本節で、渋沢栄一先生は、武士道の本質が正義、廉直(れんちょく:
行いが潔白で、正直なこと)、義侠などの美徳に根ざしていると述べ、これが単なる士人社会に留まらず、商業者にも必要であると説きます。先生は、古い商工業者が武士道の価値を誤解し、道徳を軽視していたことを批判します。さらに、武士道と商業の成功は相反しないと強調し、孔子の教えを引用して、道徳を守りながら富と地位を得ることの重要性を説きます。先生は、日本の商工業者が道徳的観念を重んじ、信頼性を高める必要があると主張し、武士道の精神を実業に応用することで、日本が商工業の分野でも世界で競争できるようになると結論づけています。