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30年ぶりの高値におもう。時給800円だったころの話(1)

ついに30年ぶりに日経平均が3万円の大台を回復した。

一方、コロナ禍で業績が悪化した会社が早期退職を募るという。

対象年齢は40歳以上。

40歳から50歳といえば、就職超氷河期と呼ばれた世代。

本当についていない世代である。

1990年代前半にバブルが崩壊して2002年にどん底を迎える最も世の中が暗かった時期に、わらわらと頭数の多い団塊ジュニアが社会に放り出された。

2000年あたりはもう不況の真っただ中で首都圏でも時給800円なんてのはざらにあった。それでもお金をもらえるだけマシだった。

何の取り柄もない上に、協調性もないし、労働意欲もない僕は、まともなバイトの面接は全く受からなかった。

実験で血液を抜くとか、アンケートで個人情報を集めるとか、怪しげで高額な短期バイトばかりをこなしていた。

まぁ。就職活動が上手くいくわけもなく晴れてプータローになったのである。

短期バイトばかりだと食いつなげないので、とにかく雇ってくれる長期のバイトを探していたところ、とある家電量販店に採用されて、翌日から働けることになった。

後に全く箸にも棒にもかからなかった自分がなぜ採用されたのか、店長に聞いたところ理由が

「辞めなさそうだから」

であった。

面接の当日に分厚いマニュアルを渡され、翌日に備えてうちに帰ってから一通り読んだ。

わからないことはバイトの先輩に聞きましょう。

それでもわからないことは、バイト長に聞きましょう。

それでもわからなかったら社員に聞きましょう。

みたいなことが書かれている。

社員に質問したらダメなの?変なマニュアルだなぁと、思っていてのだが、後に社員に質問した時

「てめぇ。バイトが何、社員に口聞いてんだ!」とすごまれたので、マニュアルの意味を体感した。

バイト初日、制服に着替えて店長のところに行くと、私の教育係のベテランバイトを紹介された。

「僕は草彅且行。よろしく。SMAPの草彅くんと森くん合わせた名前で、すごいでしょ」と、とても人の良さそうな笑顔で迎えてくれた。

正直、僕はどちらもSMAPでは微妙な立ち位置だよなと思っていたけど

「へえー!すごいですね!」と愛想を振りまいた。

ざっくりと仕事を紹介しながら草彅先輩は

「うちの店さ。なかなか1週間もたないんだよねぇ。1カ月いたらベテラン。半年もいれば大ベテランだよ」

といったあと、笑ながら続けた。

「君は辞めないでよ。僕が辞めれないからさ」

そうやって初めての長期バイトの幕を開けた。



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