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沈黙のレジ前

出勤前に隣のコンビニでコカコーラを買うのが朝の日課。
今日は、僕の前にひとりの少女が並んでいた。少女の前の客の会計が終わり、彼女の番になった。彼女はペットボトルの麦茶と100円玉を差し出した。レジの女性がバーコードを読みとるとピッという音が無関心に響く。
126円と、液晶に映る。
まさかっ!と僕は思う。おそらく少女も、そしてレジの女性も。
しばらく沈黙する少女に、「百円じゃ買えないのよ。」と、優しく諭すレジの女性。言葉にされたことにより「100円では買えない」という事実は、"決定事項"として少女に突きつけられた。レジの女性の優しさは、皮肉にも無情さを助長していた。
少女の足がリズム良く地面をタップし始める。
「100円では買えない」という事実をその小さな身体いっぱいで受け止めようとするが、イラだちと不安を抑えらずに溢れ出したのだろう。
あと26円、、、。僕にとっては出せない金額ではない。ただ、"彼女にとって良い事"とは何だろうか。

時が止まったような沈黙の中で、僕は彼女の小さな背中を見つめながら考えた。

つづく

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