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メキシコ・グアダラハラへの旅 Viaロサンゼルス

(写真はロサンゼルスの全米日系人博物館の入り口ゲート、2023年2月1日)

ずっと行ってみたかったメキシコ中西部グアダラハラ(Guadarajara)市のオスピシオ・カバーニャス(Hospicio Cabañas)と呼ばれる中世の救貧院を訪れるためにメキシコを訪れる。メキシコはおろか、北米大陸に行くのも初めてである。

現在日本からメキシコ向けの直行便の航空機はコロナの影響により飛んでおらず、アメリカなどを経由して渡航することになる。今回はLCCのジップエアーを利用して、ロサンゼルス経由での渡航を試みた。

早朝にロサンゼルス空港に到着すると、午後15時のグアダラハラ向けフライトまで時間があった。アメリカ本土は初めてであったし、乗り継ぎのために必ずしも時間が十分になかったので市内の観光に出てみる。空港からシャトルバスで市内のユニオン・ステーション(片道12ドルくらい)へと出てみるが、駅の周辺に繁華街があるという感じでもなかった。とりあえずリトル・トーキョー方面に歩いて行って、全米日系人博物館に行ってみる。ユニオン・ステーション構内や駅のロータリー、路上にはホームレスが多めで、あまり治安がよくなさそうな雰囲気であった。

午前11時から開館だったが、午後の飛行機まであまり時間がなかったのでライトに構内をちょうど一年前に作家・山崎豊子の、日系米国人をテーマにした小説『二つの祖国』を読んでいたので実際の展示品を見ることに集中した。実際に日系人と言っても移住した時期(一般的には19世紀〜20世紀)や、日本での出身県(広島県や沖縄県など南寄りの都道府県が多いイメージ)も異なり、日系人が一時期人口の多数を占めたハワイか、白人社会に適合して暮らさざるを得なかったアメリカ本土かによっても社会事情は大分異なるようだ。

同館の特別展示”Sutra and Bible -Faith and the Japanese Americans World War II Incarceration(ストラと聖書-信仰と日系アメリカ人の第二次世界大戦時の収容)”ではSutra(仏典)を中心とした日系人たちの信仰生活に焦点が当てられており、キリスト教社会に影響を受けた様子が感じられた。

2階へと上がると、日系人たちの収容の実態や、1988年のレーガン大統領による謝罪をテーマにした常設展示が続いている。これらの内容は上記『二つの祖国』で克明に描写されているので詳細は省くけれども、現地の小学生の一団(多くが白人系だったと思う)が強制収用に関わる展示ブロックで校外学習に取り組んでいたのが目を引いた。横で耳を傾けていると先生が記念館のコンセプトに忠実な説明をしていたため比較的リベラルな思想の学校のようにも感じたが、アメリカ合衆国がアメリカ合衆国市民(日系アメリカ人)に対して背信行為を行ったこと、それに伴った一部アメリカ市民の苦難を共感をもって振り返ろうとするかのような雰囲気があった。日本でこれに関する報道に接すると、アメリカ人が日本人に対して謝罪を行ったかのように感じられるが、実際にはアメリカ合衆国がアメリカ合衆国市民(の一部である日系米国人)に謝罪をしていたのである。レーガン大統領による謝罪はこの文脈で捉えらえるべきである。

さて午後の飛行機への時間がないので、足早にロサンゼルス空港に戻る。グアダラハラ行きの飛行機はViva Aerobusというメキシコの航空会社だった。カウンターでチェックインしようとすると問題が起こった。カウンターの女性曰く、1)メキシコに渡航する外国人かつ2)メキシコのパスポート、永住者証明書を持たない人間は税金としてUSD34.21を払わなければならないという。でもその税金の税目は何だと聞いても、答えてくれない。

日本とメキシコの間では観光ビザが免除されているからそんな税金を払う必要があるとは思えない。しかし、同カウンターの従業員たちは帰路のメキシコからの出国時に必要だからと支払いを求めてくる。途上国は税制が細かいことが多いのでそんなことも多いのかしら、コロナや移民の問題でアメリカ-メキシコ間の陸上国境は閉鎖されているので、その影響か?、米墨の間には複雑な入国規制があるのか?でも日本は関係ないよな?などと考えつつも、飛行機に乗り遅れたくなかったので払ってしまった。後でイミグレ、大使館、航空会社と交渉して取り返すことができたがなかなか大変だったので、安易に承諾せず「理解できなかったのでNo」で通せばよかったのである。

搭乗すると周囲は完全にスペイン語が飛び交う状況になった。税関の携行品申告書すら英語版はなく、隣の席に座っていた英語が分かる青年に教えてもらいながら記入した。

グアダラハラ空港に着くと初中南米の雰囲気に浸る間もなく今度はタクシーのトラブルだ。

メキシコではタクシーが危険で、未登録の白タクに乗車してしまうと、ドライバーが強盗に豹変する、誘拐されるというリスクがあるらしい。当地ではドライバーへの評価が可視化される、Uberのタクシーアプリを使って配車するのが最も安全で快適な方法らしい。しかし私はこのアプリを使い慣れていないこともあって、まんまと間違えて配車していないタクシーに乗ってしまった。

グアダラハラ空港から市内中心部までは30分くらい。20分くらい行ったところでやっと状況が分かりヒヤッとしたものの、幸い白タクではなく空港のタクシー会社だったので事なきを得た。料金は通常配車と比べて6割増くらい取られたが夜遅かったのでマシである。(そういえばUber上で行き先を登録しているのに改めて行き先を聞かれたり、車内がそこまで清潔ではなかったので少し違和感はあった)配車アプリを利用する際には、面倒でも車のナンバープレートや車種の確認が必須である。

そんなこんなでホテルに着いたのだが、夜遅かったので明かりが落ちていて何とも不気味である。確かに”ダウンタウン”と聞いていたが、真っ暗なのでタクシーから出ることに躊躇した。しかし、ホテルからおっちゃんが出てきてこの場所で間違いないことを確認することができ、日本を立って丸一日以上をかけてやっと投泊することができた。

やれやれ、これは中々一筋縄では行かなそうな、メキシコ旅行の幕開け…

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