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30年ぶりの高値におもう。時給800円だったころの話(2)


バイト先の草彅先輩に、いきなりほとんどのバイトが3日で辞めると脅されたわけだけど、脅しではなくて本当だというのは程なくしてわかった。

同日に採用された4人は僕を残して3日後に全員辞めてしまった。

その後も月に10人以上は採用してると思うのだが、ほぼ残らない。「新人入ったよー」と、聞いても自分の休み明けには辞めていて、顔を一度も合わさずに辞めたバイトも多数いた。

さて、バイト初日はまだまだ続く。

草彅さんは上がる時間となり、「じゃ。あとは頑張って」と、僕はフロアに放り出された。

一通り説明を受けたのだけど、まだレジの打ち方もわからなければ、商品を売る手順もわからない。

近くの社員にどうすれば、声をかけると

「てめぇ。話しかけてきてんじゃねえ!」

と、やはり怒鳴られた。

新人と分かると社員は

「売って」

とだけ指示を出した。

売っても何もこっちはレジの打ち方もわからないので、「は?」という顔をしていると

「とにかく売ってこい!」と、また怒鳴られた。

そうこうしているうちに、忙しい時間帯に突入して、訳もわからず駆けずり回った。

バックヤードから出庫伝票を書かずにノートPCを持ち出しては怒られ、社員に助けを求めては怒鳴られていた。

あっという間に閉店時間の午後9時となった。

ヘトヘトになって終礼の列に並ぶと、各自何台商品を売ったか大声での発表し始めた。もういい加減体育会系のノリにうんざりしてこれが毎日続くのかと思うと、3日で辞める気持ちも分からないでもない。

終礼が終わって「今日はもう帰っていい」と店長に言われて家路についた。「今日は」って8時間働いただろうと思って周りを見たら、品出し作業を始めていた。

初めてちゃんとした仕事をしたという、ちょっとの充実感を得て帰路についた。



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