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ファーストラブ は結局誰と誰のものだったのか

直木賞受賞作だったのがきっかけで手に取った。

内容とテーマは結構重い。坂口健太郎さんが帯を書いているのは、この本が出た時に偶然ドラマで無罪を訴求する弁護士の役をしていたからなんじゃないかなと思うが、内容とは直接関係がない。

ネタばれにならないように書くのはすごく難しいのだけど、自傷は伝播するのかもしれないし、虐待と思わずに虐待し続けることもあり得る。
とても大切だと思っていた人が嫌悪感しかない行動をとっていることを知ったことが原因で精神のバランスを崩す人もいれば、大切な相手なのに特別過ぎて肝心な時に思いを遂げられないこともある。

そんな、人の弱さというものが実は身近にあるのかもしれないということと偶然のいたずらで一生を台無しにしてしまう可能性があるということをとても想像して入り込みやすい文章で書かれていて引き込まれた。伏線も多く、回顧録が登場人物の心理に影響しているので、脳内で自分が作り上げた映像に実際の映像作品を鑑賞したときのような臨場感の錯覚を覚えた。

それでも、自分を含めて世の中の大半の人間は虐待や自傷、傾倒、依存症といったものから、もがきつつもバランスを保っていると信じたい。

そんな気持ちのする本でした。

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