寄り道
毎日せわしなくしているので、駅と自宅の行き来の時に寄り道することはほぼない。
ところがこの日は途中にある神社に入ってみたくなった。
髪を金色に染めた体格のいい若い男性、少し腰の曲がったおばあちゃま、いろんな人が1人ずつ並んで参拝してる。
日本は信心深くない国だと思っていたがそうでもないなと。
私も大切な人のことを祈った。
この寒い中、梅の花が咲いていた。
幼い頃、門くぐり遊びで「梅とさくらとあわせてみれば、梅はスイスイだまされた、さくらはよいよい褒められた…」って歌っていたので、なんとなく梅は桜より格下だった。
でも今は違う。苔むす老いた幹から出るひと枝ひと枝にポツポツ可愛らしい花と蕾をつけ、凛とした佇まいで、神社の中で静かな存在感を放っている。
この歳だから、梅のよさがしみじみわかる。
小学校の帰りに、よく寄り道して帰っていた。
春の田んぼで、れんげやシロツメクサが咲き乱れる中、ランドセルを放り投げて首飾りを作って遊んだ。れんげの蜜もたくさん吸った。
菜の花の葉っぱの裏をめくると、小さな黄緑色のモンシロチョウの卵がついていて、菜の花とモンシロチョウはいつもセットだった。
初夏には広場の大きな水たまりが真っ黒になるくらい発生した何百匹のおたまじゃくしをすくって遊んだ。
真夏は蝉の騒音の中で、おしろい花の種子を潰して、友達と白い粉を顔に塗りあったり、真っ赤なサルビアの花を見つけては片っ端から引き抜いて、蜜を吸ったりしていた。
秋には熟したからすうりの実を靴でべちゃべちゃに潰して遊んだ。
田んぼの脇に生えているじゅず玉の実をたくさん取って帰って、母に端着れでおじゃみ(お手玉)を作ってもらい、学校の休み時間に遊んだ。
稲刈りが終わって田んぼに積まれた藁で友達と隠れ家(「基地」と言っていた)を作り、藁の匂いのする狭い家の中で宿題をして、おしゃべりをして、遅くまで過ごした。
いつもそばには自然があり、四季の変化を感じながら自然と触れ合い、五感が鍛えられていたんだな〜と懐かしく思い出す。
あれがワクワクの原点だった。
寄り道したことからいろんなことを思い出し、あの頃に心が戻ってワクワクした。たまには寄り道もいいな。
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