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レノファなスタジアムの話(12)スタジアムは誰のもの?

さて、前回の話で、国が「スタジアム・アリーナ改革」として、街中への新たなスタジアム整備を後押ししているという話をしましたが、その中に「民間が参入している」という話がありました。
これを読んで、「え、スタジアムって県とか市が税金で作るんじゃないの?」と思われた方、いますよね。ある意味正解です。
が、税金の「使われ方」が変わりつつあるんですよね。

そんなわけで今回は、誰がどんなスタジアムを造ってどう管理すべきするのか、という話をしたいと思います。

従来型のスタジアム整備のデメリット

従来、スタジアムやら体育館(アリーナ)の整備をする主体は都道府県や市町村であることが大半でした。

この場合、スタジアム等の整備をする場合の原資は国からの補助金と地方交付税、都道府県・市町村の借入金(「地方債」と呼びます)が充当されることが多く、返済原資を含めて考えれば、スタジアム等の整備資金の元手は超ざっくり言って「税金」ということになっているわけです。

皆から集めた税金で整備するので、その使い道も「広く公平に」というのが基本になって、誰もが納得するような使い方にしなくてはならない、というのがある意味当たり前の話ではあるのですが、この「誰もが納得するような使い方」というのが曲者で、簡単に言えば「特定のチームや競技のための施設」を造るのがものすごく難しいのですよね。

例えば、Jリーグクラブが使う前提のサッカースタジアムを造る場合でも、「税金を使って(民間企業である)Jリーグクラブを優遇するのか!」「他のスポーツを差別するのか!」なんてことを言い出す人が必ずと言っていいほど出てくるので、そういう人相手にスタジアムの整備(=税金の使い道)を納得してもらおうと思ったときに、行政側が「サッカー以外のスポーツ(≒陸上)にも使えるようにする」という逃げ道を考えついちゃって、結果「球技の出来る陸上競技場」が増えたといった側面があったりするわけです。

体育館にしてもアリーナではなく「総合体育館」が増えていったり、ホールにしてもちゃんとしたコンサートホールではなく「多目的ホール」ばかり造られたのも似たような事情です。

ただ(これも以前触れましたが)スポーツを「する」側にとってはいろんな競技ができる「多目的な施設」で良くても、スポーツを「見る」側にとっては中途半端な施設となってしまうことが少なくないのですよね。
しかも、行政側に施設運営のノウハウを知っている人が少ない
なので、高額な建設費をかけた割に、人を集められるイベントの開催が限られて、施設の仕様に見合った有効活用がされない場合が少なくない。
これが最終的に「箱物行政」批判につながるわけです。

民間企業が関わるスタジアム

で、スタジアムやアリーナの整備・運用面で「行政の公平性」や「専門性の欠如」が足かせになってしまうのであれば、いっそ最初からスタジアムやアリーナなどの整備・管理・運営を民間に任せてしまった方が、民間の専門性のあるノウハウも生かせるし長い目で見てコスト削減にもつながることが考えられています。これが民間資金活用事業、通称『PFI』(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)というものです。

行政(役所)が考えるのは「ここにこういう目的の施設を作って運営してほしい」ということだけ。具体的にどのような施設を作って、どう運営していくのかは民間企業グループが提案してコンペを行う仕組みです。
基本的な仕様(場所とか規模とか)だけは決められていますが、あとは好きに考えていいわけですから、当然自分たちのやりやすい(将来的に運営しやすい)、使い勝手の良い施設が出来るというわけです。

今のスタジアム整備はこの手法を採っていることが多く、ミクニワールドスタジアム北九州とか、サンガスタジアム by KYOCERAなどはこの方法で整備されているスタジアムです。

「儲かるスタジアム」に

更にそこから一歩踏み込んで、その施設の利用料を取る場合、収益(儲け)が出たら、それを利益にしていいですよ、という仕組みもあります。
コンセッション』と呼ばれる仕組みです。

今までも、公共施設の管理運営を民間企業が受託するケースというのはあったのです(指定管理者制度)が、この場合は基本的な管理方針は全て行政(役所)の側が決めていました。
コンセッションがこれらと違うのは、行政側が施設の運営権を売る代わりに、「最低限のサービス水準さえ維持してもらえれば運営管理方針は企業が全部決めていい」し「施設運営で収益を上げるのも大歓迎」ということなんです。補修・改修も管理・運営する側の判断。
なので、例えばJリーグクラブが使いやすくするための改修なんてのも「スタジアムとしての収益を上げるため」という名目さえ立てば問題なく実施できるわけです。

でも、それって「民間が一から整備するスタジアム」と何が違うんだ?って思いませんでしたか?
確かに長崎のスタジアムプロジェクトは純民間ベースの事業ですし、パナソニックスタジアム吹田やヨドコウ桜スタジアム、ユニリーバスタジアム新富などは「民間で整備して市に寄付する」という手法をとっています。
ただ、行政が絡むことで、「必要に応じて行政と役割を分担する」というメリットが生じるのです。

理想を言えば、民間企業(サッカークラブ自身)が一からスタジアムを整備できればいいのでしょうが、日本の場合はどうしても「用地の確保」という点がネックになります。特にスタジアムはビルなどと違って広大な敷地を必要としますから、これを一企業が取得しようとすると相当な費用と時間がかかるのが一般的ですが、行政が確保した敷地の中で民間が施設を整備できるというメリットがあります。

もう一つ、民間企業がその施設を運営できなくなった場合でも、行政がその施設の存続を担保できるというのもコンセッション方式のメリットです。
これは、実際には、スタジアムとかよりも、空港とかのインフラ施設で語られることの多いメリットですが。

ということで、スタジアムが収益を上げられるように、民間の力を利用した方がいい、という話でしたが、そういった最近の動向をひっくるめて、今の維新みらいふスタジアム(みらスタ)によりよくなる道はあるのかそれとも他の道を探るべきなのか、そこら辺を考察していきたいと思います。
(ある意味、次回以降が本題とも言えます)


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