渋沢栄一先生は、明治維新以降の商業道徳が文化進歩に伴わず退歩したとする一般の見解に必ずしも同意せず、商工業者の道徳観念と信用について現代と過去を比較しています。先生は現代の商業道徳が進歩していないことを認めつつ、それを改善する方法を探究し、道徳を物質的文明と同等に向上させることの重要性を強調します。また、日本の文化や社会構造に適した道徳観念の養成の必要性を説き、西洋の個人主義と比較して日本人特有の道徳観念を述べています。彼は日本の商業道徳の現状に満足していないとしながらも、商工業者間での道徳観念の強化と警戒の必要性を説いています。