「ラヴェル」ヴラディーミル・ジャンケレヴィッチ

有名な『水の戯れ』(1910年)は、これに反して、想像力の満ちあふれた作品である――書法の独創性によっても、そこから立ちのぼる心をそそる詩情からも、たしかに三曲のなかで一番驚くほどみごとな作品である。
ほっそりしたいくつかの5度、4度が右手の清澄なアルペッジョの下でもの憂く浮動する。明晰な、水晶のような、透明なこの響きは、 リストのロマン主義やドビュッシー風印象主義と同時に、さらにそのうえガブリエル・フォーレの『バラード嬰へ調』の魅力をうけつぐが、 またしかしとくにラヴェル的な雰囲気をつくっている。不協和な保続音をもち、筆致を変え、 半音階法をふくみ、複調の疑いさえある和声は、ときおり奇妙にも、『ベリ』(デュカ作)や『火の鳥』 (ストラヴィンスキー)の創意を前ぶれする。ということはしかし『水の戯れ』には生まれた日時のしるしがないということではない。むだな繰返しがあり、『鏡』よりずっとゆるみもある。黒鍵上で弱まり消えてゆくひじょうに柔らかいその第二主題、寂しい大きな公園における秋の心の悲しげで 憔侬した気分・・・・・・そこにはたしかに『アデライード』の作者にしては、はなはだ退廃的でたそがれた風景がある!

(見る人は音楽をこんな風に見ているのか)

わ〜い!😄