構成する各企業が事業を行っている様々な市場を理解する能力がないか、あるいは理解できないトップ・マネジメントの存在
②何十もの事業部からなる集合体を管理することは、ほぼ不可能であるということ

様々な市場で多角的に勝負することの難しさは、アメリカの経営史が物語っています。日本の例で考えると、ライザップグループの多角化の失敗がこの例と類似しています。コングロマリットについては次の機会深掘りしますが、多角化戦略にはそれ相応の注意が必要です。



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