記憶に残る俳優たち1 【ショーン・ビーン】
大好きな映画に登場する俳優について紹介する文章を書きたいなと思った時に、まず浮かんだのがショーン・ビーンであった。現在、六本木をメインに開催中の東京国際映画祭に出品されている、『ポゼッサー』の予告編を観て久々に姿を見た事もきっかけではある。だがそれ以上に、私がメジャーな大スター以外で「役者としてこの人が好き」と初めて認識したのがショーン・ビーンであったと記憶している。
出会いはLOTRのボロミア役
おそらく、彼にとって最も世界に名の知れた作品は2001年の『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』のボロミア役だろう。世界を滅ぼす力の指輪を捨てる旅の仲間の中で、指輪の持つ魔力に抗えず誘惑に身を委ねてしまうという、人間的弱さを持ったキャラクターが共感を呼んだ。私も、あまりに英雄らしいアラゴルンよりも、人間らしいボロミアを応援していた。
弱い面ばかりではない。ゴンドール国の代表としての誇りや、自国の民を守ろうという責任感に溢れ、旅の途中ではホビット族のメリー&ピピンと仲良くしている場面もある。だからこそ、映画が進行するに連れて「ボロミア、誘惑に負けないで!」と応援したくなってしまうのだ。
悪役の時の表情は鋭いが、本来英国紳士であるショーン・ビーンの声は穏やかで、瞳はグリーンでとても深く、ジェントルマンな余裕を感じさせる。
よく死ぬ俳優ショーン・ビーン
「よく死ぬ俳優」No.1としての称号を我が物にしているショーン・ビーン。称号からしてネタバレというのはいささか問題だと思うが、ファンとしてはこれも嬉しいのである。
出演作を見る度に、「死なないでくれ」と祈る気持ちと、「今度はどんな死に方を見せてくれるんだい?」という期待感が同居する。
地上波でもお馴染み、『007/ゴールデンアイ』では、なんと名誉なことに"殺しのライセンス"006を得て、映画の冒頭ではジェームズ・ボンドとの共闘を見せる。そして、"006は二度死ぬ"のである。
ロバート・デ・ニーロ、ジャン・レノといった大スター共演の『RONIN』では、かなりダサいショーン・ビーンが見れるが、これがボロミア役に繋がっているような気もする。
ブラット・ピット主演の超大作『トロイ』では、かの有名なオデュッセウスを演じる。やはりショーン・ビーン、鎧を身につけて剣で戦う威厳のある人物が似合う。本作では語り部も務めており、美声を集中して聴けるのも嬉しい。
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』ではゼウス役で、遂には神になってしまったショーン・ビーン。
このように90年代〜00年代の映画界は、ショーン・ビーンの天下であった。
彼のために用意された小ネタがたまらない『オデッセイ』
リドリー・スコット監督の2015年の作品、『オデッセイ』。マット・デイモン恒例の置いてきぼりになる映画である。大好きな作品なのでこれについても語りたいところだが、本記事の主旨とズレるので割愛する。
本作でショーン・ビーンは、NASAの要職でとてもクルー思いな人物を演じる。主人公マット・デイモンを火星から救出するためにNASAで会議が行われるのだが、ここでぶったまげたのが「エルロンドの会議」に例える台詞が飛び出すことだ。これは『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』で、力の指輪を破壊するために旅の仲間が結成される重要な会議であり、その場面でショーン・ビーンはソロでの長台詞という見せ場がある。当然、本人も周りも意識していただろう。撮影現場に居合わせたかった。
このシーンを振り返ってみて思うのは、トム・クルーズやジョニー・デップのようなビッグネームではないが、ショーン・ビーンという俳優と彼が演じたキャラクターが確実に映画史に刻まれているということ。そしてこの『オデッセイ』で演じたキャラクターは、素の彼に近いんじゃないかと勝手に思ってしまった。
今後の活動
ひとまず冒頭で挙げた通り、ブランドン・クローネンバーグ監督『ポゼッサー』が現時点でショーン・ビーンの新作である。
61歳になった彼だが、ぜひ歳を重ねたこそのいぶし銀的な魅力をまだまだ存分に発揮していただきたい。そして個人的には、ハリウッド映画で消費されるよりも、英国作品での気高い役柄なども見たいなと思う。
以上、ショーン・ビーン大好きな人間による紹介でした。
次回をお楽しみに!
<タイトル画像出典>
photo credit: GabboT <a href="http://www.flickr.com/photos/57638320@N00/21361983221">Martian PC 16</a> via <a href="http://photopin.com">photopin</a> <a href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0/">(license)</a>
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